G20環境・気候 閣僚会合 ロシアと欧米対立 共同声明まとまらず

G20=主要20か国の環境と気候変動問題の閣僚会合が31日、インドネシアで開かれましたが、ウクライナ侵攻をめぐってロシアと欧米各国が対立して共同声明をまとめることができず、今後の気候変動対策に懸念を残す結果となりました。

インドネシアのバリ島で開かれたG20=主要20か国の環境・気候閣僚会合は日本から西村環境大臣が出席し、各地で異常気象や災害を引き起こしている気候変動の問題や、海洋プラスチックごみ対策などについて議論されました。

会合では気候変動対策について世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力をするとした「パリ協定」の実行をめぐって先進国と発展途上国の間で意見が対立しました。

また、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり日本や欧米各国が相次いで非難を表明し、会合の成果となる共同声明にも非難の文言を盛り込もうとしたことについてロシア側が反発したことから、共同声明の採択には至りませんでした。

会合終了後、西村大臣は「内容に合意が得られなかった。国連のCOPなど今後の重要な会議で今回議論になった部分を含めてしっかり前進させていきたい」と述べました。

G20各国は世界の温室効果ガスの排出量のおよそ8割を占めていますが、ロシアと各国の対立が鮮明となったことで、ことし11月のCOP27で検討される今後の気候変動対策に懸念を残す結果となりました。

議長国インドネシア “議長総括として発表”

G20=主要20か国の議長国を務めるインドネシアのシティ・ヌルバヤ・バカール環境林業相は会合のあとに行った記者発表で、干ばつなどの影響を軽減すること、気候変動の影響や生物多様性の損失などを食い止めるために、森林の生態系の保護や土地の保全の取り組みを改善していくことなどで合意できたと成果を強調しました。

そして「議長総括の中で今後、連携して取り組む姿勢を確認できてうれしく思う」と述べ、各国の合意に基づいて議論の成果を示す共同声明は採択できず、議長総括として発表することを明らかにしました。

そのうえで「インドネシアは議長国として環境分野で途上国と先進国の橋渡し役としての立場を取っている。インドネシアは公平で、自由で活発な政治を維持していく」と述べ、今後も議長国として議論がまとまるよう、努めていく姿勢を強調しました。

専門家「大変残念だ」

今回、共同声明が採択されなかったことについて気候変動問題の国際交渉に詳しい東京大学未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「気候変動ではパキスタンの洪水のように、とりわけ途上国で大きな影響を及ぼしている。こうした問題にしっかり主要国が連携をして対策の強化や加速が求められている中で、G20として参加国の合意という形で文書をまとめることができなかったことは大変残念だ」と話しました。

そして「ロシアのウクライナ侵攻が、気候変動をはじめとする地球規模の課題の進展に大きな影響を及ぼす可能性があることを示している」と指摘し、「ことし11月の国連の会議COPには190か国以上が集まるので、気候変動問題について1歩でも進めるよう期待したい。それが、ロシアのウクライナ侵攻の中でも地球規模の課題にしっかり国際社会が取り組んでいく意思を示すことにもなると思う」と話しました。