【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(28日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる28日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ 政府高官 “核の脅しに屈しない”

ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記が28日、首都キーウでNHKのインタビューに応じました。

この中でダニロフ書記は、ウクライナの東部や南部でロシアを後ろ盾とする親ロシア派の勢力が強行した「住民投票」とする活動について、「ウクライナの国土で、ロシアが住民投票を行う権利はない。『住民投票』と呼んでいるが、実態はない」と述べ、全く正当性はないと批判しました。

そして、ロシアが「必要であれば核兵器を使用する権利を持つ」などと、核で威嚇していることについて「プーチンが核を使用するかどうかはプーチンのみが知っている。しかし、ウクライナは、国土を解放する行動を続け、プーチンの脅しには屈しない」と述べました。

また、ロシアが核戦力の使用に踏み切った場合のNATO=北大西洋条約機構の対応については、「ウクライナはNATOの加盟国ではなく、NATOが介入するかどうかは自分は答えられない」と述べたうえで、「世界は、核の使用を認めてはならない」と訴えました。

一方で、ロシア軍が支配地域でウクライナ国民を強制的に動員しているとして「動員されたら、ウクライナ政府に相談するための窓口があり、ウクライナ軍に降伏するよう伝えている」と説明しました。

そのうえで、ダニロフ書記は、東部ハルキウ州の奪還以降の今後の反転攻勢の展望について「すべては計画どおりに進んでいる。しかし忍耐が必要だ」と述べ戦闘が長期化するおそれがあるという考えを示しました。

モルドバ ガブリリツァ首相 「住民投票」を強く非難

ウクライナの隣国、モルドバのガブリリツァ首相がNHKのインタビューに応じ、ウクライナで親ロシア派の勢力が強行した「住民投票」だとする活動について「住民の意思を表したものとは全く言えないものだ」と強く非難しました。

モルドバは、国内に一方的に独立を宣言した地域を抱えることから、分離独立の動きが強まることに懸念を示しました。

安倍元総理大臣の「国葬」への参列のため来日したモルドバのガブリリツァ首相は、28日、都内にある大使館でNHKのインタビューに応じました。

このなかでロシアを後ろ盾とする親ロシア派の勢力がウクライナの支配地域で強行した「住民投票」だとする活動について「住民の意思を表したものとは全く言えないものだ。適切な状況で行われず、住民投票とすら呼べないようなものだ」と強く非難しました。

そのうえで、この結果に基づくロシアによる併合を認めない姿勢を強調しました。

モルドバでは、東部にある沿ドニエストル地方が1990年に一方的に分離独立を宣言し、ロシア軍が駐留するなどロシアの強い影響下にあります。

ガブリリツァ首相は「いまのところ沿ドニエストル地方でロシアへの併合に向けた動きはみられない」としながらも「旧ソビエト諸国だけでなく、世界中で止まっていた紛争や分離独立の動きに影響を与えかねないものだ。非常に危険な動きだ」と述べ、分離独立の動きが強まることに懸念を示しました。

また、モルドバには、ウクライナから避難してきた人が現在もおよそ8万人滞在し、その多くは女性や子どもたちだとして「避難してきた人や受け入れている家庭には、最低限の援助を行っている。また、子どもが心の傷を乗り越えるための支援を続けている」と述べ、日本など国際社会にさらなる支援が必要だと訴えていました。

ロシア “部分的な動員”以降 EUなどへの入国の動き広がる

ロシアでプーチン大統領が予備役の部分的な動員に踏み切って以降、招集を逃れようとする市民がロシアと国境を接する中央アジアのカザフスタンやEU=ヨーロッパ連合の加盟国、フィンランドなどに入国する動きが広がっています。
このうちEUの国境管理を担う機関は27日、今月19日から25日までの1週間にロシアからEU域内に入国した人はおよそ6万6000人に上ったことを明らかにしました。
これは前の週と比べ30%増え、このうち国境を接するフィンランドには4万2000人以上、エストニアには9000人以上、それぞれ入国したということです。
またロシアと7500キロ以上にわたって国境を接する中央アジアのカザフスタンでも入国が相次ぎ、内務省は21日以降、およそ9万8000人のロシア市民が入国したと明らかにしています。
またロシアの隣国ジョージアの内務省は27日、ロシアからの入国者が増加していて、21日以降、入国した人は合わせて5万3000人以上にのぼったと発表しました。

