北方四島周辺のホッケ漁解禁日 日ロ間の調整つかず操業見送り

日ロ両政府の協定に基づいて北方四島周辺で漁を行ういわゆる「安全操業」のうち、ホッケ漁は16日が解禁日ですが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で日ロ間の調整に時間がかかっているため、国後島周辺での操業は見送られました。

「安全操業」は、1998年に結ばれた日ロ政府間の協定に基づきロシア側に協力金を支払う形で北方四島周辺で漁を行う枠組みで、このうち国後島周辺でのホッケ刺し網漁は16日が解禁日です。

ことしの操業条件は去年12月に妥結していますが、北海道水産会などによりますとロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁によって協力金の送金など日ロ間の調整に時間がかかっているため、16日の国後島周辺での操業は見送られました。

羅臼漁港では9隻が出漁の準備を進めていましたが、16日朝はいわゆる「中間ライン」の手前の羅臼側の海域でホッケ漁が行われていました。

漁業者の男性は「安全操業に出る段取りで網の準備をしているので不安だが、今月中、来月の頭くらいには漁に出たい」と話していました。

安全操業をめぐってはロシア政府がことし6月、サハリン州との協力事業への日本側の支払いが済んでいないことを理由に、協定の履行を停止すると発表していて、国や北海道水産会が漁が開始できるようロシア側との調整を続けています。

日ロ政府間の協定に基づく「安全操業」とは

「安全操業」は1998年に結ばれた日ロ政府間の協定に基づき、操業条件を守ることを前提に、北方四島周辺の海域で拿捕(だほ)される心配なく「安全」に漁を行うことができるという枠組みです。

操業海域は国後島の北側と歯舞群島の南側などの海域で、主に羅臼町と根室市の漁業者がスケソウダラやホッケ、タコなどをとっています。

操業の条件は毎年の交渉で決められていて、ことしの漁獲量は去年12月の交渉の結果、スケソウダラが955トン、ホッケが777トン、タコが213トンなどとなっているほか、協力金などとして合わせて4240万円をロシア側に支払うことで合意しています。

操業するのは四島周辺の海域ですが「いずれの政府の立場も害さない」ことを取り決め、日ロの主権を棚上げする形で行われています。

しかし、2019年には根室漁協などの漁船5隻が拿捕されて、国後島に連行されたほか、羅臼漁協の漁船2隻が書類の不備で罰金を要求されるなど、近年はロシア側の監視が強まり、漁業関係者からは漁の安全を懸念する声が上がっています。

羅臼町長「安全操業の継続を期待」

漁業者出身の羅臼町の湊屋稔町長は「漁業者はきょうの解禁日に向けて準備を整えて待っていたが、出漁できなかったのは非常に残念だ」と述べました。

そのうえで「本来はわれわれの主張する海域であり、そこで自由に漁をすることは悲願だ。漁業者の安全を守ることを前提に、長い間続いてきた安全操業を継続できるような交渉の結果を期待したい」と話していました。