円安で24年ぶりの市場介入 海外からはどう見える?

急速に進んだ円安を受けて、政府・日銀は22日、24年ぶりにドル売り円買いの市場介入に踏み切りました。
当局は、一方的な円安に歯止めをかけるため、さらなる介入も辞さない構えですが、海外からはこの市場介入、どのように見られているのでしょうか。
エコノミストや専門家に話を聞きました。
(ワシントン支局 記者 小田島拓也/アメリカ総局 記者 江崎大輔/ロンドン支局 記者 松崎浩子)

9月22日の東京外国為替市場では、一時、1ドル=145円90銭まで円安が進み、政府・日銀は、1998年6月以来、24年3か月ぶりにドルを売って円を買う市場介入に踏み切りました。
介入の効果もあって円相場はその日の夕方、一時、1ドル=140円31銭まで、5円以上、円高方向に動きました。

その後、23日のニューヨーク外国為替市場では1ドル=143円台前半で取り引きを終えています。

今回の介入は日本の単独介入だったことが分かっています。
アメリカ財務省は22日、NHKの取材に対して介入には関わっていないことを明らかにしたうえで「このところ高まっている円相場の変動を抑えるのが目的だと理解している」として日本側と協議したうえで市場介入を事実上、容認したことを示唆しました。
アメリカ政府は日本の市場介入をなぜ容認したのか。

日本の金融政策に詳しいボストン大学パルディースクールのウィリアム・グライムス教授は次のように分析しています。
「市場介入を巡って日米で摩擦が起きたのは円安に誘導しようとしたときだ。円高誘導をねらった今回のようなケースでアメリカが文句を言うことはない。世界的に広がる過剰なドル高を考えるとアメリカにとってはむしろとてもありがたい動きだろう」
また、日本経済やアジア経済に詳しい南カリフォルニア大学のロバート・デックル教授もアメリカ政府が容認した理由について「強すぎるドルがアメリカの輸出に打撃を与えていると考えたからだ」と話しています。
そのうえでデックル教授は次のように指摘します。

「円安が進み輸入物価の上昇が日本の消費者や企業に打撃を与えており、介入はいいアイデアだが、その効果は長くは続かない。日本はG7各国の中央銀行と歩調を合わせるために金利を引き上げざるをえなくなる」
グライムス教授も「日銀が短期金利を引き上げるのはほぼ間違いなく黒田総裁が退任したあとになるだろう。今後は日銀が長短金利操作をいつ変更するか焦点になる」と分析します。
ニューヨークで金融市場の動向をリポートする調査会社、「ハイ・フリークエンシー・エコノミクス」のチーフエコノミストを務めるカール・ワインバーグ氏は急速に進む円安を円高方向に転換することはできないのではないかと見ています。
「為替介入の歴史は失敗の連続で、成功して軌道を修正できた例はほとんど見当たらない。歴史に従えば日本の政府・日銀は市場介入で市場をいったん止めることはできるかもしれないが、市場を納得させて円高に方向を変えることはできそうにない」

急速な円安の理由についてワインバーグ氏は以下3つをあげています。

▽歴史的な幅に拡大している日米の金利差
▽日本が貿易赤字を抱えていること
▽日本の人口が減少し、経済成長率が低いこと

そのうえで、ワインバーグ氏は「介入によって日銀が市場から円を買うと、残りの円は少なくなり円の金利を上昇させる圧力がかかる。これは、円の金利を低く抑える今の日銀の大規模な金融緩和策と方向が逆で、うまくいくかどうか不透明だ」と述べました。
ロンドンのみずほ銀行欧州資金部のシニアストラテジスト、本多秀俊氏も、市場介入の効果が持続することに懐疑的な見方を示します。

「伝家の宝刀としての市場介入は脅している間がいちばん、有効で、抜いてみると効果が薄いことがよくある。今回、日本単独の介入だったとの見方から効果がどれくらい持続するのか疑念が広がっている」
そして本多氏は「足元の円安の最大の要因は、アメリカが懸命に利上げしている一方、日本は必死で金利上昇を抑制しているという構図にありその対比は一段と鮮明だ。また、日銀が必死で金利上昇を抑え、その結果、円安が進んでいるのに、財務省が円買い介入して、円安を抑制しようというのは、市場の目線では矛盾していると映る」と話していました。