動員に抗議する活動 ロシア各地で相次ぐ

動員に抗議する活動はロシア各地で相次いでいます。
ロシアの人権団体の発表によりますと、24日には35の市や町で25日には10の市や町で抗議活動が行われ、それぞれ少なくとも842人、142人が拘束されたということです。
また当局に拘束された参加者は21日から26日までに、およそ2400人に上ったとしています。

「住民投票」についてモスクワ市民は…

親ロシア派の勢力がロシアへの一方的な編入をねらって行った「住民投票」だとする活動について、首都モスクワの市民からは、さまざまな意見が聞かれました。
インタビューに答えた女性は「もともとロシアの領土です。今後ウクライナはロシア領を攻撃することになり、ひどい戦争になるので、交渉に移ったほうがいい」と話していました。
一方、併合を支持しないという55歳の会社員の男性は「ザポリージャが祖国であるとは言い難い。併合されたら状況がさらに複雑になるおそれがある」と指摘しました。
また、26歳のデザイナーの女性は「併合など必要ない。法的に私たちの土地ではない。欧米を怒らせるだけだし、併合していいことは何もない」と厳しく批判していました。

ロシア上院議長 来月4日に併合に関する法案を審議する考え

「住民投票」だとする活動の結果を受け、ロシアのマトビエンコ上院議長は
来月4日、議会で併合に関する法案を審議する考えを示していて、プーチン政権は要請を受ける形で一方的な併合に向けて手続きを始めるものとみられます。

EU上級代表が声明「ガス漏れは意図的な行為 断固結束して対応」

ロシアとドイツを結ぶ海底の天然ガスパイプライン、ノルドストリームで起きたガス漏れについて、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は28日、声明を発表し事態に懸念を示しました。
声明では「あらゆる情報はこのガス漏れが意図的な行為によるものだということを示している」と指摘しています。
そのうえで「EUは原因や理由を明らかにするための調査を全面的に支援し、エネルギーの確保のためさらなる措置をとる。ヨーロッパのエネルギーインフラを意図的に壊そうとする行為は受け入れられず、われわれは断固として、そして結束して対応する」としています。

メドベージェフ氏「おかえりなさい、ロシアへ」

「住民投票」だとする活動の「開票」の作業の終了を受けて、ロシアの前の大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長はSNSに「結果は明らかだ。おかえりなさい、ロシアへ」と投稿しました。
また、ドネツク州の親ロシア派の指導者、プシリン氏は記者団に対し「住民投票が終わった。すばらしい結果となった」と主張したほか、ザポリージャ州の親ロシア派の幹部も「ザポリージャ州は事実上、ウクライナから分離独立した」と述べたうえで、一方的にロシアへの編入を求める考えを表明しました。

ゼレンスキー大統領「茶番劇は住民投票のまねごとですらない」

ウクライナのゼレンスキー大統領は27日に動画を公開し、親ロシア派が行った「住民投票」だとする活動について「占領された地域での茶番劇は、住民投票のまねごとですらない。どういう結果にしようとしていたのかは事前にわかっていた。情報機関が活動する必要もなく、この茶番劇の内容は事前にメディアに流れていた。ロシアは隠そうともしていない」と述べ、正当性がないと強調しました。
そのうえで「唯一の合理的な対処はウクライナに対するさらなる支援だ。防衛、財政、そして制裁での支援を確認してくれたパートナーに感謝する」と述べました。
さらに、国連安全保障理事会の緊急会合で演説したことに触れ「世界を敵に回している人物を止めてほしいと呼びかけた。最後の破壊的なステップが踏み出されていない今なら止めることができる」と国際社会に対応を求めました。

米が「住民投票」活動を非難 決議案を近く提出へ 国連安保理

親ロシア派の勢力がウクライナの東部や南部の支配地域で行った「住民投票」だとする活動をめぐって、国連の安全保障理事会で緊急会合が27日午後、日本時間の28日午前に開かれ、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「人々に銃口を向け投票を強要している」と述べました。

そしてロシアによる「住民投票」だとする活動を非難しロシア軍の即時撤退を義務づける決議案を、近く安保理に提出する考えを表明しました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、活動はすべての選挙規範に従い透明性の高い条件のもとで行われたと反論し「公表される結果はドンバスの住民が待ち望んでいたもので、彼らの地に平和をもたらすだろう」と主張しました。

「住民投票」ロシア国営メディア “賛成が反対を上回る”

ロシアのプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力は、今月23日からウクライナの東部や南部の支配地域でロシアへの一方的な編入をねらった「住民投票」だとする活動を強行しました。
ロシアの国営メディアは27日、東部のドネツク州とルハンシク州、南東部ザポリージャ州、それに南部ヘルソン州のすべてで「開票」の作業が終了し、いずれもロシアへの編入に「賛成」する票の割合が80%から90%に上り、「反対」を大きく上回ったと伝えています。

ルハンシク州の親ロシア派の指導者パセチニク氏は、ロシア国営のタス通信に対し「きょうかあすモスクワに行き、ロシアへの編入を検討するようプーチン大統領と話す準備をしている」と述べるなど、それぞれの州の親ロシア派の勢力は、今回の結果を受けてプーチン政権に対して編入を要請するものとみられます。

プーチン大統領 30日に一方的な併合を宣言か

プーチン大統領は27日、「住民投票は、地域の住民を救出するため行われている」と主張していて、イギリス国防省は、プーチン大統領が今月30日、一方的な併合を宣言する可能性があると指摘しています。

また、ロシアのマトビエンコ上院議長は来月4日、議会上院で併合に関する法案を審議する考えを示すなど、プーチン政権は、一方的な併合に向けて手続きを始めるものとみられます。

国連安保理 ゼレンスキー大統領「他国の領土盗もうとする試み」

国連安保理の緊急会合は27日午後、日本時間の28日、午前4時すぎから始まり、冒頭、国連のディカルロ事務次長は、ロシアが「住民投票」だとする活動について「紛争のさなかにロシアの支配下にある地域で、ウクライナの法的な枠組みが及ばないところで実施されたもので、真に民意を表しているとは言い難い」と指摘しました。

続いて、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで演説し「偽の住民投票の結果は事前に準備されたものでその目的は領土の併合だ。これは国連憲章に対する最も残忍な違反であり、他国の領土を盗もうとする試みだ」と述べ、ロシア側を強く非難しました。

このあと発言したアメリカなど欧米各国からも「偽の住民投票は決して認められない」とロシアを非難する意見が相次ぎました。

米 ブリンケン国務長官「住民投票、偽りだ」

ウクライナの親ロシア派の勢力がロシアへの一方的な編入をねらって「住民投票」だとする活動を進めていることについて、アメリカのブリンケン国務長官は27日、記者会見の中で「偽りだ」と非難しました。

そのうえで、仮にロシアが、「住民投票」だとする活動の結果を受けて、一方的な併合を宣言した場合について「決して認めない。われわれは、ロシアに対し、厳しく、かつ、迅速に追加の代償を科すだろう」と述べ、ロシアに対し、速やかに追加の制裁を科すと警告しました。

一方、ブリンケン長官は「ウクライナはロシアに奪われた領土を取り戻すため、必要なことを続けるだろう。われわれは、その取り組みを支援していく」と述べ、ウクライナへの軍事支援を続ける姿勢を強調しました。

ザポリージャ原発で再び砲撃か

IAEA=国際原子力機関は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所で、2日間にわたって砲撃や爆発があったと発表しました。

IAEAによりますと、26日の午後、発電所の施設から数百メートル離れた配電所の近くで砲撃があったということです。被害の報告はないとしています。

また、27日の午前には、原子炉を冷やすための水を貯水池から発電所に送る水路の近くで2回にわたる爆発があったということです。

発電所の施設や設備に被害はなかったものの、一部の建物で窓ガラスが割れたということです。爆発の原因は不明だとしています。

IAEAは、26日から本部があるオーストリアのウィーンで年次総会を開催しているさなかで、今回の砲撃はグロッシ事務局長が重大な事故を防ぐために安全確保の必要性を強く訴えた直後だったとみられます。

ロシアとドイツ結ぶパイプラインでガス漏れ

ロシアからドイツ向けの天然ガスパイプラインをめぐって27日、デンマーク軍がバルト海にあるボーンホルム島沖の3か所でガス漏れが確認されたと明らかにしました。

それによりますと、ガス漏れは2つあるパイプラインのうち、ノルドストリーム1の2か所、ノルドストリーム2の1か所で起き、軍はガス漏れが原因とみられる泡が海面に発生している映像を公開したほか、デンマーク当局は海上交通に危険があるとして、島の沖から5海里以内の航行を禁止しました。

