【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9月21日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる21日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ドイツ首相 国連総会でロシアを「帝国主義」と厳しく非難

去年12月に就任したドイツのショルツ首相は20日、国連総会で初めて演説し、ウクライナへの侵攻を続けるロシアのふるまいについて「帝国主義以外のことばは見つからない。帝国主義や植民地主義とは対局にある世界平和への災いだ」と厳しく非難しました。

そのうえで、ウクライナが自衛できるようにドイツは兵器の供与も含めてウクライナへの支援に力を入れていると強調しました。

そして、ショルツ首相は「プーチンは勝つことができないと認識するまで戦争と帝国主義的な野望を諦めることはない」と述べ、侵攻をやめさせるためには国際社会がロシアを非難するだけでなく、ウクライナへの支援を続けることが重要だと訴えました。

キーウ市民 冷静に受け止める声

プーチン大統領が国民の部分的な動員を表明したことについて、ウクライナの首都キーウでは冷静に受け止める声が聞かれました。

40代の男性は「もしロシアで総動員令が出されたら、より大きな脅威になるだろうが、プーチンは現時点ではそのような判断をするのを恐れていると思う。ロシアの社会は戦争を広く支持しているが、戦う準備ができているのはほんの一部ではないか」と話していました。

また、30代の男性は「もしロシア人が戦争への参加を強制されたら、ロシア軍の士気は、さらに低くなるだろう」と話していました。

一方、40代の女性は「プーチンは何をしたらいいか分からなくなって、ことばで脅しをかけようとしているのではないか」と話していました。

ロシア国防相 “部分的な動員”を強調

ロシアのプーチン大統領のテレビ演説のあと、ショイグ国防相は国営テレビを通じて今後の軍の方針などを説明しました。

このなかでショイグ国防相は、これまでの軍事作戦でウクライナ軍の死傷者数は10万人を超えるとして、ロシア軍の優勢を主張しました。

一方で、ロシア軍の死者は5937人だと述べました。

ロシア国防省はことし3月下旬にロシア軍の兵士の死者数が1351人だと発表して以降、死者数を明らかにしたのはおよそ半年ぶりです。

また、動員される規模は予備役から30万人だとして、軍務経験や軍事的な専門知識がある人が訓練を受けた後、戦地に派遣されると説明しました。

ショイグ国防相は「ロシアには膨大な人的資源があり、その一部に過ぎないことがわかると思う」と述べ、今回の決定が国民の総動員ではなく、部分的な動員であることを強調しており、国民の理解を得たい狙いもあるとみられます。

中国外務省報道官「対話と交渉で停戦実現を」

ウクライナの親ロシア派の勢力が住民投票の実施を一方的に決めたことについて、中国外務省の汪文斌報道官は21日の記者会見で「われわれはすべての国の主権と領土の一体性を尊重する。各国の安全保障上の合理的な懸念を重視し、平和的な解決に資するあらゆる努力を支持すべきだ」と述べるにとどめました。

また、プーチン大統領がテレビ演説で核戦力の使用も辞さない構えを示したことについて「われわれは関係する国々が、対話と交渉によって停戦を実現し、安全保障上の合理的な懸念に配慮する解決策を早急に見つけ出すよう呼びかけており、国際社会がそのための環境を作り出すことに期待する」と述べました。

一方で、プーチン大統領が国民の部分的な動員を表明したことについては「すでにウクライナ危機の問題に対する中国の立場は表明している」とだけ述べ、詳しい言及は避けました。

モスクワ市民 “おおむね決定支持”の声が多数

ロシアのプーチン大統領が予備役を部分的に動員する決定をしたことについて、NHKが首都モスクワで市民を取材したところ、おおむね決定を支持するという声が多く聞かれました。

このうち20代の女性は「祖国を守るために必要なのだろう。怖いことだが、選択の余地はない」と答えていたほか、男性の1人は「いま戦っている軍隊では人が少なすぎて軍事的に勝利することは不可能だ」と話し、必要な措置だという考えを示していました。

その一方で、20代の男性の中には「この戦争は違法で、そもそも支持していない。徴兵されても海外に行くか隠れる」と明確に反対する人もいました。

また、息子がいるという40代の母親は「もちろん否定的だ。これは契約軍人だけが参加する特別作戦であって、すべて計画どおりに進んでいるはずだ。子どもや愛する人たちのことが心配だ」と率直に心の内を語っていました。

