ザポリージャ原発事故想定 放射性物質の拡散予測動画など公表
ウクライナの原子力規制機関は、攻撃が相次ぐザポリージャ原発で深刻な事故が起きた場合に、放射性物質がどのように拡散するか予測した動画や画像を、先月下旬からホームページで公表しています。
日本時間の1日に、新たに公表された動画では、先月31日からの3日間の気象予測に基づいて、ザポリージャ原発から南西方向を中心に放射性物質が流れ、原発周辺は赤や濃いオレンジで示された1時間当たり1ミリシーベルト以上という高い放射線量になると予測しています。
1ミリシーベルトは、一般の人が1年間に浴びても差し支えないとされるレベルで、それに1時間で達することになります。
また、黄色で示された1時間当たり1マイクロシーベルト以上の範囲は、黒海の西側に位置するルーマニアやブルガリア、それにギリシャなどまで到達する予測となっています。
こうしたシミュレーションについて、放射性物質の拡散予測に詳しい量子科学技術研究開発機構の茅野政道 理事は、福島やチョルノービリでの事故と同じ、世界最悪レベルの大量の放射性物質の放出を想定しているとしたうえで「おそらく緊急的な避難や屋内待避といった対応は、原発周辺のウクライナ国内で済むと思われるが、農作物の汚染などの影響は、ウクライナに限らず近隣諸国に及ぶおそれがある」と分析しています。
一方で、実際に事故が起きた場合に、放射性物質がどの範囲にどれだけ拡散するかは、事故の規模や気象条件によって大きく異なるため、この結果だけを見て、どこが危険か判断することは避けるべきだとしています。
そのうえで「こうしたシミュレーションが公表されることが、事態が切迫していることを表している」として、「国際社会が協力して原子炉に対する攻撃がないようなんとか食い止めてほしい」と訴えています。