ウクライナ軍 東部で攻勢 重要拠点イジュームを奪還する勢い

ウクライナ軍は、東部ハルキウ州で攻勢を続け、ロシア軍が事実上の撤退を表明した重要拠点イジュームを奪還する勢いをみせています。
ウクライナ軍がイジュームを奪還すれば、東部の広い範囲に部隊を展開させるロシア軍にとって大きな打撃になるものとみられています。

ウクライナ軍の部隊は、東部ハルキウ州で大規模な反転攻勢を続け、ウクライナの治安機関は10日、東部ドンバス地域の最前線に展開するロシア軍部隊にとって補給路となっているクピヤンシクを奪還したと発表しました。

そして、南へ60キロほど離れた重要拠点イジュームにもウクライナ軍は迫っているとみられます。

こうした中、ロシア国防省は10日イジューム周辺に展開するロシア軍について「ドネツク方面への作戦強化のために部隊の再配置を決めた」と発表し、イジュームからの撤退を事実上、表明したと受け止められています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は10日、イジュームについて「ウクライナ軍が48時間以内に奪還する可能性が高く、イジュームを解放すれば、3月に首都キーウでの戦いに勝利して以来、最も重要な功績になるだろう」と指摘しています。

一方で、イギリス国防省は11日「過去24時間、ウクライナ軍はハルキウ州で大幅な前進を続けている。ロシア軍がこの地域から部隊を撤退させた可能性は高いが、戦略的に重要なクピヤンシクとイジュームの周辺では、戦闘が続いている」と指摘しました。

ウクライナ軍がイジュームを奪還すれば、東部ドンバス地域の広い範囲に部隊を展開させるロシア軍にとって、補給などの重要な拠点を失うことになり大きな打撃になるものとみられ、戦闘の行方が注目されています。

重要拠点イジュームとは

ウクライナ東部ハルキウ州にあるイジュームは、州都ハルキウと東部ドネツク州を結ぶ幹線道路が通る交通の要衝として知られています。

ロシアによる侵攻が始まる前は人口はおよそ4万6000の機械工業などが盛んな街でした。

軍事侵攻の直後からロシア軍は攻撃を繰り返し、ロシア国防省は侵攻から1か月となった3月24日に、イジュームを掌握したと発表しました。

ロシア軍はその後、イジュームを拠点に南下し、ロシアが完全掌握を目指す東部ドンバス地域への部隊の展開や補給で重要な拠点となってきました。

また、ロシア軍の制服組トップのゲラシモフ参謀総長が、戦況を挽回するためにことし4月、イジュームにあるロシア軍の拠点を極秘に訪れたとアメリカなどのメディアが伝えています。

これに対して、ウクライナ側は今月に入って、ハルキウ州で大規模な反転攻勢を続け、イジュームに向けても部隊を進めていました。