【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(17日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる17日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

プーチン大統領「新たな領土獲得していく」

ロシアのプーチン大統領は16日、上海協力機構の首脳会議で訪れていたウズベキスタンで、一部のメディアを集めて会見し「ウクライナ軍は反撃を試みているが、われわれはドンバス地域での攻撃作戦をやめているわけではない。ゆっくりと、しかし一貫して、ロシア軍は新たな領土を獲得していく」と述べ、反撃を受けていることを認めつつ、あくまで侵攻を継続する考えを強調しました。

さらに、プーチン大統領は、ウクライナ側がロシア領内でテロ行為を試みたとする主張を一方的に展開しながら「同じような事態が繰り返されれば、その答えはより深刻になる」と警告しました。

イギリス国防省「前線部隊に余力や士気があるかは不明」

ウクライナ東部でウクライナ軍が反転攻勢を続ける中、イギリス国防省は17日の分析で「ロシアは、ドンバスの支配地域を失わないために頑強な防衛を試みるだろうが、前線部隊に余力や士気があるかは不明だ」という見方を示しました。

ゼレンスキー大統領 国連総会はビデオ演説

来週から始まる国連総会の首脳演説は3年ぶりに通常の対面形式で行われますが、ウクライナ政府は、ロシアによる軍事侵攻が続いていることからゼレンスキー大統領が安全に出国し帰国するのが難しいなどとして、今回は事前に収録したビデオ演説を流すことを認めるよう求める決議案を提出しました。

この決議案について16日、国連総会で会合が開かれ、採決の結果、欧米や日本、インドなど101か国が賛成し、ロシアやベラルーシ、それに北朝鮮など7か国が反対、中国やブラジルなど19か国が棄権して、決議案は賛成多数で採択されました。

賛成した国々からは、ロシアの軍事侵攻を非難し、非常事態のためビデオ演説を認めるべきだという意見が出ました。
一方、反対したロシアや棄権にまわった国々からは、ウクライナだけを特別扱いするもので、不平等だとする意見も出されました。

仏大統領「残虐行為を最も強いことばで非難する」

ウクライナ東部ハルキウ州のイジュームで多くの住民が殺害され、埋められたとみられることについて、フランスのマクロン大統領は、「ロシアに占領されていたイジュームでの残虐行為を最も強いことばで非難する。加害者は、その責任を負わねばならない。正義なくして平和はない」とツイッターに投稿し、憤りを表しました。

イジュームの破壊と犠牲の実態は

ウクライナに侵攻したロシア軍が5か月あまりにわたって占領し、今月ウクライナ軍が奪還した、東部ハルキウ州の重要拠点イジュームでは、ロシア軍による破壊と市民の犠牲の実態が次々と明らかになっています。

ウクライナ東部ハルキウ州のイジュームは、4月上旬から、今月上旬にウクライナ軍が奪還するまで5か月あまりにわたって、占領されました。

NHKの取材班は16日、ウクライナ当局の許可を得て、イジュームに入りました。
街の中心部には、再びウクライナの国旗が掲げられるようになり、住民の女性は「住んでいるアパートの屋根やベランダが砲撃され、少しでもずれたら死ぬところだった。平和で落ち着いた状況で暮らしたい」と話していました。
市内では、多くの住宅や商店の壁が崩れたり、建物が焼けたりしていました。
また、学校の校舎や教会の建物も、一部が破壊され、砲撃を受けたとみられます。
市内の別の場所では、ロシア軍のシンボルであるアルファベットの「Z」の文字が記された軍用車両が放置されたままになっていました。

イジュームの北に位置する森では、多くの人が殺害され埋められたとみられる場所が、確認され、ウクライナ当局は「集団墓地」だとして捜査を始めています。

現地では、数十人の作業員が埋められた遺体を掘り返す作業を進め、捜査員が、見つかった遺体の特徴などを記録していました。ハルキウ州の検察当局の責任者は「首の周りに縄が巻かれたり、手を縛られたりした遺体が複数見つかっており、拷問を受けたとみられる。この場所だけで、市民500人以上が埋められた可能性がある」と記者団に話していました。

ウクライナ大統領「イジュームで450人の遺体確認」

ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、首都キーウでロイター通信の取材に応じ、東部ハルキウ州の重要拠点、イジュームについて、多くの市民が犠牲となった首都近郊のブチャを引き合いに被害の深刻さを強調しました。

この中で、ゼレンスキー大統領は「ブチャのあと、解放された地域で似たような光景を目にしている。イジュームでは450人の遺体が埋められているのが確認された」としたうえで、このほかにも集団墓地があり、犠牲者の数はさらに増えるという見方を示しました。

またロシアとの停戦交渉については、「ロシアを恐れて取り引きすることは最悪の結果を招き、第3次世界大戦の始まりとなるだろう。核兵器の使用をちらつかせて脅す者との対話はありえない」と述べて、今の時点では交渉に臨むことはないという考えを強調しました。

