【解説】プーチン大統領 部分的動員へ なぜ今?ねらいは?

ウクライナへ軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は国民向けのテレビ演説を行い、戦地に派遣する兵士について、職業軍人だけでなく、有事に招集される、いわゆる予備役を部分的に動員する大統領令に署名したことを明らかにしました。

ウクライナ軍の反転攻勢を受け、プーチン政権は危機感を強めているものとみられます。

なぜこのタイミングなのか。ねらいはどこにあるのか。
モスクワ支局の権平恒志 支局長に聞きました。

このタイミングで部分的動員に踏み切ったねらいは?

国民世論の反発を避けながら、深刻な兵員不足を補うことにあると言えます。背景にあるのは、軍事侵攻の長期化、それにウクライナ軍の反転攻勢です。
プーチン大統領の演説に合わせて、ショイグ国防相は、ロシア側の死者数について5937人と発表しました。

ことし3月に1351人と発表したあと、半年たってようやく新たな数字を出してきた形です。しかし、実際の死者数は、もっと多いという見方が大勢です。

今月、反転攻勢が伝えられると、プーチン大統領の側近の1人が、地方の知事たちに自主的に動員をかけるよう促したほか、受刑者が戦闘に勧誘されているという情報まで伝えられました。

ウクライナ侵攻はあくまで「軍事作戦」だと強弁するプーチン政権にとって、いわば「戦争状態」を意味する国民総動員をかけることは自己矛盾することになりかねません。

今回の部分的な動員は苦肉の策と言え、また、ウクライナ軍の反転攻勢を受けた焦りの裏返しとも言えます。

ロシア国内の受け止めは?

プーチン大統領の演説直後にモスクワ市内で話を聞いたところ、日本のメディアだという前提ではありますが、13人のうち11人がおおむね決定を支持するという反応でした。
それでも明確に反対するという若者や息子の動員を案じる母親の姿もありました。

ロシアでは最近、国民的な歌手が、ウクライナ侵攻を「幻想的な目標」と表現して「そんな目標のために子どもたちが殺されていくのをやめさせたい」などと批判し、高い関心を集めています。

一部の国民から動揺や反発が生じかねない動員にいよいよ踏み切ったプーチン大統領。あくまで侵攻を継続する構えですが、思惑どおりに進むのかは不透明です。