医療的ケア児支援法 自治体で拠点の設置進むも 受け入れに課題

医療的ケア児の支援を進める法律が施行されて18日で1年です。
法律で設置が求められている支援や相談の拠点について、NHKが各都道府県に取材したところ、これまでに8割近くの自治体が設置した一方で、設置した自治体の多くが、「医療的ケア児を受け入れる保育所や学校など、地域資源の不足が課題」と答え、支援を進める上での課題が浮き彫りとなりました。

たんの吸引や人工呼吸器などが欠かせない「医療的ケア児」は、全国で2万人を超えると推計され、1年前の9月18日に医療的ケア児と家族の支援を自治体などの責務とする「医療的ケア児支援法」が施行されました。

NHKはことし7月、法律で設置が求められている支援の拠点で、家族からの相談対応と支援のための関係機関との調整などを担う「医療的ケア児支援センター」の設置状況などについて、都道府県にアンケートを行いました。

その結果、▽7月末時点で「設置済み」と回答したのは、全体の66%にあたる31の道府県、▽「今年度以降に設置予定」は、12の都府県で、このうち5つの都県では、その後8月から9月にかけて設置され、これまでに全体の8割近くの36の都道府県で設置されたことがわかりました。

▽一方、「設置時期は未定」と回答したのは4県でした。
4県に理由を聞いたところ、いずれも「センターの機能などを検討中」と回答し、▽「今年度以降に設置予定」とした自治体は「センターの機能などを検討中」と「設置場所の選定・調整に時間を要する」が最も多くなりました。

また、アンケートで「設置済み」と答えた自治体に、課題を複数回答で尋ねたところ、▽医療的ケア児などを受け入れる通所施設や保育所、それに学校など「地域資源が不足している」とした自治体が71%、▽「地域資源が不足しているため相談の解決に時間がかかる」とした自治体も55%に上っていて、地域資源の不足が支援を進める上での課題となっていることが浮き彫りとなりました。

「設置時期は未定」と回答の群馬県では

「設置時期は未定」と回答した群馬県は、支援センターの体制や運営方法などについて検討を続けていますが、支援は医療・福祉・教育など、さまざまな分野にわたるため、人員の調整や予算の確保などに時間がかかっているということです。

県は今年度中にも検討を終えて設置時期などを決めたいとしています。
県障害政策課の高橋淳課長は「出遅れていることは申し訳なく、焦りがないといったらうそになる。設置に向けた方向性をできるだけ早く出したい」と話しています。

設置の時期が定まらない中、県内では医療的ケア児の家族が、ほかの家族の相談に対応するなど支え合う取り組みが続いています。
高崎市に住む石川京子さんの長女の知果さん(10)は、生後まもなく細菌性髄膜炎を発症して脳性まひになり、自分で食事を取ったり水を飲んだりすることができないため、管で栄養を送る「胃ろう」が必要です。

石川さんは、医療的ケア児などの親が支え合って子育てできる場をつくろうと、7年前に親たちが集うサークルを立ち上げました。

今月、開かれたサークルのランチ会では、ほかの家族から「地元の小学校と特別支援学校のどちらに通わせるか悩んでいる」といった相談が寄せられると、石川さんは娘を地元の学校に進学させた経験を交えながらアドバイスしていました。

石川さんは「ケア児の親は悩みだけでなく子どもが成長した喜びも聞いてもらいたい、分かち合いたいと思っています。そうした話ができるセンターが早くできてほしいです」と話しています。

支援センタ-設置後の相談状況は

設置された支援センタ-には多くの相談が寄せられていますが、地域資源の不足から対応が難しいケースにも直面しています。

ことし7月に山形市に設置された支援センターでは、医療ソーシャルワーカーなど2人が常駐し、医療的ケア児に詳しい小児科医とともに相談などに対応しています。

開所後の1か月で、▽障害児の通所施設や公立の保育所から医療的ケア児を受け入れるために必要なことなどの問い合わせが15件あったほか、▽地元の保育所への入園や小学校への入学などについて家族などから7件の相談が寄せられたということです。

なかには「入園を断られてしまったが、どうすればいいか」といった家族からの相談も寄せられましたが、医療的ケア児を受け入れる保育所はまだ少なく、入園先が見つからないケースもあるのが実情です。

こうした中、医療的ケア児の支援にあたる人材を増やすための研修も行われています。
8月、山形市内の保育所で開かれた研修会では、保育士10人が▽たんの吸引や鼻から栄養を注入する経管栄養のやり方や▽人工呼吸器の操作方法などを学びました。

参加した保育所の園長は、「対応方法を知ることで不安が解消されていくので、受け入れに向けて前向きに取り組む道筋ができた」と話していました。
また、研修の指導役を担った「山形県医療的ケア児等支援センター」の中村和幸医師は、「医療的ケア児の家族には、子どもの発達を伸ばしたいという思いがあり、ニーズに応えられる体制を整えるのが目標だ。今後は多くの保育所に研修会を受けてもらえるよう、こちらからアプローチしていきたい」と話していました。

看護師の雇用続ける自治体も

医療的ケアを行う看護師の確保に積極的に取り組む自治体もあります。

岐阜県可児市では医療的ケア児を保育所や幼稚園で受け入れるため看護師を継続的に雇用しています。

きっかけは3年前、たんの吸引が必要な女の子を市内の保育所で受け入れるために看護師2人を雇用したことで、市は女の子が卒園して小学校に進学した後も将来の受け入れに備えて雇用を続け、このうち1人は、今は市内の別の保育所で働いています。

この保育所にはケア児はいませんが、体調不良を訴える園児の手当てのほか、アレルギーや窒息などの際の対応についてのマニュアル作成にあたっています。

今も保育所で働く看護師の天谷美緒さんは「必要とされる限り働き続けて登園したいという医療的ケア児がいれば、また力になりたいです」と話していました。

可児市では現在、天谷さんを含めて5人の看護師を市内の保育所と幼稚園で雇用し、合わせて2人の医療的ケア児を受け入れています。

可児市こども課の梅田浩二課長は「医療的ケア児の登園のニーズを予測するのは難しいため、看護師を継続雇用し、希望があればできるだけ早く受け入れるようにしたい」と話していました。