円相場 1ドル=144円台に値下がり 円安の流れ止まらず

7日の東京外国為替市場は、円安の流れが止まらず、円相場は一時、1ドル=144円台まで値下がりし、6日に比べて2円以上、円安が進みました。

7日の東京外国為替市場は、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会による大幅な利上げが続くという見方が広がり、円を売ってドルを買う動きが強まりました。

このため円相場は一時、1998年8月以来、およそ24年ぶりに、1ドル=144円台まで円安が進み、午後5時時点では、6日と比べて2円36銭円安ドル高の1ドル=143円89銭から91銭となっていて、9月に入ってから円相場は4円以上、値下がりしています。

また、ヨーロッパ中央銀行が今週、利上げを行うのではないかとみられていることから、ユーロに対しても円を売る動きが出ていて、6日と比べて1円61銭円安ユーロ高の、1ユーロ=142円79銭から83銭でした。

ユーロはドルに対して、1ユーロ=0.9923から25ドルでした。

アメリカで大幅な利上げが続くという見方から、世界の多くの国の通貨がドルに対して値下がりしていますが、その中でも円の下落率は際立っていて、去年の年末からおよそ20%、額にしておよそ29円、円安が進んでいます。

市場関係者は「午後になって鈴木財務大臣が急激な市場の動きをけん制する発言をしたものの、市場の反応は限定的だった。日本時間の今夜からあすにかけて、パウエル議長をはじめFRBの高官が発言する機会が相次ぐため、様子見の姿勢もみられるが、円売りドル買いに歯止めをかける材料が見つからない状況だ」と話しています。

鈴木財務相 市場の動きをけん制

鈴木財務大臣は、外国為替市場で急速に円安が進んでいることについて、7日午後、財務省内で記者団の取材に応じ「為替の相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移するのが重要だ。急激に変化することは望ましくないが、最近の動きを見ると急激だという印象を持っており、円安方向に一方的に振れていると憂慮している」と指摘しました。

そのうえで「緊張感をもって推移を見守っていくが、これが継続するということであれば、必要な対応をとっていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。

また、記者団から「必要な対応とは為替介入のことか」と問われたのに対して、「どういう対応をとるかということは為替に大きな影響を与えるのでコメントしない」と述べるにとどまりました。

そのうえで、円安のメリットとデメリットのどちらが大きいか問われたのに対して、鈴木大臣は「メリットとデメリットそれぞれあるが、足元で政府は物価高騰対策に力を入れているのだから、そうしたマイナス面の方に注目していかなければならない」と述べました。

世界の通貨の中でも値下がり際立つ

外国為替市場で急速に円安ドル高が進んでいますが、円は、世界のほかの国の通貨の中でも値下がりが際立っています。

アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長がアメリカ西部、ワイオミング州で開かれた「ジャクソンホール会議」の講演で利上げを継続する姿勢を鮮明にした8月26日から、9月7日までの為替レートを見ると、
▼円はドルに対して4.3%値下がりしました。

この講演以降、ほかの国の多くの通貨もドルに対して下落していますが、
▼韓国のウォンが3.8%、
▼南アフリカのランドとオーストラリアドルがいずれも2.4%、
▼イギリスのポンドは1.9%、
▼カナダドルは1%、
▼ユーロは0.4%、
それぞれ下落していて、円の下落幅の大きさが目立っています。

また、ことしに入ってから9月7日までで見ると、
▼円はドルに対して20%の大幅な値下がりとなっています。

ドルに対しては、
▼イギリスのポンドが14.8%、
▼韓国のウォンが14.1%、
▼ユーロは12.7%、
▼南アフリカのランドが7.8%、
▼オーストラリアドルが7.3%、
▼カナダドルが4%、
それぞれ値下がりしていますが、円の値下がりが際立つ形となっています。

円の通貨としての総合的実力“51年前の水準に低下”

