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地価調査 住宅地31年ぶりの上昇 いったい何が

全国の土地の価格を調べた「都道府県地価調査」が9月20日に公表されました。「住宅地」の地価の全国平均は、前の年に比べてプラス0.1%。バブル経済で土地が値上がりしていた1991年以来、実に31年ぶりに上昇に転じました。住宅地の地価はなぜ上昇に転じたのか。そして、これからどうなっていくのでしょうか。
(経済部記者 三好朋花・札幌局記者 岡崎琢真)

住宅地 1991年以来の上昇に

地価調査は、毎年7月1日時点の全国の土地の価格を都道府県が調べるもので、国土交通省は20日、ことし対象となった2万1400余りの地点の結果をまとめ、公表しました。

全国の地価は、用途別では、住宅地の全国平均が去年と比べてプラス0.1%、商業地がプラス0.5%となりました。
このうち、住宅地の地価がプラスとなったのは、1991年以来、31年ぶりです。

住宅地の地価が上昇に転じた背景には、いったい何があるのでしょうか。

都心部も堅調な住宅需要

こちらは、東京千代田区に建設中の地上17階建ての高級分譲マンションのモデルルームです。
モデルルーム
102戸の販売戸数に対し、販売開始前からおよそ2700件の問い合わせが。

9月17日に40戸が1部屋あたり1億4100万円から11億5800万円で売り出されると、19日までの3日間で68件の購入の申し込みがあったということです。

共働きで世帯収入が高い、いわゆる「パワーカップル」と呼ばれる夫婦などから人気で、住宅としての利用のほかに資産として購入する人も多いということです。
三菱地所レジデンス 岡橋志郎執行役員
「都心の物件は非常に好調に推移していて、市場全体で、新築・中古ともにに物件の供給が需要に追いついていない。家にいる時間が長くなったことや働き方の変化もあって在宅時間が長くなり、家の面積や快適性を家庭内で見直す機会が増えているのではないかと思う」
新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言などの制限がなくなり、景気が持ち直していることや、低い金利で資金を調達できる環境が続いていることを背景に、都心部などの住宅需要は堅調で、東京都の住宅地の地価はことし、去年を1.3ポイント上回る、プラス1.5%となりました。

東京圏上昇率上位独占のまちとは

こうした中、地価の上昇範囲は、より周辺の地域にも広がっています。

東京を中心に神奈川、埼玉、千葉、茨城の4県の一部を含む「東京圏」で、上昇率の上位3地点を占めたのが、茨城県のつくばみらい市です。
3地点の上昇率は10%から10.8%と、いずれも大幅な上昇となりました。

市の中心部にあるつくばエクスプレスの「みらい平駅」から都内の秋葉原までは約40分。
同じ沿線で、より都心に近い千葉県流山市や茨城県守谷市でも地価が上昇する中、都心部へのアクセスの良さや割安感から人気が高まり、市外から人口が流入していることが背景にあります。
以前から市内に住み、ことし4月から市内のある分譲地に住み始めた男性は、周辺の宅地開発のスピードに驚いているといいます。
分譲地に住む男性
「あっという間にまわりに家がたっていてびっくりしています。常にどこかしら工事をしているイメージがあります」
また、2歳の娘が遊ぶことができる庭のある家に住みたいと、家族3人で流山市から引っ越すことにした男性は「都内に近ければ近いほど土地の値段が上がり、庭をつくるのが大変になってしまう。テレワークが多く通勤することはあまりないですが、出勤するにしても40分程度で都内に行けるので便利です」と話していました。
市内の分譲地で販売を手がける住宅メーカーの担当者は、自身の経験の中でも、特に売れ行きがはやいと感じています。
大和ハウス工業 茨城支社住宅事業部 滝口桂司主任
「首都圏の通勤範囲の中でみても、価格や土地の広さ、建物のボリュームが充実していて、選ばれる割合が多いのではないか」

全国でも都市部で上昇

全国的に、都市の中心部とその周辺地域の住宅地の価格は上昇傾向にあります。
東京圏と同じく、名古屋圏も上昇幅が拡大。

大阪圏は3年ぶりに上昇に転じました。

また、札幌、仙台、広島、福岡の各都市でも上昇傾向が強まっているほか、需要が波及した周辺の市や町では高い上昇率となっています。

住宅地上昇率 全国トップ10 独占したのは…

このうち北海道は、札幌市近郊の北広島市や江別市などの地価が大幅に上昇したことから、住宅地の地価の上昇率、全国トップ10をすべて北海道の地点が占める形となりました。

このうち、1位から3位の地点を独占したのが、札幌市に隣接する北広島市で、3地点の上昇率は、いずれも29%台となりました。
札幌市の住宅地の平均が1平方メートルあたり9万3500円なのに対し、北広島市の地価は、4割未満の3万5700円。

札幌市の地価が10年連続で上昇する中、比較的割安感があることなどから住宅需要が高まっているのが要因です。

新球場の建設も

もうひとつ、地価を押し上げる要因となっているのが、来年3月にプロ野球・日本ハムの新球場が市内に開業することへの期待感です。

新球場の隣に建設中のマンションは、1戸あたりの価格は最も高いもので1億5000万円。
建設中のマンション(左)と新球場
販売会社によりますと、北広島市内では、「かなり強気の価格設定」だったということですが、ことし、3回に分けて販売された118戸が、いずれも即日完売したということです。

北広島市では、中心部の大幅な地価の上昇を受けて、郊外でも住宅を求める動きが出始めていて、地元の不動産会社ではこうした傾向がさらに強まる可能性があると見ています。
JMPサンライズ 羽田好志社長
「建築資材の高騰に伴って住宅の価格が上昇してきているため、予算内におさめようと安い土地を求める動きが出ている。住宅価格の上昇が今後も続けば、新築については郊外での需要がさらに増えてくるのではないか」

今後の住宅需要 どうなる?

31年ぶりに上昇に転じた全国の住宅地の地価。

今後、どうなるのでしょうか。
ジョーンズ ラング ラサール リサーチ事業部 大東雄人シニアディレクター
「都心のアクセスがいい場所は依然として人気が高い一方、在宅勤務の普及によって、いろいろな場所で仕事ができることから、住宅の需要のすそ野がより広がっている。
今後も住宅地の地価の回復の流れは続くと思うが、その度合いは、今後の人の流れにどう対応するかで違ってくる。例えば、地方でも円安を背景に外国人観光客を呼び込む仕組み作りなどが、今後その土地の価格下落に歯止めをかける大きなポイントになるのではないか」
経済部記者
三好 朋花
2017年入局
初任地の名古屋局からこの夏に経済部へ
国土交通省を担当
札幌放送局記者
岡崎 琢真
2017年入局
旭川局を経て去年11月から現所属
経済担当でエネルギー業界や不動産業界などを取材

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