新型コロナ 療養期間短縮 7日で大丈夫? リスクと注意点は

政府は7日、新型コロナウイルスに感染した患者の療養期間を短縮しました。症状が出た人では療養期間がこれまでの10日間から7日間となります。症状が出ても7日たてば大丈夫なのか?これまでは10日だったのに、短縮する科学的な根拠はあるのか?専門家からは、7日たっても周りの人に感染させるリスクはあるとして、慎重な行動を求める意見も出ています。

注意すべきポイントなど、いま分かっている情報をまとめました。

療養期間短縮 どう変わったか

岸田総理大臣が感染者の療養期間を短縮する方針を示したことを受けて、厚生労働省は7日夜、療養期間見直しの具体的な考え方を都道府県に通知しました。

療養期間はすでに短縮されています。
〈新たな療養期間〉
▽症状がある人
発症の翌日から7日が経過し、かつ症状が軽くなってから24時間経過した場合8日目から療養の解除が可能。

▽無症状の人
検体採取日から5日目に検査キットで陰性を確認した場合、6日目から療養の解除が可能。(ただし、症状ある人は10日、無症状者は7日経過するまで感染リスクが残るため、高齢者などとの接触や会食を避けるなど感染予防を徹底)。

▽入院・高齢者施設に入所している人
これまでと同じ。発症の翌日から10日が経過し、かつ症状が軽くなってから72時間以上が経過した場合に11日目から療養の解除が可能。

“7日間”の根拠は

症状が出た人の療養期間を10日間から7日間に短縮する判断は、どのようなデータに基づいて行われたのでしょうか。

7日に開かれた厚生労働省の専門家会合で示されたデータでは、感染して症状が出た59人のウイルス量を調べたところ、発症した日を「0日」とした場合、発症から7日から13日目までのウイルス量は、3日目までの量に比べて「およそ6分の1」に減少したとしています。(オミクロン株の「BA.1」が広がり始めていた2021年11月から22年1月にかけて、国立感染症研究所が行った調査)

調査では「感染から7日後以降でもウイルスは排出しているものの、感染を広げるリスクは低下していると考えられる」としています。

“7日”明けても感染させるリスクが

この調査では、発症した人から何日目までウイルスが検出されるかも調べています。
発症した日を「0日」とすると、ウイルスが検出された人の割合は
▽1日目・・・96.3%
▽2日目・・・87.1%
▽3日目・・・74.3%
▽4日目・・・60.3%
▽5日目・・・46.5%
▽6日目・・・34.1%
▽7日目・・・23.9%
▽8日目・・・16.0%
▽9日目・・・10.2%
▽10日目・・・6.2%
▽11日目・・・3.6%
▽12日目・・・2.0%
▽13日目・・・1.1%
▽14日目・・・0.6%、という結果でした。

新たな見直しで療養が解除となる8日目の時点では、10%以上の人からウイルスが検出されていたことになります。

また、京都大学の西浦博教授は7日の専門家会合で、アメリカのハーバード大学などのグループによる研究を紹介しました。

この研究では▽発症から5日目では半分以上の人でウイルスが検出され、▽8日目では25%の人で検出されたとしています。

西浦教授は、発症から一定期間を経た後でも、感染を広げる可能性があるとしています。

専門家からは「容認する意見」と「反対する意見」が

専門家会合では、政府が示した療養期間の短縮について、容認する意見と反対する意見が出されました。

▽容認する意見
「発症から7日間が最も感染性が高いことが分かっている」
「医療や社会機能を維持することも必要」

▽反対する意見
「リスク評価に基づいた検討ができていない」
「感染リスクが10%を超えるレベルで療養解除を判断するのは、科学的に許容可能な範囲を超えている」

このほか、重症化リスクの高い人たちとの接触が多いような医療機関や高齢者施設では療養期間を短縮すべきではないという意見も示されたということです。
京都大学の西浦教授は「8日目以降にどのような感染対策が徹底されるかなどに大きく左右されるので、感染状況への影響を数値で示すことは難しいが、少なくとも1人から何人に感染を広げるかを示す『再生産数』は上がる。その結果、第8波以降の流行の波が起きたときに、感染者数がより早く増えることになり、医療逼迫が起こりやすく、救急車が呼べないといった事態になりやすくなる」と懸念を示しています。

海外の状況は?

海外では、感染者の療養期間はどうなっているのでしょうか。

厚生労働省のまとめによりますと

<アメリカ>
▽無症状者・・・5日間の隔離。
▽軽症者・・・・5日間の隔離+熱が下がったあと24時間経過+症状の改善。
※いずれも10日目までは家庭は公共の場でマスクを着用し、11日目までは重症化リスクの高い人との接触を避ける。

▽中等症・重症者、免疫不全の人・・・10日以上の隔離(解除日は専門家に相談)。

<イギリス>
▽すべての患者・・・5日間の隔離。
※10日間は重症化リスクの高い人との接触や混雑した場所を避け、マスク着用や手指衛生、咳エチケットなど基本的な感染対策を行う。

<フランス>
▽ワクチン接種が完了した人(または12歳未満)・・・7日間隔離。症状が改善してから48時間経過+検査で陰性の場合、5日間の隔離。
▽接種が完了していない人、未接種の人・・・10日間隔離症状が改善してから48時間経過+検査で陰性の場合、7日間の隔離。※隔離解除後7日間はマスク着用と衛生対策を遵守。

国によっては、重症度やワクチン接種の有無などによって療養期間が変わるなど、対応が分かれています。

感染リスク残ること“しっかり説明を”

症状が出た場合、療養が解除される8日目の時点でも10%を超える人に感染させるリスクは残っています。

これをどう考えればよいのでしょうか。
専門家会合の脇田隆字座長は、7日の会見で「療養期間が短縮された場合に、一定の感染リスクが残っていることをしっかり伝えていくコミュニケーションが重要だ。一人ひとりが主体的に感染対策を行って、感染リスクを低くする行動をとる必要がある。どういう行動が望ましいのか、わかりやすく国民に周知することも必要なのではないか」と指摘しました。

会合では専門家の有志が提言を示し、10日目までは感染リスクが残るため、外出の際は感染対策を実施すること、医療従事者や高齢者施設のスタッフで重症化リスクの高い人の対応をする場合は、復帰の前に検査で陰性を確認することなどが必要だと指摘しました。
政府分科会の尾身茂会長も8日、「政府が7日間でよいと言えば完全に安全なのかというとそうではない。実際には、感染が広がるリスクが残っているという現実を、多くの一般の人に知ってもらわなければならず、それを伝えるのは政府の責任だ」「リスクがあるということを共通理解として持ってもらったうえで、リスクに対応した行動をお願いしたい。ウイルスが体からなくなるまでの間は、高齢者に会うなどリスクの高い行動を控えてもらう必要がある」と述べています。

厚生労働省も各自治体への通知で、発症から10日間がたつまでは
▽検温など自分で健康状態を確認する、▽高齢者など重症化リスクの高い人との接触や、施設への不要不急の訪問を避ける、▽感染リスクの高い場所の利用、会食などを避ける、▽マスク着用など自主的な感染予防の行動の徹底を求めています。

7日目以降もリスクあること意識して行動を

療養期間は短縮されましたが、ウイルスそのものの性質が変わったわけではありません。

7日目以降も、ほかの人に感染させるリスクがあるということを意識して行動することが求められます。