台風15号は温帯低気圧に 静岡で記録的大雨 関東など激しい雷雨

台風15号と台風から変わった温帯低気圧の影響で、静岡県では平年の9月1か月分を超える記録的な大雨となったほか、関東や東北南部でも激しい雷雨になりました。発達した雨雲は海上へと抜けつつあり、大雨の峠は越えましたが関東を中心に、このあと数時間は急な雷雨に注意が必要です。

台風15号が接近した静岡県では発達した積乱雲が流れ込み続ける「線状降水帯」が発生するなどして、1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降り続き、気象庁は「記録的短時間大雨情報」を23日夜10時前から午前3時までに16回発表しました。

静岡県内の各地で記録的な大雨となりけさまでの12時間に降った雨の量の最大は静岡市で404.5ミリ、静岡市鍵穴で392.5ミリ、森町三倉で353.5ミリなどといずれも気象庁が統計をとり始めてから最も多くなりました。

静岡市ではわずか半日で平年の9月1か月分の雨量の1.4倍に達しました。

また、24日の日中も台風から変わった温帯低気圧と、北日本から関東に伸びる前線の影響で、関東や東北の太平洋側には発達した雨雲がかかりました。

午後6時までの1時間にはレーダーによる解析で渋谷区や世田谷区、杉並区の付近でおよそ50ミリの非常に激しい雨が降ったとみられるほか、国土交通省が渋谷区に設置した雨量計で41ミリの激しい雨が観測されました。

発達した雨雲は東の海上へと抜けつつあり、大雨の峠は越えましたが、記録的な大雨となった静岡県では、地盤が緩んでいるなど、災害の危険性があるため24日はできるだけ安全な場所で休むようにしてください。

また、関東では24日夜遅くにかけて大気の不安定な状態が続くため気象庁は、このあと数時間は急な雷雨や落雷に注意するよう呼びかけています。

静岡県内の浸水被害 11市町で873棟(午後2時現在)

静岡県によりますと、午後2時現在、県内の11の市と町で住宅合わせて873棟に床上や床下が浸水する被害が出ています。

▽磐田市では床上浸水が140棟、床下浸水が290棟
▽袋井市では床上浸水が105棟、床下浸水が174棟
▽島田市では床上浸水が36棟、床下浸水が92棟
▽菊川市では床上浸水が5棟、床下浸水が43棟
▽牧之原市では床上浸水が5棟、床下浸水が13棟
▽掛川市では床上浸水が7棟、床下浸水が9棟
▽浜松市では床上浸水が6棟、床下浸水が6棟
▽吉田町では床上浸水が1棟、床下浸水が5棟
▽森町で床上浸水が3棟、床下浸水が2棟
▽御前崎市では床下浸水が3棟
▽川根本町では床上浸水が1棟となっていて、
床上浸水が合わせて290棟、床下浸水が合わせて583棟に上っています。

静岡県は現在、各自治体と連絡を取り、被害状況を確認しています。
今回の台風15号では当初の予報を大幅に上回り、静岡県ではわずか半日で平年の9月1か月分を大幅に上回る雨量を観測するなど記録的な大雨となりました。

専門家は、大量の水蒸気が流れ込んだことに加え、台風の移動速度が比較的遅かったことなどが影響したとして、「台風の強さと大雨になるかどうかは関係がなく、雨量の予測はまだ難しいのが実情だ。台風による大雨は来月にかけても可能性があり十分、注意してほしい」と指摘しています。

静岡 予報大幅に上回る雨量に

静岡県では23日夕方に発表された気象情報では1時間の最大雨量は60ミリ、24時間雨量は中部と西部の多いところで250ミリと予想されていました。

しかし、その後に南から発達した雨雲が流れ込んで1時間に100ミリを超えるような猛烈な雨が降り続き、「記録的短時間大雨情報」は23日夜10時前から24日午前3時までに合わせて16回発表されました。

24日朝までの12時間の雨量は
▽静岡市で404.5ミリ
▽静岡市鍵穴で392.5ミリ
▽森町三倉で353.5ミリ
▽静岡市清水で308.5ミリなどいずれも統計を取り始めてから最も多くなりました。

また、23日は愛知県などでも大雨となり、23日夜までの12時間には愛知県の伊良湖岬で210.5ミリ、田原市で176ミリといずれも9月としては統計を取り始めてから最も多くなりました。

専門家 “「大気の川」が台風の東側に”

なぜ、予報を大幅に上回る大雨となったのか。

台風のメカニズムに詳しい名古屋大学の坪木和久教授は「大気の川」とも言われる大量の水蒸気の流れ込みが、台風の東側にあったことが背景にあると分析しています。

この時、静岡県の沿岸では地形が影響したとみられる東風が吹いていたため、南からの湿った空気とぶつかり、積乱雲が発達したとみています。

さらに坪木教授は、台風15号の移動速度が比較的ゆっくりだったことから発達した雨雲が次々と静岡県の同じような場所に流れ込み、記録的な大雨につながったと指摘しています。

「東海豪雨」と状況が“比較的似ている”

東海地方では、22年前の平成12年9月、名古屋市とその周辺で24時間雨量が最大で500ミリを超え、およそ7万棟が浸水、10人が死亡した「東海豪雨」が起きましたが、坪木教授は台風が接近していたことなど比較的、状況が似ていると指摘しています。

線状降水帯 “予測は困難”

今回、線状降水帯がたびたび解析され、「顕著な大雨に関する情報」も愛知県を対象に1回、静岡県を対象に2回の合わせて3回出されました。

今シーズンから線状降水帯の発生の危険性がある場合は気象情報の中で呼びかけられることになっていますが今回も含め、予測がされていない状態で線状降水帯が発生する状況が相次いでいます。

坪木教授は「海上で水蒸気の観測ができなければ線状降水帯の予測は極めて困難だ。特別警報と同様に『予測がないから大丈夫』だとは決して思わないでほしい」と指摘しました。

そのうえで、「ことしは水蒸気量の多い海域が例年より緯度が高く、日本列島に近いのが特徴だ。台風の“強さ=中心気圧の低さ”と大雨になるかは関係がなく、もう少し水蒸気の流れ込みむ位置がずれていたら関東や東北でもさらに雨量が増え、鬼怒川が決壊した7年前の「関東・東北豪雨」のような状況になっていた可能性もあった。来月にかけても大雨を降らせる台風は十分発生しうるので注意してほしい」と呼びかけています。