【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9月1日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9月1日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

IAEA調査チーム ザポリージャ原発へ到着 砲撃の情報も

ウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所に向かっていたIAEA=国際原子力機関の専門家チームが1日、日本時間の午後8時過ぎに到着しました。

原発の周辺の地域では朝から砲撃の情報が相次ぎ、稼働中の原子炉の1つが安全装置が作動して停止するなど、緊迫した状況が続いています。

ウクライナの原子力発電公社「安全装置作動で5号機停止」

ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所をめぐり、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は9月1日、「きょう再びロシア軍による砲撃があり、安全装置が作動して5号機が停止した」と発表し、稼働中の2基の原子炉のうち、1基が停止したとホームページで明らかにしました。

これに対しロシア国防省は9月1日、「ウクライナ軍が挑発行為を行い、原発の1号機から400メートルの距離で4発の砲弾が爆発した。けさは、ウクライナ軍の工作部隊が7隻のボートに乗って、原発を奪還しようとしたが撃退した」などと主張し、原発の周辺の地域では戦闘が続いている模様です。

ロシア外相 「IAEAに期待するのは客観的な調査」

ロシアのラブロフ外相は9月1日、首都モスクワで講演し、IAEA=国際原子力機関によるザポリージャ原子力発電所の調査について、「われわれがIAEAに期待するのは客観的な調査だ」とけん制しました。

また「ウクライナ軍は原発で挑発行為を続けるが、大事故につながらないことを願う。ロシアはIAEAが安全に任務を達成できるようあらゆる措置をとっている」と述べ、ロシア側はIAEAの任務を妨害しないと主張しました。

IAEA調査チーム ザポリージャ原発へ出発

8月31日、ウクライナ南東部のザポリージャ市に到着したIAEA=国際原子力機関の調査チームは9月1日、ザポリージャ原子力発電所に向けて出発しました。

出発を前に現地時間の午前8時すぎ、グロッシ事務局長は「大きなリスクがあることは把握している。われわれには達成するべき非常に重要な任務がある」と記者団に述べました。

一方、ザポリージャ州の知事は1日、「IAEAの調査が行えるよう、事前に合意していた原発までのルートをロシア側が砲撃している。われわれはロシアに対し、挑発をやめ、IAEAによる原発の施設への立ち入りを認めるよう求める」とSNSに投稿しました。

IAEAが、原発の安全確保に向けた調査を始めようとしているにも関わらず、周辺では砲撃が続いているとみられ、調査が順調に行われるかどうかが焦点となっています。

米国防総省 IAEAの専門家チームの調査開始を歓迎

アメリカ国防総省のライダー報道官は31日、ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所でIAEA=国際原子力機関の専門家チームが調査を始めることを歓迎するとしたうえで、「現地では散発的な砲撃が続いており、われわれはすべての当事者に原発の安全を確保するよう要請するとともに、IAEAのチームが作業を行えるようロシアに求める」と述べました。

またウクライナ南部の戦況について、「ウクライナ軍がヘルソン州で若干前進し、一部ではロシア軍が後方へ退いたことを把握している」と指摘しました。

さらに来週、ドイツ西部にあるアメリカ軍の基地で、オースティン国防長官らが主催してウクライナへの軍事支援について各国が協議する会合を開くと明らかにし、「世界50か国以上の国防相らと話し合い、ウクライナ側にロシアの侵略から自国を守るために必要な手段を提供するため、引き続き緊密に連携していく」と述べました。

また、ホワイトハウスの高官は31日、記者団に対し、今後数日中にアメリカとして、ウクライナへの新たな軍事支援を発表すると明らかにしました。

EU ロシア人へのビザ発給手続き簡素化停止で合意

EU=ヨーロッパ連合は外相会議を開き、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの圧力を強めるため、ロシア人へのビザの発給手続きを簡素化するための協定の履行を停止することで合意しました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、EUはすでにロシア政府の高官や経済界の有力者などがEUに渡航することを禁止しています。

EUは8月31日、チェコで外相会議を開き、ロシアへの圧力をさらに強めるためとして、一般市民を含めたロシア人へのビザの取り扱いについて協議しました。

その結果、ビザの発給手続きを簡素化するためにロシアと結んだ協定の履行を停止することで合意しました。

EUの外相にあたるボレル上級代表は記者会見で、「今後、発給手続きはより厳しく、より時間がかかるようになり、新たに発給されるビザは大幅に減るだろう」と述べました。

軍事侵攻を受けて、EUがロシアの航空会社の乗り入れを禁止したことなどから陸路でEU域内に入るロシア人が増えていて、EUによりますと、2月24日から8月22日までの半年間で100万人近くに上るということです。

ロシアと国境を接するエストニアやフィンランドは、すでに個別に観光目的などのロシア人に対するビザの発給を大幅に制限する措置の導入を決めていますが、EU全域でこうした措置をとることには慎重な立場の国もあり、合意には至りませんでした。

