国連 “中国の新疆ウイグル自治区で深刻な人権侵害” 報告書

国連人権高等弁務官事務所は、中国の新疆ウイグル自治区の人権状況について、「テロ対策などを名目に深刻な人権侵害が行われている」などと指摘した報告書を公表し、中国政府に対して拘束されているウイグルの人たちなどを解放するよう求めています。

スイスのジュネーブに本部がある国連人権高等弁務官事務所は日本時間の1日、中国の新疆ウイグル自治区の人権状況についての報告書を公表しました。

この中では、ウイグルの人たちなどイスラム系住民への中国政府の対応について「テロ対策や過激派対策を名目に深刻な人権侵害が行われている」と指摘しました。

そのうえで、「関係する法令のあいまいさが解釈の幅を与えている」として、当局が法令を恣意的(しいてき)に解釈できることが人権弾圧につながっていると批判しています。

さらに、中国政府が職業訓練所だとする施設に収容されている人たちについては「施設内で拷問などが行われているとする主張には信ぴょう性がある」としています。

報告書では、こうした人権の侵害は「人道に対する罪に該当する可能性がある」と指摘しています。

報告書では、中国政府に対し、拘束されているウイグルの人たちなどを解放するよう求めているほか、拘束された家族などを探す人に、行方不明者の所在を公表するとともに、差別的な法律を撤廃することなどを求めています。

国連人権高等弁務官事務所のトップを務めるバチェレ人権高等弁務官は、ことし5月、中国政府の招待で新疆ウイグル自治区を視察に訪れていました。

国連人権高等弁務官 5月に訪問

国連のバチェレ人権高等弁務官の中国の新疆ウイグル自治区への訪問はことし5月に行われました。

新疆ウイグル自治区で人権侵害が行われているとして、アメリカなどが北京オリンピックに政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」を表明する中、中国政府がバチェレ氏を招待したもので、人権高等弁務官の訪問は2005年以来でした。

バチェレ氏は6日間の滞在中、2日間、新疆ウイグル自治区を訪れ、中国側が職業訓練のために使っていたと主張している施設や刑務所を訪問したことを明らかにしました。

ただ、訪問をめぐっては、会見で「詳細に踏み込むことは困難だった」と述べたほか、「調査という位置づけではない」としていて、ウイグル族の人権状況を詳細に把握するのは難しかったとみられます。

訪問の詳細な日程や訪問先が明らかにされないうえ、新型コロナウイルスの感染対策を理由にメディアの同行取材も許されず、アメリカ政府や、中国国外に住むウイグル族でつくる「世界ウイグル会議」からは、訪問の透明性に対して疑問の声が上がっていました。

ジュネーブの中国政府代表部 独自の報告書を発表

中国の新疆ウイグル自治区の人権状況についての報告書が公表されたことを受けて、スイスのジュネーブにある中国政府代表部は「報告書は中国をひぼう中傷するとともに内政に干渉し、国連人権高等弁務官事務所の信頼と公平性を著しく損うものだ」という声明を出し強く非難しました。

また報告書の内容については「反中国勢力がでっち上げたうその情報を主な情報源にしている」と主張しています。

そのうえで、英語で書かれた120ページ余りの独自の報告書を発表し、新疆ウイグル自治区の中国政府の政策の正当性を主張しました。

中国外務省「報告書はうその情報の寄せ集め」

中国外務省の汪文斌報道官は1日の記者会見で、国連人権高等弁務官事務所が公表した新疆ウイグル自治区の人権状況の報告書について「完全に不法かつ無効だ。報告書はうその情報の寄せ集めで、欧米が中国を封じ込めるための政治的な道具として使われている」と非難しました。

そのうえで「自治区では近年、経済発展が続き、社会は安定している」などと主張し、中国の政策を正当化しました。