ウクライナ 領土奪還に勢い 専門家“長期化見据えた戦略必要”

ウクライナ軍は、ロシア軍が事実上の撤退を表明した東部ハルキウ州の重要拠点イジュームをはじめ、州内の広い範囲で領土を奪還する勢いをみせています。これについてウクライナの軍事専門家は、ロシア軍が再び増強するのを防ぐことになると評価した一方で、領土奪還のためには長期化を見据えた戦略が必要になるという考えを示しました。

ウクライナ軍の部隊が東部ハルキウ州で反転攻勢を続ける中、ロシア国防省は10日、州内の重要拠点イジューム周辺に展開する部隊について「再配置を決めた」と発表し、イジュームからの撤退を事実上、表明したと受け止められています。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は11日、SNSに「今月はじめから3000平方キロメートル以上の領土を解放した」と投稿し、東京都のおよそ1.4倍にあたる領土を奪還したと主張しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は10日、ハルキウ州でロシア軍は追い詰められ、統制がとれない形でイジューム周辺から逃れているという見方を示しました。

そして、「今後ウクライナ軍がイジュームを奪還すれば、ことし3月にキーウでの戦いに勝利して以来、最も重要な功績になるだろう」と指摘しました。

ウクライナ軍の反転攻勢について、ウクライナの元国防次官で軍事専門家のイーホル・カバネンコ氏は、NHKの取材に「ウクライナ軍はロシア側の補給ルートを支配下に置き、ロシア軍が再び部隊を増強するのを防ぐことになる」と評価しました。

その一方で、「領土の解放にはさらなる軍事行動が必要で、ひとつひとつ進めていく戦略になると思う」と述べ、領土の奪還のためには、長期化を見据えた戦略が必要で、欧米各国からのさらなる兵器の支援が重要だという認識を示しました。