ドルやユーロなど世界の主要通貨に対する円の通貨としての総合的な実力は51年前の水準に低下しています。

BIS=国際決済銀行が公表した7月の「実質実効為替レート」は、58.7となりました。

これは、変動相場制に移行した1973年2月よりも前の1971年8月以来、およそ51年ぶりの低い水準です。

実質実効為替レートは、ドルやユーロ、円、人民元など主要な国と地域の通貨について、貿易量や物価水準などを考慮して比較し、通貨の総合的な実力を算出する指標です。

円の実質実効為替レートは、急激に円高が進んだ1995年4月の150.84が最高で、その後はデフレの長期化などによって低下傾向が続いています。

円の実力はピーク時の半分以下に落ち込んだことになり、統計の残る中で最低だった1970年8月の57.1にも迫る低い水準となっています。

政府や日銀が打てる手はないのか

円安に歯止めがかからない中で政府や日銀が打てる手はないのでしょうか。

過去には急激な為替の変動に対して政府と日銀が市場介入を行ったことがあります。

円安に歯止めをかけるために市場介入を行う際には外貨準備として持っているドルを売って円を買うことになります。

ただ、円安に歯止めをかけるための市場介入は極めて難しいという指摘もあります。

記録的なインフレに見舞われるアメリカがさらなる物価高につながりかねないドル安を簡単に容認するとは考えにくいからです。

今回の円安ドル高の背景には、アメリカの金融引き締めが続くという市場の観測があり、仮に日本が単独で介入しても円安に歯止めをかける効果は限定的だという指摘もあります。

一方、日銀が今の大規模な金融緩和策を修正して欧米と方向性をそろえれば、円安に歯止めがかかる可能性があります。

ただ、日銀の黒田総裁は賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定目標を実現するため、今の大規模な金融緩和を続けるという考え方を変えていません。

ことし7月の会見で、黒田総裁は、金融緩和策を修正して金利を引き上げる可能性について「金利を上げたときのインパクトはかなり大きく、金利を引き上げるつもりは全くない」と述べています。

そのうえで「金利を少し上げるだけで円安が止まるとは到底考えられない。金利だけで円安を止めようとすれば大幅な金利引き上げになって経済に大きなダメージとなる」と指摘し、円安に歯止めをかけるために今の金融緩和策を修正して金利を引き上げることは考えられないという認識を示しています。

専門家「アメリカの金融政策の動向が焦点」

三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストは、「先月下旬にアメリカの中央銀行にあたるFRBのパウエル議長がインフレ抑制のために積極的に利上げを進める姿勢を打ち出したことで、円安ドル高が加速した。さらに1ドル=140円を超える円安水準となっても、日本政府は市場をけん制する動きを強めていないと市場関係者が受け止めたため、円安に拍車がかかった」と指摘しました。

そのうえで「アメリカだけでなくヨーロッパやオーストラリアなども金融引き締めを進める中、日本だけが金融緩和を続けているため、他のさまざまな通貨に対して円は安くなっている。またウクライナ情勢の悪化以降、資源輸入国の日本で貿易赤字が増えていることも、円安の要因になっている」と述べました。

円安による日本経済への影響については、「円安で期待される製造業の輸出増加も、かつてよりも恩恵は受けにくい。また円安は、外国人旅行者の呼び込みにもプラスに働くが、現状では水際対策が緩和されたとはいえ、旅行者数がコロナ前の水準に回復するには時間がかかるだろう。一方、円安による輸入物価の上昇で今後、さまざまな商品に価格転嫁が進む見通しで、生活者目線でいえば、物価上昇が暮らしの負担になるおそれがある」と指摘しました。

今後の見通しについては、「アメリカの金融政策の動向が焦点だ。今月、アメリカでは、FRB高官の発言機会や経済指標の公表、金融政策を決める会合などが控えていて、内容次第で一段と円安は進みやすい。ただ、1998年の最安値だった1ドル=147円近辺では、日本政府が市場へのけん制の動きを強める可能性もあり、ひとつの大きな節目となる」と述べました。