ロシアの予備役動員 抗議活動相次ぐ “効果大きくない”見方も

ウクライナに侵攻するロシアのプーチン政権は予備役の動員に踏み切りましたが、ロシア国内では抗議活動が相次ぎ、国民の不満が広がっています。一方、イギリス国防省は動員された兵士がロシア軍基地に到着し始めたとしていますが、経験や訓練が不足し、動員がもたらす効果は大きくないという見方が出ています。

ロシアのプーチン大統領が今月21日、予備役から部分的に動員すると表明して以降、ロシア各地では連日、抗議活動が続いています。

ロシアの人権団体は、21日から25日までの間に少なくとも2300人以上が政権側に拘束されたとしています。また、イルクーツク州の州知事は26日、州内のウスチ・イリムスクにある徴兵事務所で若い男が発砲し、事務所の責任者が重体になっていると明らかにしました。

独立系のネットメディア「メドゥーザ」は、動員が始まって以降、25日までにロシア国内の少なくとも10か所の徴兵事務所で放火事件が相次いでいると伝え、国民の不満が広がっています。

一方、イギリス国防省は26日、動員によって招集されたロシア軍の兵士の第1陣が軍の基地に到着し始めたとしています。ただ、こうした兵士は何年も軍事経験がなく訓練も不足していて、最低限の準備だけで前線に派遣されるとみられることから、戦地で犠牲になる可能性が高いと分析しています。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は25日、今回の動員に関する分析を発表し、「動員に対するロシア国内の抗議は、プーチン大統領のたび重なる失敗を反映しているものだ。プーチン大統領は、この侵略を戦争ではなく『特別軍事作戦』と言い続け、動員されることを国民に覚悟させるような条件を整えてこなかった」としています。

そして、ロシア軍にとって動員がもたらす効果は少なくともことしは大きくなく、来年も劇的な変化はもたらさない可能性があると指摘したうえで、「プーチン大統領は、大規模な戦争を遂行する能力の限界に直面する可能性が高い」と分析しています。

大統領府報道官の息子“招集拒否したかのような動画”で物議

今回の動員に関連して、ロシア大統領府のペスコフ報道官の息子が、ロシア軍からの動員の招集を拒否したように受け止められる動画が公開され、物議を醸しています。

公開したのはロシアの反体制派のグループで、動画はペスコフ報道官の息子、ニコライ・ペスコフ氏に対し、予備役を招集する担当者を装い偽の電話をかけた際のやり取りだとしています。

この中では偽の担当者が「あなたに招集状が送られた。徴兵事務所に来るようにという紙を受け取ったはずだ」と伝えたのに対し、ニコライ氏が「もちろん、あすは行かない。私がペスコフであることを知っているなら、それがいかに間違っているか、理解する必要がある。この問題は別のレベルで解決する」などと答えるやり取りが伝えられています。

動画は今月21日に公開されたあと、340万回以上、再生され関心を集めていることがうかがえます。

これについて、ペスコフ報道官は動画の音声が息子の声だと認めたうえで「このグループは、すべての会話のやり取りを公開していない。私は息子のことを信じている」と反論しています。

ロシア⇒トルコ便は軒並み売り切れ

今月21日以降、ロシアからトルコへ向かう便は軒並み売り切れていてプーチン大統領が予備役の部分的な動員を発表したことが影響したのではないかとみられています。

トルコ航空の予約サイトでは、日本時間の26日午後5時の時点で、1日5便あるモスクワ発イスタンブール行きの直行便のチケットが、来月5日の分まですべて売り切れていました。

6日は、エコノミークラスの片道の航空券が日本円で19万5000円余りとなっています。

同じ日に運航し、飛行時間がモスクワ便の3倍以上ある羽田とイスタンブールを結ぶ便と比べても4万円近く高く、価格が高騰しているようすがうかがえます。

また、トルコ南部のリゾート地のアンタルヤにはトルコ航空だけでモスクワからの直行便が1日14便運航していますが、こちらも来月2日まで満席となっています。

トルコは欧米各国がロシアからの航空便の受け入れを停止する中、往来が続く国の一つで、ロシア人は短期滞在の際にビザは必要ありません。

ロシア隣国のフィンランドにもロシアから多くの人が

このうちロシア第2の都市サンクトペテルブルクから車でおよそ3時間のところにあるフィンランド東部の町ヴァーリマーの検問所では入国しようという人たちを乗せた乗用車やバスが数百メートルの列を作っていました。

若い男性の姿も多く、ロイター通信の取材に応じた26歳のロシア人男性は「プーチン大統領の発表の直後に荷物をまとめて出国することを決めた。EU加盟国などへの短期訪問ビザを持っているので、フィンランド経由でトルコに飛行機で向かう便を予約した」と話していました。

ロイター通信によりますと、この週末にフィンランドに陸路で入国したロシア人は1万7000人近くに上り、前の週末に比べておよそ80%増えました。

こうした状況について、フィンランド政府は「フィンランドの国際的な立場に深刻な悪影響を及ぼしている」として、ロシア人の観光目的などの入国を近く、大幅に制限する方針です。