国連の「国際平和デー」 都内で催し

都内では世代や国籍を超えたさまざまな人たちが集まって、平和の大切さを考える催しが開かれました。

この催しは、国連が9月21日を「国際平和デー」と定めているのに合わせて、東京の代々木公園で開かれました。
会場には世界各国の料理や文化を紹介するブースが設けられ、このうち、ウクライナから日本に避難してきた女性などは母国の伝統料理「ブリンチキ」を販売し、訪れた人たちが次々と買い求めていました。

ことし春にウクライナから避難してきた女性は、「ブリンチキはウクライナで古くから愛されている料理で、日本の皆さんにも気に入ってもらえると思います。すべての人のために平和を信じながらこれからも過ごしていきたいです」と話していました。

会場の一角には、筒状のキャンドルカバーにメッセージなどを記せるブースも設けられ、訪れた人たちが平和への願いを込めて完成させたキャンドルに火がともされていきました。

参加した男性は「身近なことから平和を意識することが大事だと思うので、このキャンドルもきっかけになればと思います」と話していました。

専門家「プーチン大統領は追い詰められている」

プーチン大統領が国民を部分的に動員すると発表したことについて、ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長は「ある意味でプーチン大統領は追い詰められている。東部でウクライナ軍による奪還が始まるなか、ロシア側も兵力不足が深刻で、このままでは戦況が悪化するという予想もある」と指摘しました。

そして「部分的な動員に踏み切り、戦況を有利な形で展開したい意図がある」と分析しました。

そのうえで「『特別軍事作戦』に対する疑問の声が、ロシア国内でもあちこちから上がっている状況で、なんらかの対応を迫られたということだが、国内の世論の反応をかなり気にしていたのは間違いない。直前まで世論の動向を見極めながら、今回の決定に至ったのではないか」と指摘しました。

兵頭氏は「動員の対象となる30万人が十分なのか、兵士の練度がどの程度なのか、未知数なところが残っている。動員によってロシアが有利になるかは今後の戦況を見極める必要がある」と述べています。

ウクライナ駐在米大使「ロシアの弱さと失敗の表れ」

プーチン大統領が国民の部分的な動員を表明したうえで、親ロシア派勢力がウクライナの支配地域で一方的に実施しようとしている住民投票を支持したことについて、ウクライナに駐在するアメリカのブリンク大使はSNSへの投稿で「偽の住民投票と動員はロシアの弱さと失敗の表れだ」と指摘しました。

そのうえで「アメリカは、ウクライナの領土の併合と称するロシアの主張を決して認めず、ウクライナに寄り添い続けるだろう」と述べウクライナへの支援を継続していくことを強調しました。

ウクライナ高官「まだすべてが計画どおりだというのか」

ウクライナのポドリャク大統領府顧問はSNSへの投稿で「ロシアが3日間で終わるとしていた戦争は、結局、動員にまで拡大した」としたうえで「それでも、まだすべてが計画どおりだというのか」などとしてロシア側の対応を痛烈に皮肉りました。

ドイツ副首相「侵略戦争をエスカレート」

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領が国民の部分的な動員を表明したことを受け、ドイツの副首相も務めるハーベック経済・気候保護相は、21日の記者会見で「国際法に反する侵略戦争をエスカレートさせるものだ。ロシアはまた誤った行動をした」と述べ、批判しました。

そのうえで「この困難な時にドイツがウクライナを全力で支えるということははっきりしている」と述べ、ウクライナを支援する方針に変わりはないと強調しました。

ウクライナ大統領府顧問「プーチン体制の崩壊を加速」

ウクライナ大統領府の顧問、アレストビッチ氏は、プーチン大統領が国民の部分的な動員を表明したことを受け、SNSへの投稿で「動員される者たちは戦闘力が極めて低く、戦う動機も欠いている。戦争にひそかに反対している人物も多い」として戦局に大きな変化が起きることはないという考えを示しました。

そのうえで「動員はプーチン体制の崩壊と革命を加速させるだけだ」として部分的な動員はむしろ、ロシア国内の政情の不安定化につながると指摘しました。

プーチン大統領 部分的国民動員を表明

ロシアのプーチン大統領は21日、日本時間の午後3時すぎから国民向けのテレビ演説で、ウクライナの軍事侵攻について「東部ドンバス地域を解放するという主な目的は今も変わっていない」と述べ、侵攻を続ける考えを改めて強調しました。

そのうえで、プーチン大統領は、戦地に派遣する兵士について、これまでの職業軍人だけでなく、21日からは予備役など国民を部分的に動員するという大統領令に署名したと明らかにしました。