このパイプラインをめぐっては、ロシア側がウクライナへの軍事侵攻後に供給量を大幅に減らし、8月末から完全に停止していて、残っていたガスが漏れたとみられます。

ガス漏れの原因はわかっていませんが、スウェーデンの地震学者はAP通信に対して26日に海底で爆発を観測したと話したほかドイツの一部のメディアは関係者の話として、何者かによる破壊工作の可能性があるという見方も伝えています。

また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「なんらかの破壊があったのは明らかだ。調査結果が出るまでは、どのような可能性も排除すべきでない」と主張していて、海底のパイプラインで何が起きたのか、関心を集めています。

ロシア南部国境で検問 召集令状も

ロシアで進められている予備役の部分的な動員を逃れようと大勢の人たちが出国する動きが続く中、ロシア南部で、隣国のジョージアと接する北オセチア共和国のトップは27日、厳戒態勢を敷く考えを明らかにしました。

ジョージアにつながる道路の検問所に、軍を含む機動部隊が配置され、動員の対象者には招集令状を渡していくということです。

北オセチアのトップ、ミニャイロ氏は声明で「招集令状を受けてすぐに徴兵事務所に連れていかれるわけではないが、従わなければ刑事責任を含む結果が生じることを理解する必要がある」と強調しています。

北オセチアの内務当局によりますと、27日までの2日間で、合わせて2万人余りが国境にある検問所を通ってジョージアへ出国したということです。

また、ロシアの独立系のネットメディア「メドゥーザ」は、家族をロシアに残したまま自転車や徒歩で国境を越えた男性もいると伝えています。

こうした状況を受けてミニャイロ氏は、地域内で非常事態を発動する可能性もあるとしていて、プーチン大統領が踏み切った動員をめぐって各地で混乱が広がっています。

ロシア国防相 動員訓練施設を視察

ロシアのプーチン政権が、予備役の動員に踏み切る中、ロシア国防省は27日、ショイグ国防相がロシアの西部軍管区の野外の訓練場を訪れ、動員で招集された市民の訓練の様子を視察したとする映像を公開しました。
ショイグ国防相は、市民が銃の射撃訓練を行う様子などを視察し、軍の担当者から説明を受けていました。

今回の動員について、イギリス国防省などは、動員された市民は、軍事経験が乏しく、訓練も不足しているとみられることから、戦地で犠牲になる可能性が高いとも指摘しています。

ロシア国内で動員に対する市民の懸念が広がる中、国防省としては、招集された人たちに対しても十分な訓練を行っていると強調したいねらいもあるとみられます。

ロシア前大統領 核戦力をかざして威嚇

ロシアの前大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は、27日「ロシアは必要であれば核兵器を使用する権利を持つ」とSNSに投稿し、核戦力をかざすことで欧米を威嚇しました。

また、メドベージェフ氏は、ロシアが核兵器を使用する条件について「核抑止力に関する国家の基本方針に従うと、核兵器で攻撃されたり、通常兵器を用いた侵略行為で国家の存立が脅かされたりした場合であり、大統領も明確にしている」と主張しています。

そのうえで、ロシアがウクライナに対して核戦力を使わざるを得なくなったとしても、いまと変わらず、NATO=北大西洋条約機構が直接介入することはないだろうという見方を示しました。

メドベージェフ氏は、ウクライナ侵攻以降、強硬な発言を繰り返していて、今月21日にも「併合された領土の防衛はロシア軍によって大幅に強化される。そのためなら動員だけでなく、核を含むあらゆる兵器も使用できる」と主張しています。

ミコライウ州の博物館 破壊されたロシア軍車両など展示

ウクライナ南部で、ウクライナ軍の反転攻勢の前線となっている、ミコライウ州にある軍事歴史博物館には、破壊されたロシア軍の軍用車両などが展示され、戦闘の激しさを伝えています。

この博物館ではロシアによる軍事侵攻が始まってからはロシア軍が戦場に残した車両や兵士の遺留品などを展示しています。

このうちロシア軍のヘリコプターの残骸は兵士を運んでいる途中に南部オデーサで撃墜されたものとみられ、バラバラになったエンジンや回転翼の羽根もあります。

また、破壊されたロシア軍の軍用車両は激しい戦闘が続くヘルソンの近くに残されていたものだということで、ロシアの軍事侵攻のシンボルとなっているアルファベットの「Z」の文字が記されています。

軍事歴史博物館のガイドのクセンゾブさんは「ロシア軍をミコライウ州で食い止めることができているのを誇りに思う。欧米からの兵器のさらなる支援が得られれば、より少ない犠牲でヘルソンを奪還できる」と話していました。