【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9月20日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる20日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ軍 ルハンシク州の集落を掌握

ウクライナ東部ルハンシク州のハイダイ知事は19日、SNSの投稿で、リシチャンシク郊外の集落ビロホリウカをウクライナ軍が掌握したと明らかにしました。

ルハンシク州ではことし7月、ウクライナ側にとって最後の拠点とされていたリシチャンシクをロシア軍が掌握し、ロシア国防省は州全域を掌握したと宣言しています。今回掌握したビロホリウカは、リシチャンシクの奪還に向けて反転攻勢を強めていくための足がかりになるとみられます。

ウクライナ南部でロシア軍による砲撃が相次ぐ

ウクライナ南部でウクライナ軍の反転攻勢の前線となっているミコライウ州の州都のセンケービッチ市長は、20日のオンライン記者会見で、連日、ロシア軍による砲撃が相次いでいるとしたうえで「きのうの砲撃でも40以上の住宅などが被害を受けた」と述べました。

さらに「ロシア軍が水源の川からのパイプをすべて破壊したため、市内では水道が機能していない」と述べ、こうした状況で多くの市民が避難するなどして、市の人口は以前の50万人から半数以下に激減しているということです。

ウクライナの支配地域でロシア編入へ向け住民投票の実施発表

ロシア軍が侵攻するウクライナで、地元の親ロシア派勢力は、東部のドネツク州とルハンシク州、そして、南部のヘルソン州の支配地域で、それぞれ今月23日から27日にかけて将来のロシアへの編入に向けた住民投票を実施することが決まったと一方的に発表しました。また、南東部のザポリージャ州の支配地域でも住民投票を実施するとしています。

ウクライナ反転攻勢でロシアの作戦に影響 イギリス国防省

戦況を分析するイギリス国防省は20日、ロシア海軍の黒海艦隊の潜水艦がロシアが一方的に併合した南部クリミアの軍港都市セバストポリから、ロシア南部のノボロシースクに再配置されたとして、ロシア側がウクライナ軍の長距離攻撃能力の強化を警戒していると分析しています。

また、イギリス国防省はロシア空軍が過去10日間の戦闘で、少なくとも4機の戦闘機を失ったとしたうえで「航空能力で優位に立てていないことがロシア軍の作戦をぜい弱にしている最大の要因だ」として、ロシアの海軍や空軍の作戦などにも影響が出ていると指摘しています。

親ロシア派勢力 ロシア編入に向けた住民投票で協議と主張

ロシアの国営通信によりますと19日、東部のドネツク州とルハンシク州の親ロシア派勢力が、ロシアへの編入に向けた住民投票を早期に行うべきだと主張し、この準備に向け両州の武装勢力の指導者が電話で会談したとしています。また、20日には南部ヘルソン州の親ロシア派の幹部も住民投票に向けてロシアと協議を始めていると主張しました。一方、こうした動きについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は19日、「ウクライナ軍の反転攻勢が続く中、親ロシア派勢力やクレムリンの意思決定者の一部がパニックに陥っていることを示唆している」と分析しています。

国連総会 ゼレンスキー大統領のビデオ演説が特例で

ニューヨークの国連本部では20日午前、日本時間の20日午後10時から各国の首脳らによる一般討論演説が始まります。

国連総会の首脳演説は、新型コロナウイルス対策でおととしはすべてビデオ演説で、去年は対面での演説かビデオ演説を加盟国が選択して行いましたが、ことしは3年ぶりに通常の対面形式で行われることになりました。

これについてウクライナ政府は、ロシアによる軍事侵攻が続いているため、ゼレンスキー大統領がニューヨークを訪れるのは難しいとして、特例として今回もビデオ演説を認めるよう求めていました。

16日に行われた国連総会での採決の結果、欧米や日本など101か国が賛成し、ロシアやベラルーシ、それに北朝鮮など7か国が反対、中国やブラジルなど19か国が棄権して、賛成多数でゼレンスキー大統領のビデオ演説が認められました。

しかし反対したロシアや棄権にまわった国の間からは、ウクライナだけを特別扱いするもので不平等だと反発する声も上がっているほか、採決に参加しなかった国も60か国を超え、ウクライナ情勢をめぐる各国の立場の違いが改めて浮き彫りになりました。