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岸田首相 トルコ大統領と会談 ウクライナ情勢をめぐり

ニューヨークを訪れている岸田総理大臣は、ウクライナ情勢をめぐり、停戦に向けて仲介にあたってきたトルコのエルドアン大統領と会談しました。

会談は、日本時間の21日未明におよそ40分間行われました。

この中で岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻について、主権と領土の一体性の尊重に反し国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だと非難したうえで、力による一方的な現状変更の試みはいかなる地域でも許されないとする日本の立場を重ねて伝えました。

また、岸田総理大臣は、ウクライナからの農産物の輸出が再開したことについて、国連とともにロシアとウクライナの仲介にあたったトルコの粘り強い外交努力で実現したものだと敬意を示しました。

ゼレンスキー大統領「偽りの住民投票」

ロシア軍が侵攻を続けるウクライナで、親ロシア派の勢力は9月23日から27日にかけてロシアへの編入に向けた住民投票の実施を決めたと表明しました。

これに対しウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアが偽りの住民投票を行おうとしている」と非難したうえで、住民投票の実施に国際社会が一致して反対することが重要だと強調しました。

そして、ウクライナ軍が反転攻勢を強める東部などの状況について「前線の戦況は軍事的な主導権がウクライナ側にあることを示している」と述べ、さらに反撃を強化する考えを示しました。

岸田首相 ロシア批判「国連憲章の理念と原則踏みにじる行為」

岸田総理大臣は、日本時間の21日午前、ニューヨークの国連本部で開かれている国連総会で一般討論演説を行いました。

冒頭、創設以来77年間国連が中心になって形成してきた国際秩序の根本がロシアのウクライナ侵攻で大きく揺らいでいると指摘し、「国連憲章の理念と原則を踏みにじる行為だ」とロシアを批判しました。

そのうえで「今こそ国連憲章の理念と原則に立ち戻り、力と英知を結集するときだ。そのために実現しなければならないのが国連の改革であり、国連自身の機能強化だ」と呼びかけました。

そして、安保理の常任理事国、ロシアのウクライナ侵攻で国連の信頼性が危機に陥っているとしたうえで「これまでもしばしば、安保理の機能不全が指摘されてきた。改革に向けて文言ベースの交渉を開始するときだ」と安保理改革に向けた交渉開始の必要性を訴えました。

食料安保会議 ロシア非難の声相次ぐ

アメリカやEU=ヨーロッパ連合などの首脳や閣僚らが参加して食料安全保障に関する国際会議がニューヨークで開かれ、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアが世界の食料供給を悪化させているとして、非難の声が相次ぎました。

この会議は、国連総会に合わせてニューヨークで20日に開かれ、アメリカやEU=ヨーロッパ連合、それにセネガルなどの首脳や閣僚らが出席しました。

この中で、アメリカのブリンケン国務長官が演説し、ことし初めの時点で、1億9000万人以上が深刻な食料不足にあったと指摘したうえで「国連のWFP=世界食糧計画によると、ロシアのプーチン大統領の残忍なウクライナへの軍事侵攻によって、さらに7000万人が食料不足に陥るかもしれない」と述べ、世界の食料供給を悪化させているのは、ロシアだと非難しました。

また、スペインのサンチェス首相も「ロシアは、不法なウクライナ侵攻を終わらせなくてはならない。世界の重要な食料供給源を脅威にさらしている」と述べ、強く批判しました。

一方、EUのミシェル大統領は「飢餓は世界の多くの地域に差し迫っている。私たちは、いまこそ、政治的な約束を具体的な行動に移すときだ」と述べ、各国に対し、食料危機の解決に向けて行動を起こすよう呼びかけました。

アメリカ国務長官「偽りの住民投票だ」

アメリカのブリンケン国務長官は20日、ウクライナの親ロシア派の勢力がロシアへの編入に向けた住民投票の実施を決めたと表明したことについて「偽りの住民投票だ」と非難するとともに「プーチン大統領がロシアの予備役をさらに動員しようとしているという報告もある」と述べました。

そのうえで「もし、住民投票が進められ、ロシアがウクライナの領土の併合をもくろんでいるのなら、アメリカは決して認めることはない。国連憲章を支持する他の国々にとっても、それを明確にすることは非常に重要だ」と述べ、住民投票などが進められた場合、国連の加盟国に対し反対の立場を示すよう呼びかけました。

