ウクライナ情勢 安全保障理事会で激しい論戦が繰り広げられる

ニューヨークの国連本部では国連総会と並行してウクライナ情勢をめぐる安全保障理事会の会合が開かれ、すべての理事国の首相や外相が出席しました。ロシア側が核による威嚇を行い予備役も動員して兵力を増強する構えを示したことについて、アメリカのブリンケン国務長官が厳しく非難したのに対し、ロシアのラブロフ外相は強く反発し、激しい論戦が繰り広げられました。

国連本部では22日、国連総会の首脳演説と並行して、ウクライナ情勢を協議する閣僚級の会合が開かれ、15の理事国と参加した関係国すべてから首相や外相が出席しました。

冒頭グテーレス事務総長は、ロシアのプーチン大統領が再び核戦力の使用も辞さない構えを示したことを念頭に、「かつては考えられなかった核戦争の可能性を示唆する人々がいるが、決して認めることはできない」と非難しました。

アメリカのブリンケン国務長官は、国連総会の首脳演説が行われているさなかに、プーチン大統領が予備役を部分的に動員し兵力を増強する構えを示したことについて、「国連総会や安保理をさげすむもので、プーチン大統領は戦争を終わらせるのではなく、拡大させることを選んだ」と厳しく非難しました。

また、ウクライナのクレバ外相は、東部イジュームで新たに集団墓地が見つかるなど、ロシア軍の残虐行為が次々に発覚しているとしたうえで、「正義なくして和平はありえない」と述べ、ロシアの責任が追及されなければ和平は実現しないと訴えました。
これに対しロシアのラブロフ外相は、改めて軍事侵攻を正当化したうえで、「ロシアの安全保障を脅かす反ロシア的な主張が数多く展開されたが、いずれも断じて受け入れられない」と強く反発し、発言が終わると直ちに退席し、欧米とロシアの対立が再び浮き彫りになりました。

イギリス外相 ロシアを強く非難

国連安全保障理事会の閣僚級会合で、イギリスのクレバリー外相はロシアがウクライナの民間人に対して残虐行為を行っていることは国連の報告書からも明らかだと強く批判しました。

そのうえで「ウクライナのみならず、世界中に苦難と食糧難を広げ、世界で最も弱い立場にある何百万人もの人々を飢餓や飢きんに陥れている。ロシアがウクライナの農場やインフラを破壊したことが原因で、輸出を遅らせているのはロシアのせいだが、制裁を科したわれわれに責任を負わせようとしている」と述べ、ロシアは責任を転嫁していると強く非難しました。

さらに発言を終えたロシアのラブロフ外相がすぐに退席したことについて、「国際社会の非難を聞きたくないからだ」と批判し、ロシアがウクライナで支配する地域の併合をねらって「住民投票」とする活動を計画していることについて、「安全保障理事会のメンバーはロシアによるウクライナ併合の試みを明確に拒否しなければならない」と述べ、ロシアの行動を受け入れないよう各国に呼びかけました。

フランス外相 「正義なくして平和はない」

国連安全保障理事会の閣僚級会合で、議長国を務めるフランスのカトリーヌ・コロナ外相は「フランスのメッセージは明確だ。正義を追求するのはわれわれの共通の責務であり、正義なくして平和はない」と述べ、ロシアによる戦争犯罪などの責任が追及されなければ安定した和平はありえないと主張しました。

そのうえで「ICC=国際刑事裁判所による捜査によって国際法上の人道に対する罪が立件される可能性がある。責任者は特定され訴追され、被害者のために裁かれる。それがわれわれの責務だ」と述べ、国際刑事裁判所の捜査などに協力するよう各国に呼びかけました。

ドイツ外相 ロシアを強くけん制

国連安全保障理事会の閣僚級会合に出席したドイツのベアボック外相は、ロシアに対して、「この戦争は勝つことができない戦争だ。ただちに戦争を終わらせるべきだ。ウクライナを苦しめることや自国の市民を死に追いやることは、やめなければならない」と述べ、強くけん制しました。

そのうえで、「ロシアによる戦争が始まって200日がたち、世界中の飢餓や貧困、危険を増大させた」として、軍事侵攻がウクライナだけでなく世界に混乱を広げている現状に、強い懸念を示しました。

中国外相 中立的な立場を強調

国連安全保障理事会の閣僚級会合で、中国の王毅外相はウクライナで行われている人道状況の調査について「有罪と決めつけるのではなく、事実に基づいた客観的で公正なものでなければならず、政治的な介入も許されない。国際社会は、国連の人道支援機関が中立と公平を守ることを支持すべきだ」と述べ、あくまでも中立的な立場を強調しました。

また安全保障理事会の役割について「停戦と和平交渉という正しい方向を目指し、政治的解決に向け建設的で責任ある行動をとる必要がある」と述べ、無条件での対話による解決を後押しするべきだと訴えました。

インド外相 早期停戦の実現を求める

国連安全保障理事会の閣僚級会合で、インドのジャイシャンカル外相は「グローバル化した世界では、紛争の影響は遠く離れた地域にも及んでいる。われわれも食糧や穀物、肥料などの不足、価格の高騰を経験しており、状況を懸念している。特に、発展途上国はその痛みを痛切に感じており、苦境にある世界経済をさらに複雑化させるような施策を始めてはならない」と述べ、戦闘の長期化がとりわけ発展途上国に深刻な影響を及ぼしているとして、対話を通じた早期停戦の実現を求めました。

ベラルーシ外相 欧米各国の対応を改めて批判

国連安全保障理事会の閣僚級会合で、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのウラジーミル・マケイ外相は「ウクライナでの出来事はある日突然起こったわけではない。西側諸国がこの地域の安全保障上のリスクを無視し、関係国の懸念を考慮に入れなかった結果だ」と述べ、欧米各国の対応を改めて批判しました。

そのうえで「遅かれ早かれ、すべては交渉のテーブルで決着する。交渉に着くのは早ければ早いほどいい」と述べ、ウクライナとロシアの双方がすみやかに交渉のテーブルに着くべきだと主張しました。