五輪組織委元理事を再逮捕 広告会社 大広からの受託収賄の疑い

東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約をめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は、組織委員会の元理事が、広告会社・大広からスポンサーの契約業務を請け負えるよう依頼を受け、便宜を図ったことへの謝礼などとして総額1500万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄の疑いで再逮捕しました。元理事の逮捕は、紳士服大手のAOKIホールディングス、出版大手のKADOKAWAをめぐる事件に続いて3回目です。

受託収賄の疑いで再逮捕されたのは、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)と、元理事の知人で、東京 中央区のコンサルタント会社代表、深見和政容疑者(73)です。

また、贈賄の疑いで、大阪市に本社がある広告会社「大広」執行役員の谷口義一容疑者(57)が新たに逮捕されました。

東京地検特捜部によりますと、高橋元理事は大広からスポンサーの契約業務を請け負えるよう依頼を受け、便宜を図ったことへの謝礼などとして、ことし2月までの3年間に、総額1500万円の賄賂を受け取ったとして受託収賄の疑いが持たれています。

東京大会では、大手広告会社の電通が組織委員会のスポンサー募集の窓口となっていて、ほかの広告会社が電通の業務の一部を請け負うには組織委員会の了承が必要だったということです。

大広は広告業界2位の「博報堂DYホールディングス」の100%子会社です。

高橋元理事の逮捕は、紳士服大手のAOKIホールディングス、出版大手のKADOKAWAをめぐる事件に続いて3回目です。

元理事 KADOKAWAからの受託収賄の罪で追起訴

また、特捜部は27日、高橋元理事が、KADOKAWA会長の角川歴彦容疑者(79)と、元専務の芳原世幸被告(64)、元担当室長の馬庭教二被告(63)から総額7600万円の賄賂を受け取っていたとして、受託収賄の罪で追起訴し、深見代表も共犯として起訴しました。

特捜部は、東京大会のスポンサー契約をめぐる元理事周辺の資金の流れについて全容解明を進めるものとみられます。

特捜部は、容疑者や被告の認否を明らかにしていませんが、関係者によりますと、高橋元理事は「身に覚えがない」として27日の再逮捕の容疑を否認しているということです。

大広「心よりお詫び」

谷口執行役員が逮捕されたことについて、広告会社・大広は、「事態を厳粛かつ重大に受け止めるとともに皆様にご心配、ご迷惑をお掛けしていることを心よりお詫び申し上げます。引き続き、捜査に全面的に協力するとともに社を挙げて再発防止に向けた努力を重ね、信頼回復に懸命に取り組んでまいります」というコメントを発表しました。

KADOKAWA「重ねて深くお詫び」

元専務らが起訴されたことについて、KADOKAWAは「このような事態に至りましたことを重大かつ厳粛に受け止めております。関係するすべての皆様に、多大なるご心配とご迷惑をおかけしており、重ねて深くお詫び申し上げます」というコメントを発表しました。

事件の舞台は“大会組織委員会”

事件の舞台となった東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会は、JOC=日本オリンピック委員会と東京都が設立し、2014年1月に発足しました。

組織委員会の大きな役割の1つはスポンサー収入の確保で、電通は、この年の4月、組織委員会から「マーケティング専任代理店」に指名され、スポンサー契約を希望する企業との窓口を一手に担いました。

さらに、組織委員会でスポンサー企業の選定やライセンス商品の審査を担当していた「マーケティング局」には電通から社員が出向し、局長や次長などの幹部の多くも電通出身者が務めていました。

この電通でスポーツ局長や専務を務め、東京大会招致のキーパーソンとも言われた高橋元理事は2014年6月、35人目の理事に就任します。

組織委員会は、最終的に国内スポンサー68社から過去最高の総額3761億円を集めました。

高い公共性が求められる組織委員会の理事は、「みなし公務員」として一般の公務員と同じように職務に関して金品を受け取れば刑法の収賄罪などが適用されます。

高橋元理事はみずからが経営するコンサルタント会社や知人の会社を通じて、いずれも大会スポンサーになった、紳士服大手、AOKIホールディングスと、出版大手、KADOKAWAから合わせて1億2000万円を超える賄賂を受け取っていた罪で逮捕・起訴され、さらに、広告会社の大広からも総額1500万円の賄賂を受け取っていた疑いで27日、逮捕されました。

キーワードは“コンサルタント料”

いずれの事件も、共通するのは賄賂とされる資金がコンサルタント料として元理事側に支払われていたことです。

AOKIホールディングスの事件で、特捜部は、AOKI側が高橋元理事の会社「コモンズ」にコンサルタント料の名目で、毎月100万円から50万円、総額5100万円の賄賂を提供していたとみています。

KADOKAWAも、スポンサーになるために必要とされた費用の20%に当たる、およそ7000万円をコンサルタント料の名目で、高橋元理事の共犯として起訴された深見代表が経営する会社「コモンズ2」に支払ったとみられています。

さらに関係者によりますと、27日に幹部が新たに逮捕された広告会社・大広も、コンサルタント料の名目で「コモンズ2」に総額1500万円の賄賂を支払った疑いが持たれています。

今後の捜査や裁判では、コンサルタント契約に実態があったかどうか、また、「コモンズ2」への支払いが高橋元理事への利益提供に当たるかなどが焦点になるものとみられます。

公式ライセンス商品でも便宜か

捜査の対象は、さらに広がりを見せています。

特捜部は、大会マスコットのキャラクターグッズを公式ライセンス商品として製造・販売していた都内の会社の幹部からも、任意で事情を聴いていることが先週、明らかになりました。

関係者によりますと、高橋元理事は、この会社がライセンス商品を販売できるよう組織委員会の幹部に働きかけた疑いがあり、この会社からは、深見代表とは別の、元理事の知人が経営する会社に多額の資金が支払われていたということです。

次々に浮上する疑惑。
特捜部は、東京大会をめぐる利権の構造の全容解明を進めるものとみられます。

専門家 “日本の広告業界は人に依存”

広告業界のビジネスに詳しい立命館大学の小泉秀昭名誉教授は「日本の広告業界には、企業ではなく人に依存する部分が強く残っている。特に世界的な規模のスポーツ大会では知識や経験が必要となり、組織委員会のスタッフが高橋元理事に強く意見をいうことが難しかったのではないか。元理事ひとりの力があまりに大きくなりすぎることは問題だったと思う」と指摘しました。

そのうえで「欧米などでは広告主の側が個々の契約や業務の遂行状況などについてチェックしたり評価するシステムが構築されている。このような事件が起こったことは広告業界全体にも大きなダメージで、透明性を高める取り組みが必要だと思う」と話していました。

組織委元参与 “IOCから厳しい目”

オリンピックの歴史に詳しく、組織委員会で参与を務めた筑波大学の真田久特命教授は「さまざまな不正や疑惑が出てきていることは大変遺憾だ。特にIOC=国際オリンピック委員会はこうした不正に対して非常に厳しい目を向けていて、日本として襟を正す姿勢を示していく必要がある」と話しています。

さらに、札幌市が2030年の冬季大会の招致を目指していることについて「招致の段階でこうした問題が起きたことは極めてマイナスポイントで、選定に与える影響は大きい。日本のスポーツ界とスポンサーとの関係がきちんと明確になるかどうかがIOC側の判断の材料になってくる。これまでのスポーツ大会の開催・運営の在り方を見直していく、日本のスポーツ界はどういう方向に進んでいくべきか、原点を見つめ直し、発信していくことが大事だ」と指摘しています。