そして、ウクライナ軍の反転攻勢をたたえる一方で、「この戦争の終結について語るのはまだ早い」と述べ、戦争の終結に向けては、さらに時間がかかるという見通しを示しました。

ロシア中央銀行 6会合連続で利下げ

ロシアの中央銀行は16日、政策金利を今の8%から7.5%に引き下げると発表しました。

ロシア中央銀行は、ウクライナ侵攻後のことし2月末、通貨ルーブルの急落に対応するため、政策金利を9.5%から20%へ大幅に引き上げましたが、その後はルーブルが値を戻していることなどから、金利の引き下げを続けています。

利下げは6会合連続で、ロシア中央銀行は声明で「ロシア経済の外部環境は依然として厳しく、多くの企業が生産と物流の面で困難に直面しているが、供給元が多様化し販売市場も拡大していて、企業心理は改善しつつある」と指摘しています。

そして、ことしのインフレ率の見通しを11%から13%としたうえで、再来年(2024年)のインフレ率を目標とする4%に維持するため、金融の引き締めが必要となる可能性があるとしています。

ただ、発表後に記者会見したナビウリナ総裁は、「利下げのサイクルは終わりに近づいている」と述べたものの、今後の金利の動向について明確には触れませんでした。

米国務長官 集団墓地について「おぞましい話の一部」

ウクライナ軍が奪還した東部ハルキウ州のイジュームで集団墓地が見つかったことについて、アメリカのブリンケン国務長官は16日、記者会見で「進行中のおぞましい話の一部だ」と述べました。

そのうえで、「こうした残虐行為をした者や、命令した者の責任を追及すると明確にすることが極めて重要だ」と述べ、各国と協力して証拠を収集し、ロシアの戦争犯罪を追及する姿勢を強調しました。

プーチン大統領「目標は東部ドンバス地域の解放だ」

ロシアのプーチン大統領は、上海協力機構の首脳会議に出席したあと、一部のメディアを集めて記者会見し、「欧米側は何十年にもわたって、ロシアを崩壊させるという考えを培ってきた。そのために欧米側はウクライナを利用し、これを防ぐために特別軍事作戦が始まった」と主張しました。

また「ウクライナは活発な反撃作戦を開始すると発表したが、どのような終わりを迎えるか見てみよう。特別軍事作戦の主要な目標は東部ドンバス地域の解放だ。われわれは急いでおらず、本質的に変わることはない」と述べ、侵攻を継続する考えを改めて示しました。

ウクライナ側との停戦交渉が暗礁に乗り上げていることについては、「ウクライナが何をしようとしているのかわからない。彼らがほぼ毎日、立場を変えるからだ」と主張しました。

そのうえで、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談を行う可能性について「彼らが拒否している。第1の条件は彼らが同意することだが、彼らは望んでいない」と主張しました。

東部ハルキウ州の男性 解放の喜び語る

東部ハルキウ州の州都から南東におよそ60キロ離れた町、チカロフスケはことし3月からロシア軍によって占拠され続けてきましたが、今月8日、銃撃戦の末、ウクライナ軍によって解放されました。

NHKは16日、ロシアの占領下、町にとどまっていた住民の1人、ミコラ・ティエルニさん(60)に電話で話を聞くことができました。

妻とともに自宅にとどまっていたティエルニさんは、解放されたときの状況について、「ロシア軍の兵士が入ってこないようにしながら家の中に隠れていましたが、ドアを開けると青いリボンをつけた兵士たちが『こんにちは。ウクライナ軍です』と言って笑顔で握手し抱き合ってくれました。言い表せないほどの幸せでした」と振り返りました。

そのうえで、「ロシアの占領はもうたくさんです。困難はありますが、ウクライナが好きです。戦争に勝つのはウクライナです」と話していました。

一方で、電気やガスは復旧しておらず、修理道具もないということで、ティエルニさんは、「冬が来つつありますが、暖房はつけられず、家の中は湿って寒いままです。電気かガスのどちらかがどうしても必要です」と話し、冬を前に、ライフラインが一刻も早く復旧することを願っていました。

ウクライナ国家警察長官「集団墓地には多くの市民埋葬か」

ウクライナ軍が、東部ハルキウ州で奪還した重要拠点イジュームで集団墓地が見つかったことについて、ウクライナ国家警察のクリメンコ長官は、16日、記者会見で「集団墓地に埋葬された人の多くは市民で、一部軍人も含まれているという情報がある」と明らかにしました。

また、「集団墓地では、これまでに445の墓が確認されていて、現地には警察官40人ほどと医療関係者10人ほどがいる。今後、数週間かけてショベルカーや特殊な車両を使って現場を掘り起こし、死因や遺体の損傷状況を調べていく」と述べました。