アジア太平洋地域経済見通し 下方修正 中国の景気減速など影響

アジア開発銀行は、中国や東南アジアを含むアジア太平洋地域の最新の経済見通しを発表し、ことしの成長率を4月時点と比べて0.9ポイント下方修正しました。ゼロコロナ政策による中国の景気減速や世界的なインフレが影響しています。

アジア開発銀行は、日本やオーストラリアなど一部の先進国を除くアジア太平洋地域の最新の経済見通しを発表しました。

それによりますと、地域全体のことしの経済成長率は、前の年と比べてプラス4.3%で、4月時点の見通しから0.9ポイント下方修正しました。

ゼロコロナ政策を続ける中国の景気減速が大きく影響しているうえに、世界的なインフレが想定以上に進み、経済を下押ししているとしています。

国ごとでみると、中国のことしの成長率はプラス3.3%と、4月時点と比べて1.7ポイントの大幅な下方修正となりました。

また、インドはプラス7.0%で0.5ポイント、シンガポールはプラス3.7%で0.6ポイント、それぞれ下方修正しました。

深刻な経済危機に陥るスリランカの成長率は、ことしはマイナス8.8%と大幅に落ち込む見通しです。

アジア開発銀行は、来年についても成長率の見通しを引き下げたうえで、インフレのさらなる加速や債務=借金が増えて経済のぜい弱性が高まるなどのリスクを指摘しています。

乗り合いバスやコメが値上げ

アジアの国でも物価の上昇が加速し、市民生活が圧迫されています。
フィリピンは今回のアジア開発銀行の経済見通しで、ことしの消費者物価指数の前の年に比べた上昇率は、プラス5.3%と予想されています。

これは4月時点と比べて1.1ポイント高く、インフレが加速するとの予測です。

背景には、資源や食料の価格上昇に加え、自国通貨のペソがドルに対して過去最安値まで売られ通貨安が進んでいることがあります。

大きな影響が出ているのが「ジプニー」と呼ばれる乗り合いバスで、輸入に依存する軽油の価格がおよそ70%、ガソリンの価格がおよそ30%、前の年と比べて上昇したため、運賃の値上げが続いています。

来月にはことしに入って3回目となる運賃の値上げが実施されます。

通学で乗車する13歳の女子学生は「母親からは稼ぐのが難しいから節約をしろと言われています。政府にはガソリン代を下げてほしい。私たち学生も苦しんでいます」と話していました。

また、フィリピンでは、主食のコメも輸入が多いため、値上がりしています。
先月の消費者物価指数では、コメの価格は2.2%上昇しました。

首都マニラの市場にコメを買いに訪れた4人の子どもを育てる女性は、「コメを小分けで買うと節約できます。袋で買うと無くなるまで食べてしまい、管理ができません。ドル高ペソ安が進むとコメの値段がさらに高くなるのではと心配しています」と話していました。

浅川総裁「中国の減速 影響大きい」

経済見通しについてアジア開発銀行の浅川雅嗣総裁は、NHKの取材に応じ「地域ごとに経済の見通しにはばらつきがあるが、下方へのリスクを意識しなくてはならない。1つめは中国の減速で、ゼロコロナ政策を堅持しているので、製造業のサプライチェーンや生産システムの混乱が起きると影響が大きい。また、中国は中長期的な構造問題を抱えているため、すぐに高成長の時代には戻らないという可能性を念頭に置いて経済システムを構築していく必要がある」と述べました。