ウクライナ戦時下で対面授業が再開 シェルターの備え条件に

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、1日から新しい学年が始まり、学校などに地下シェルターを備えていることを条件に対面授業が再開されました。しかし、戦闘が激しい地域や校舎が破壊されたままの学校などでは、再開のめどは立っていません。

ウクライナでは、1日から新しい学年が始まり、ことし2月のロシアによる軍事侵攻以降はじめて、一部の学校で対面授業が再開されました。
このうち一時ロシア軍が侵攻して激しい戦闘のあった首都キーウ近郊のイルピンにある学校でも、被害を受けた校舎の修復が進んだことから、およそ60人の新入生と保護者などが出席して入学式が行われました。式では、新入生と在校生の代表がかつて授業開始の合図として使われていた鐘を鳴らして友達などとの再会を喜んでいました。

ただ、対面での授業を再開するためには、防空警報が出たときに子どもたちが避難できる地下シェルターを学校の敷地内か、歩いて10分以内の場所に備えることが条件となっています。
ウクライナ教育科学省によりますと、学校に通うおよそ390万人の児童や生徒のうちオンライン授業との併用も含めて対面での授業に出席できるのは、およそ270万人と7割にとどまっていて、残りの3割にあたる120万人はオンライン授業のみになるということです。
16歳の女子生徒は「学校は被害を受けましたが、またクラスメートと集まれるのが楽しみです」と話していました。
一方、校舎の損傷が激しく対面での授業再開のめどが立たない別の学校では、新学年にあわせて担当の教師にあいさつするため一部の子どもや保護者が訪れていました。
8歳の男の子の母親は「共働きの親も多く、自宅に子どもだけを残してオンライン授業を受けさせるのは防空警報が出たときに心配です」と不安をのぞかせていました。

再開条件“シェルター” ウクライナの6割近くの学校に

ウクライナ教育科学省によりますと、8月31日の時点で、全国の学校のうち6割近くが、この要件を満たしています。こうした学校では対面授業を全面的、もしくはオンライン授業と併用する形で進めることができます。キーウ市では公立学校の8割近くで地下シェルターが整備されています。
そのひとつでは、防空警報が出ている間も授業を続けられるよう、机やいすも用意され、飲料水や非常食、救護用のベッドなども備えられていました。

学校側は、シェルターを動物のキャラクターで装飾したりぬいぐるみや人形を置いたりして子どもたちの不安を少しでも和らげようとしているということです。

プーチン大統領 特別授業で生徒に軍事侵攻を正当化

一方、ロシアのプーチン大統領は新しい学年が始まった1日、ロシア西部の飛び地、カリーニングラードで特別授業を開きました。

授業にはロシア各地のほかウクライナ東部ドネツク州の生徒まで集められ、この中でプーチン大統領は「ソビエト成立前にウクライナが独自の国家体制を持ったことはなかった」と100年前にさかのぼり、ウクライナ東部はかつてのロシア領の重要な地域だったと一方的に主張しました。

そして「こんにち、ロシアから侵略が行われていると誰もが思っている。いま戦っている仲間たちはドンバスの人々やロシアそのものを守っているのだ」と述べ、子どもたちを前に軍事侵攻を重ねて正当化しました。

また、ロシアメディアはウクライナ東部や南部の支配地域で1日、多くの学校がロシア国旗を掲げて新しい学年を迎え、ロシアから派遣されるなどしたおよそ3万6000人の教師が授業を始めたと伝えました。

これに対してウクライナのゼレンスキー大統領はSNSに「ロシアはわれわれの歴史や文化、知識を奪おうとしたが、失敗した。われわれは学び、より強くなる」と投稿し、教育の面でもロシアに屈しない姿勢を強調しました。