イタリア議会選の投票開始 EUに批判的な勢力 過半数獲得の勢い

EU=ヨーロッパ連合の主要国イタリアで、日本時間の25日午後、議会選挙の投票が始まりました。
EUに批判的な右派政党を中心とする勢力が議会の過半数の議席を獲得する勢いで、今後のEUの結束にも影響を与えかねないとして有権者の判断が注目されています。

イタリアの議会選挙は下院400議席、上院200議席をめぐって行われ、投票は現地時間の25日午前7時、日本時間の25日午後2時から6万か所余りの投票所で始まりました。

選挙では、EUに批判的なメローニ党首の右派政党「イタリアの同胞」が連合を組む右派勢力に対し、レッタ元首相が率いる左派の「民主党」、コンテ前首相の左派政党「五つ星運動」などが争う構図となっています。

今月上旬の世論調査では、右派勢力の主要3党の支持率が合わせて45%に上り上下両院で議席の過半数を獲得する勢いで、「イタリアの同胞」のメローニ党首が初の女性首相に就任するという見方が強まっています。

ただ、メローニ党首は独裁者ムッソリーニを肯定する過去の発言が議論を招いたほか、EUの難民政策を繰り返し非難してきました。

また、「イタリアの同胞」と連合を組む2つの政党の党首のうち、ベルルスコーニ元首相はロシアのプーチン大統領と個人的に親しく、サルビーニ元内相はEUのロシアへの制裁を批判しています。

このため、右派勢力が政権を獲得すればウクライナ情勢などでEUの結束に影響を与えかねないとして有権者の判断が注目されています。

投票は、日本時間の26日午前6時に締め切られ即日開票され、26日の昼ごろには大勢が判明する見通しです。

専門家“新政権の方針がEU全体に与える影響は大きい ”

イタリア政治に詳しい東京大学大学院の伊藤武教授は、右派勢力の中心になっている「イタリアの同胞」の党首メローニ氏の選挙戦終盤の戦い方について「支持基盤を固めるために、EU=ヨーロッパ連合を批判する姿勢や移民に対する規制強化を強く訴えるようになっていた」として、できるだけ過激な発言を控えてきたこれまでの戦略から支持獲得のために軌道修正を行っていたと指摘します。

しかし「イタリアの同胞」が第1党になりメローニ党首が首相になった場合、「EUの復興基金から支援を受けて、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた経済を立て直す任務があるので、EUに対して強硬な態度に出るわけにはいかないという判断があるはずだ」と述べ、実際には現実的な路線を模索するだろうとしています。

一方で、連合を組んでいる「同盟」のサルビーニ党首や「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ党首がロシアのプーチン大統領と距離が近いことで知られていることから「連立相手の政党に、反EUの姿勢を強化しなくてはいけないという方向に引きずられる可能性がある。メローニ氏はどこかで妥協せざるをえなくなる可能性がある」と指摘しています。

そして、イタリアでロシアに対する厳しい姿勢を弱める動きが起きた場合の影響について「ドイツやフランスも、ウクライナのことを重視している一方でインフレを抑制しなくてはいけない課題に直面している。EUの中核に位置するイタリアが言うことのインパクトは大きい」と述べ、イタリアの新政権の方針がEU全体に与える影響は大きいと警戒感を示しました。

投票した人は…

ローマ市内の住宅街にある投票所では、午前7時の投票開始とともに次々と有権者が訪れ一票を投じていました。

73歳の年金暮らしの女性は、政治にはずっと裏切られてばかりだと不満を述べたうえで、「イタリアを少しでも変えてくれると期待して右派の政党に投票した」と話していました。

また、今回が初めての選挙だという18歳の男子学生は、「エネルギーが重要テーマだ。これ以上、いまのエネルギー危機を放置することはできない」と述べ、エネルギー価格の高騰を解決し、再生可能エネルギーの推進に取り組むと訴える左派の政党を選んだと話していました。

さらに36歳の男性は、物価高や失業問題などが優先課題だとしたうえで、「暮らしはとても厳しい。経済を立て直してこの苦境から助け出してほしい」と、一票に託した思いを話していました。