フランス マクロン大統領 軍事侵攻は「帝国主義への回帰だ」

フランスのマクロン大統領は20日、国連総会で演説し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「安全保障理事会の常任理事国であるにもかかわらず、国連憲章に故意に違反し、併合のための戦争へ道をひらいた」と指摘しました。

そのうえで「いまはヨーロッパだが、あすはアジアやアフリカだ。これは帝国主義や植民地の時代への回帰だ」と述べ、厳しく非難しました。

そして、軍事侵攻によるエネルギーや食料の危機で国際社会に分断が生じかねない状況だとして「いくつかの国は中立の立場を維持しているが、いま沈黙することは歴史的な責任を負うことになり、新たな帝国主義を利する」とし、国連憲章のもとですべての加盟国が結束するよう訴えました。

一方で「和平についてのフランスの立場は明確だ。ロシア側とも開戦前から数か月にわたって対話を続けてきた」と述べ、軍事侵攻を終結させるため今後も対話を続ける姿勢を強調しました。

トルコ大統領「戦争に勝者はいない」仲介への意欲を示す

トルコのエルドアン大統領は20日、国連総会で演説し「戦争に勝者はいないし、公正な和平に敗者はいない。いま求められているのは、解決に向けた対話と外交だ」と訴えました。

そのうえで、トルコが関与して実現したロシアとウクライナの外相会談や、ウクライナからの船舶での農産物の輸出再開を引き合いに出し、事態の打開に向けた仲介への意欲を改めて示しました。

また、「ザポリージャ原子力発電所でも同じ働きができる」として、原発の安全確保でも仲介の準備があると述べました。

一方で、エルドアン大統領は「国連安全保障理事会のより民主的で透明性のある構造の確立は、全人類が平和を求める上で重要な転機になる。世界は5か国よりも大きいということをあらゆる場で強調する」とし、常任理事国の中国やロシアが拒否権を行使することで機能不全に陥っているとして、改革が必要だという認識を示しました。

アメリカ大統領補佐官「領土併合を主張するために利用」

アメリカのサリバン大統領補佐官は20日、記者会見で「この住民投票は、国際社会の基礎である主権と領土の一体性をないがしろにするものである。投票が操作されることは分かっているし、ロシアはこの偽りの住民投票を領土の併合を主張するために利用するだろう」と述べ、ロシア側を非難しました。

そのうえで「仮に実施されても、アメリカは決してロシアがウクライナの一部を併合したとする主張を認めることはないだろう。そして、ウクライナの領土であること以外、認めることはないだろう。ロシアの行動を明確に拒否し、われわれは引き続き同盟国とパートナーとともにロシアに対価を支払わせ、ウクライナへの支援を行っていく」と述べました。

岸田首相 英トラス首相と初会談 親ロシア派の住民投票を非難

国連総会に出席するためニューヨークを訪れている岸田総理大臣は日本時間の21日未明、イギリスのトラス首相とおよそ1時間会談しました。

この中で岸田総理大臣がエリザベス女王の死去に弔意を伝えたのに対し、トラス首相は「日本の皆様のあたたかい弔意に感謝する」と述べました。

そして、ウクライナ情勢をめぐって意見を交わし、国際社会が結束してロシアに対する制裁とウクライナへの支援を継続することが重要だという認識で一致しました。

そのうえで、親ロシア派勢力が支配地域でロシアへの編入に向けた住民投票の実施を決めたと表明したことについて、ウクライナの主権と領土の一体性をさらに損ねるもので断じて受け入れられないとして強く非難することで一致しました。

また、両首脳は、中国を念頭に東シナ海や南シナ海での力を背景とした一方的な現状変更の試みに対する深刻な懸念を共有したほか、北朝鮮の核・ミサイル問題や拉致問題で引き続き連携していくことを確認しました。

国連事務総長「ウクライナ背景に国際社会が分断」 総会演説で

ニューヨークの国連本部で国連総会の一般討論演説が始まり、冒頭、グテーレス事務総長は、ウクライナ情勢を背景に国際社会の対立と分断が深まっている現状に強い危機感を示したうえで、食料危機など共通の課題に一致して取り組むよう加盟国に呼びかけました。

この中でグテーレス事務総長は「私たちの世界は危機にひんしていて、まひしている。地政学的な分断は国連の安全保障理事会の機能を弱らせ、国際法を弱体化させ、あらゆる国際協力を衰退させている」と述べ、ウクライナ情勢を背景に国際社会の対立と分断が深まっている現状に強い危機感を示しました。

