美味しい! 雨水の無限の可能性を探る

美味しい! 雨水の無限の可能性を探る
「雨水がムダになっていてもったいない」
研究を続ける大学教授の話です。大きな可能性を秘めた雨水の利用に向けたプロジェクトが今、進められています。雨水で作られた「雨水サイダー」が広げるその可能性とは。(福井放送局アナウンサー 大谷舞風)

ただのサイダーではない!

一見、何の変哲もないサイダー。すっきりした甘い味と炭酸のさわやかなのどごしは最高です!
このサイダー、ただのサイダーではありません。ラベルを見ると採水地『福井工業大学構内』の文字が。
福井市内にある大学の構内で降った雨を原料につくられた雨水サイダーなんです。

雨水の利用が当たり前の社会に

このサイダーを考案したのは、福井工業大学の笠井利浩教授です。日常生活の中で雨水を水資源として活用する研究を続けています。

この夏、各地で記録的な豪雨となり被害が相次いでいます。

一方で雨水をうまく活用できれば渇水や洪水の対策にもつながるとして「雨水を生活用水として使うのが当たり前となる社会」が目標です。
笠井教授
「気候変動で雨の降り方が豪雨、渇水と極端化している。豪雨の際の雨水を一時的に貯めることで洪水を緩和し逆に渇水が続く時には雨水を使うことができる。大きな地震で水道が利用できなくなった時にも生活用水として利用できるなどさまざまなメリットがある」

雨水だけで暮らす島との出会い

このプロジェクトのきっかけは雨水だけで暮らす、長崎県の五島列島にある赤島を知ったことでした。
赤島は周囲およそ6キロ。ことし7月末時点で住民はわずか8人で水道も井戸もありません。生活用水はタンクにためた雨水だけです。

風呂や洗濯にはそのまま使うことができますが、飲み水にするためには煮沸させることが必要です。中には、わざわざ船でほかの島まで行って飲料水を買う住民もいるといいます。
それを知った笠井さんたちは、雨水を効率よく貯めて、浄化する仕組みを3年前につくりました。
笠井教授
「工夫をすれば雨水は生活用水として使える。その可能性をつかみました」
笠井さんは手応えを感じたといいます。

“雨水は汚い”イメージを変えたい

どうすれば、雨水の可能性を引き出せるか。
まず考えたのは大気中のちりが混じっているなど「雨水は汚い」というイメージを変えることでした。

そこで去年の秋から取り組んでいるのは雨水から飲料水を作り出す「雨水飲料化プロジェクト」です。

飲料水として認められるためには食品衛生上の厳しい安全基準をクリアしなければなりません。

飲料水の基準クリア 雨水サイダーが完成

プロジェクトでは、まず雨水を集めることから始めます。

雨の予報があると、研究室のメンバーで、大学構内のウッドデッキにブルーシートを広げて雨水を集めます。
集めた雨水は、大気中の窒素や硫黄などが含まれる水ときれいな水とに電気を通して、選別します。きれいな水だけを取り出す装置は笠井さんが独自に考案しました。
さらに2種類のフィルターを通して不純物や匂いをとりのぞいたあと、紫外線で殺菌します。

こうすることで飲料水の基準をクリア。食品衛生法に基づく49項目の検査にも合格しました。
その水を使って作られたのが、雨水サイダーです。飲むことで雨水の可能性をより身近に感じてもらうのがねらいです。

ことし11月には大阪 吹田市で行われるイベントで雨水サイダーを試験販売する予定です。そして商品化に向けて取り組んでいきたいとしています。
笠井教授
「雨水利用の1番ネックになっているのは雨水に対するイメージです。大雨が降ればいろんな映像で濁流がうつるし酸性雨などのマイナスのイメージが先行していると思います。でも、雨は水資源なんだと意識を変えていきたいです」

企業も注目する雨水の可能性

雨水の可能性を探るこの研究に、企業も注目しています。
笠井教授は東京の住宅建材メーカーの担当者と打ち合わせを行い商品開発に向けて雨どいに貯まった雨水から、きれいな雨水だけを効率よく集めるためのノウハウを提供することを約束しました。

メーカーは一般家庭で雨水を利用できれば、水道代の節約や、災害時の利用につながると期待しています。
メーカーの担当者
「集めた雨水を何か環境にいいものに使えないか、生活用水として再利用できないかとか考え始めてきたところなんですごくすばらしい技術だなと思っています。まず、トイレのほうにと思ってますけど将来的に洗濯だとか、お風呂だとか飲料とかに使えたらいいと思っています」

雨水活用は生活用水の1200分の1

そもそも雨水は今どれくらい活用されているのか。
国土交通省によると日本での雨水利用量は年々増えていて、2020年度末時点で年間利用量はおよそ1241万立方メートルです。水洗トイレや水まきなどの利用が多いということです。

一方で、河川の水や地下水などの水源から取水された生活用水の使用量は2018年度、年間およそ149億6000万立方メートルになるといいます。

これと比較すると雨水の利用量はおよそ1200分の1にすぎません。

雨の降り方が極端化

また気象庁は雨の降り方が極端化しているという見方をしています。

気象庁によりますと1901年から2019年に国内51の観測地点で観測されたデータでは1日の降水量が100ミリ以上の日数と200ミリ以上の日数はいずれも長期的に増加しています。

しかし、年間の総雨量に有意な変化はみられないということです。

気象庁は「地球温暖化の進行に伴い、大雨の頻度は増加すると予想されていて、ただ、今後も雨の降り方が極端化していく傾向は続くと考えています」としています。

広がる雨水の活用

渇水や洪水への対策としても期待される雨水の活用。
福井工業大学の笠井教授は雨水サイダーの商品化だけでなく新たな夢を見据えています。

「すべての家が雨水をためてそれを使って生活している、雨水ニュータウンみたいな団地をつくりたい」

雨水を生活用水へ。その取り組みが広がっています。
福井放送局 アナウンサー
大谷舞風
2020年入局
初任地の福井で3年目を迎えた
北陸新幹線の延伸を見据え福井の魅力を全国に発信中!