ロシア側の兵力 受刑者の動員活発化 人員不足深刻か 英国防省

イギリス国防省は、ロシア側はロシア人の受刑者に対して、減刑や金銭と引き換えに戦闘に加わるよう勧誘する動きを活発化させているなど人員不足が深刻になっていると指摘しています。
一方、ウクライナ軍によって奪還された東部ハルキウ州の重要拠点イジュームでは多数の住民が殺害され、埋められたと見られる集団墓地が確認されウクライナ側は非難を強めています。

イギリス国防省は16日の分析で、ロシア政府とのつながりが指摘される民間軍事会社「ワグネル」が関わる形で、ロシア人の受刑者に対して、減刑や金銭と引き換えに戦闘に加わるよう勧誘する動きを活発化させていると指摘しています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州では、ほぼ全域を解放したと強調しています。

ウクライナ軍が反転攻勢で奪還したハルキウ州の重要拠点イジュームでは、多数の住民が殺害され、埋められたと見られる集団墓地が確認されました。

現場は、イジューム北側の森の中で、16日、数十人の作業員が土を掘り返す中、ウクライナの捜査員が、土の中から相次いで見つかっている遺体の確認作業を進めています。

NHKの取材班が現場に入ったところ、少なくとも6体の遺体がシートに覆われているのが確認されました。

ハルキウ州で戦争犯罪の捜査を行っている検察官は記者団に対し、「この一帯ではすでに25人の遺体が確認された。中には両手がひもで結ばれていた状態の人もいた」としたうえで、「全体ではおよそ500人の遺体があると見られる」と話していました。

ロシアで“隠れ動員”の動き

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍の兵力不足が指摘される中、ロシア国内では、事実上の動員とも受け止められる動きが出ています。

プーチン大統領の側近の1人で、チェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏は15日、SNSに「政権による戒厳令の宣言を待つことも、軍事作戦の終わりをじっと待つ必要もない」と投稿したいえで、ロシア国内の自治体のトップに対し、地域単位で動員をかけるよう訴えました。

カディロフ氏は「自治体ごとに1000人ずつ志願兵を準備すれば、全国規模で8万5000人という軍勢になる」と主張していて、16日までに少なくとも6人の知事がこれに同調する姿勢を示しています。

ロシア大統領府は、国民を動員する考えはないとしていますが、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日、「プーチン政権はハルキウ州での敗北に対して総動員の条件を整えるより、隠れた動員に賭けているようだ」と分析しています。

イギリス国防省も16日の分析で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が、ロシア人の受刑者に対して、減刑や金銭と引き換えに戦闘に加わるよう勧誘する動きを活発化させていると指摘しています。

東部のイジューム 周辺で450基の集団墓地か

ウクライナ軍が東部ハルキウ州で奪還した重要拠点、イジュームについて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は16日、この周辺でロシア側が作ったとみられる450基の集団墓地が発見されたと明らかにしました。

ポドリャク大統領府顧問は「数か月の間、ロシア軍の占領地域では暴力や拷問、それに大量殺人が横行していた。私たちは悪を放っておかない」と強く非難しました。

また、イジュームで発見された集団墓地だとしてロイター通信が配信した写真には、木で作られた十字架がならんで立てられている様子がうつされています。

ウクライナの人権オンブズマンのドミトロ・ルビネッツ氏は16日、SNSで「イジュームではロシア軍によって7割の建物が破壊された。また、軍や警察、それに市民たちと、戦争犯罪が行われていた場所を複数特定することができた。このうち、ある建物の地下室では、市民たちが拷問を受けていた」と述べ、戦争犯罪の証拠の収集を継続して行っているとしています。

イジューム中心部の様子は

ウクライナ東部ハルキウ州のイジュームの中心部では、多くの住宅や商店が戦闘によって破壊されています。

このうち学校では、入り口や校舎が大きく崩れています。

一方で、中心部にある市役所では、今回の反転攻勢を受けて、ウクライナの国旗が掲げられるようになっています。

住民の女性は「住んでいるアパートの屋根に砲撃があり、少しでもずれていたら死ぬところでした。戦闘が終わりこのまま平和な状態が続いてほしいです」と話していました。