また、ロシアによる軍事侵攻は大規模な破壊をもたらしたと指摘する一方、ウクライナ以外でも紛争や人道危機が広がりつつあるとして、アフガニスタンやミャンマー、それにシリアやエチオピアなどで多くの市民が苦しんでいると訴えました。

一般討論演説は今月26日まで行われ、焦点であるウクライナ情勢をめぐり、各国がどのような立場を示すのか注目されます。

“ロシア軍が司祭を拉致して拷問” ウクライナ正教会大主教

ウクライナで多くの国民に浸透しているウクライナ正教会のエフストラティ大主教は、宗教関係者の国際会議に出席するため来日していて、20日、東京都内でNHKの取材に答えました。

この中でエフストラティ大主教は「占領されたへルソン州では、司祭が拉致されたうえに拷問を受け、ロシアの情報機関への協力を求める文書に署名するよう強制された」と述べ、ロシアによる軍事侵攻の被害は宗教の面にも及んでいると非難しました。
また、プーチン大統領に近いとされるロシア正教会のキリル総主教などが、軍事侵攻を支持していることについて「ロシアは、何世紀も正教会を帝国主義の道具のように使ってきた。私たちは、特定の政治家や個人は支援しない」と述べ、宗教が戦争の正当化に利用されないよう、政治と宗教は一定の距離を保つべきだという認識を示しました。

そのうえでエフストラティ大主教は「一刻も早く平和が訪れるよう宗教指導者こそ声を上げるべきだ」と述べ、ロシア正教会の聖職者たちも軍事侵攻に反対する姿勢を示すべきだと呼びかけました。

ウクライナ正教会は、ロシアとの関係悪化に伴って2019年、ロシア正教会から独立した形で、これにロシア側は反発していましたが、軍事侵攻を受けて双方の正教会の対立が一層深まっています。

ウクライナ軍 ルハンシク州の集落を掌握

ウクライナ東部ルハンシク州のハイダイ知事は19日、SNSの投稿で、リシチャンシク郊外の集落ビロホリウカをウクライナ軍が掌握したと明らかにしました。

ルハンシク州ではことし7月、ウクライナ側にとって最後の拠点とされていたリシチャンシクをロシア軍が掌握し、ロシア国防省は州全域を掌握したと宣言しています。今回掌握したビロホリウカは、リシチャンシクの奪還に向けて反転攻勢を強めていくための足がかりになるとみられます。

ウクライナ南部でロシア軍による砲撃が相次ぐ

ウクライナ南部でウクライナ軍の反転攻勢の前線となっているミコライウ州の州都のセンケービッチ市長は、20日のオンライン記者会見で、連日、ロシア軍による砲撃が相次いでいるとしたうえで「きのうの砲撃でも40以上の住宅などが被害を受けた」と述べました。

さらに「ロシア軍が水源の川からのパイプをすべて破壊したため、市内では水道が機能していない」と述べ、こうした状況で多くの市民が避難するなどして、市の人口は以前の50万人から半数以下に激減しているということです。

ウクライナの支配地域でロシア編入へ向け住民投票の実施発表

ロシア軍が侵攻するウクライナで、地元の親ロシア派勢力は20日、東部のドネツク州とルハンシク州、南部のヘルソン州それに南東部のザポリージャ州の支配地域で、それぞれ今月23日から27日にかけてロシアへの編入に向けた住民投票の実施を決めたと一方的に表明しました。

実際にどの範囲で、どのような方法で行われるのかなどは不透明ですが、8年前にはウクライナ南部クリミアでも、ロシア軍が派遣される中で地元の親ロシア派が住民投票を実施し、その結果を根拠にプーチン大統領はクリミアを一方的にロシアに併合しています。

ウクライナ軍が東部や南部で支配された領土の奪還に向けた反転攻勢を続ける中、急きょ、住民投票の実施決定を表明した形で、ロシアとしては危機感を強めているものとみられます。

一方、こうした住民投票の動きに、ウクライナのゼレンスキー政権は強く反発していて、アメリカ政府もロシアが住民投票に踏み切れば追加の制裁を行うと警告してきました。

ウクライナ クレバ外相「偽りの住民投票では何も変わらない」

ウクライナのクレバ外相は、声明を出し「偽りの住民投票では何も変わらない。ロシアは侵略者であり、ウクライナの土地を違法に占領している。ウクライナは国土を解放する権利があり、ロシアがなんと言おうとも解放を続けていく」としています。