今回の総会は、ウクライナ情勢が最大の焦点で、現地で激しい戦闘が続く中、事態の打開に向けたきっかけが見いだせるのか、逆に対立の構図が鮮明になるのか注目が集まります。

IAEA事務局長が声明 “直ちに砲撃停止を”

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は19日、声明を出し、南ウクライナ原子力発電所から300メートルほど離れた場所で砲撃によって爆発が起きたと、ウクライナ側から連絡を受けたと明らかにしました。

そのうえで「ザポリージャ原発での事故を防ぐ活動に集中してきたが、この国のほかの原発が直面する潜在的な危険を浮き彫りにした。原発を危険にさらすあらゆる軍事行動は許容できず、直ちにやめなければならない」と訴えました。

ゼレンスキー大統領がロシアを非難 “南部の原発周辺を攻撃”

ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、SNSにメッセージを投稿し「ミコライウ州にある南ウクライナ原子力発電所からおよそ300メートルの場所にミサイルが落下し、短時間の停電が発生した」と述べました。

そのうえで「ロシアは全世界を危険にさらしている。手遅れになる前に止めなければならない」と訴えて、ロシアを非難しました。

ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムによりますと、施設内の建物の窓ガラスが割れましたが、3基ある原子炉に損傷はなく、職員などにけがもないということです。

今月に入って、ウクライナでは発電所やダムなどインフラ施設への攻撃が相次ぎ、イギリス国防省は、ロシア軍がウクライナの士気をくじこうと標的を拡大した可能性が高いと分析していて、砲撃が相次いだ南東部のザポリージャ原子力発電所に続き南ウクライナ原発の安全性にも懸念が高まっています。

一方、ロシア軍から解放された東部ハルキウ州のイジュームで見つかった集団墓地についてゼレンスキー大統領は、多くの市民が犠牲となった首都近郊のブチャを引き合いに出して厳しく非難しています。

これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は19日「これはブチャと同じシナリオだ。ウソだ」と述べ、ウクライナ側の自作自演だと主張しました。

プーチン大統領最側近 中国訪問 安全保障めぐり中国高官と会談

プーチン大統領の最側近の1人で安全保障会議書記のパトルシェフ氏は中国を訪れ、19日、福建省で戦略安全保障協議に臨み、外交を統括する楊潔※チ政治局委員と会談しました。

中国外務省によりますと、楊氏は今月15日に習近平国家主席とプーチン大統領の首脳会談が行われたことを踏まえ「政治的な相互信頼と戦略的な協力を深化させ、共通の利益と世界の安定を守るため、大きな貢献をしたい」と述べたということです。

一方、ロシア安全保障会議は「双方は朝鮮半島や台湾周辺などの政治、軍事情勢について議論し、アメリカとその同盟国側による緊張の激化に懸念を表明した」としています。

そして、合同演習や巡視活動を中心に軍事協力を進めるとともに参謀本部の間の連携を強化することで合意したということです。

プーチン政権としては、ウクライナ侵攻以降、初めてとなった両国の首脳会談をきっかけに、アメリカに対抗するためにも中国との軍事的な連携を深めたいねらいがあるものとみられますが、中国側の発表には軍事に関する内容は含まれておらず、両国の間には温度差もうかがえます。

※チは、「竹かんむり」に「がんだれ」、その中に「虎」

欧米から経済制裁受けるロシアとイラン 取り引き拡大の動き

ロシアからイランへの経済視察団には、これまでで最大規模となる65の企業からおよそ120人が参加し、19日から首都テヘランを訪れています。

商談会は3日間行われ、イランからは農林業や製造業、それに医療など、さまざまな分野からおよそ650社の経営者らが、ロシアとの新たなビジネスを期待して参加しました。

イラン税関によりますと、去年の貿易全体に占めるロシアとの取り引きは、輸入が3%ほど、輸出が1%ほどにとどまっています。

しかし、イランでは核合意をめぐる交渉が行き詰まってアメリカによる制裁が続き、ロシアではウクライナ侵攻で欧米による制裁が強化される中、両国の間で制裁を回避して取り引きを拡大しようとする動きが進んでいます。

イランの包装資材メーカーの経営者ハッサン・ガマリさんは「ドイツや日本が持つような世界の最新技術を導入したいが、制裁のせいでそれができない。ロシア企業がよい技術を持っていたら、ぜひイランで利用したい」と話していました。