ロシア 北方領土や日本海などで大規模な軍事演習

ロシア国防省は、極東地域などで4年に1度行っている大規模な軍事演習「ボストーク」を9月1日から7日までの日程で行います。

ことしは、7か所の演習場で予定されていますが、北方領土の択捉島と国後島も含んでいるほか、日本海やオホーツク海の海上や沿岸でも行われるとしています。
ロシアは毎年、大規模な軍事演習を行っていますが、ウクライナへの侵攻を始めてからは初めてです。

31日は、沿海地方の演習場で開会式が行われ、ロシアに加えて、演習に参加する13か国のうち、中国やインドなどの部隊が行進しました。
今回の演習には兵士5万人以上のほか、航空機140機や艦船60隻が参加するということですが、専門家などからはロシア軍は極東からもウクライナに部隊を派遣していて、演習の規模の縮小を余儀なくされたとも指摘されています。

こうした中で、ロシアとしては、今回の演習を通じて、各国との軍事的な連携を強調し、対立するアメリカや日本などをけん制するとともに、国際的に孤立していないとアピールするねらいもあるとみられます。

ロシア・イラン外相会談 欧米の制裁に対抗する姿勢鮮明に

イランのアブドラヒアン外相は8月31日、ロシアの首都モスクワを訪問し、ラブロフ外相と会談しました。

会談後の共同会見でラブロフ外相はイラン核合意を巡る交渉について「イランを完全に支持する。合意文書の最終案にわれわれは満足している」と述べ、交渉が大詰めを迎えているという認識を示しました。

これに対し、アブドラヒアン外相はイランとロシアを結ぶ鉄道を整備する計画のほか、金融や貿易などの分野での協力を議論したとしたうえで「近い将来、長期的で包括的な協定を結ぶだろう」と述べ、アメリカなどが両国に制裁を科すなか、結束して対抗する姿勢を鮮明にしました。

一方、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは無人機が不足しているとみられていて、アメリカ政府は、イランがロシアに対し、数百機の無人機の供与を進めていると指摘しています。
両国はこれを否定していますが、欧米側はイランとロシアが経済だけでなく、軍事面での協力関係も深めようとしているとして、警戒を強めています。

IAEA 9月1日からザポリージャ原発の調査開始へ

ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所では、安全性の確保に向けてIAEA=国際原子力機関の専門家チームが、9月1日から原発の調査を始める見通しです。
ただ、原発や周辺では砲撃が続いているとみられ、IAEAの調査が順調に進められるかが焦点となっています。

ウクライナ南東部にありロシア軍が掌握するザポリージャ原子力発電所では、相次ぐ砲撃によって一部の施設に被害が出ていて、重大な事故につながりかねないという懸念が高まっています。

この調査を行うため、ウクライナに入っているIAEAの専門家チームが8月31日、原発から60キロほど離れたザポリージャ市に到着しました。

ザポリージャ市で、記者団の取材に応じたIAEAのグロッシ事務局長は、原発の調査を9月1日から開始して数日間行うことを明らかにし、「現地の状況を評価するため技術的な作業を行う予定で、従業員と話す必要もある」と述べました。

そのうえで、「IAEAの常駐化を目指す」として現地の状況を常に把握できる仕組み作りに向けて調整を進める考えを示しました。

これについて、ウィーンに駐在するロシアのウリヤノフIAEA大使は「ロシアは歓迎する」として、認める可能性を示しました。

一方、原発や周辺での砲撃について、ロシア国防省は31日、「ウクライナ軍がIAEAの任務を妨害する目的で30日も挑発行為を続け、原発の敷地内に砲撃があった」と主張するなど戦闘が続いているとみられます。

またロシア軍が、原発の従業員らに対し、敷地内に駐留する部隊について口外しないよう圧力をかけているとも指摘されていて、IAEAの調査が順調に進められるかが焦点です。

ウクライナ南部へルソン州でウクライナ軍の攻勢続く

戦闘が続くウクライナでは、南部ヘルソン州のロシア軍が占領する地域でウクライナ軍が新たな攻勢に乗り出しています。
ロシア国防省は31日、「ウクライナの攻勢は失敗した。ウクライナ兵は1700人以上が殺害された」と主張しましたが、イギリス国防省は、「ウクライナ軍は、ロシア側の防御が薄い地点で部隊を後退させている」と分析しています。
ウクライナ軍の攻勢に対し、ロシア軍は部隊の再編や統合を進め、南部の防衛強化に取り組んでいると指摘されていて、南部での攻防が一段と激しくなるとみられています。

ウクライナ オデーサ「歴史地区」世界遺産登録申請へ

ユネスコ=国連教育科学文化機関は、ウクライナ南部の港湾都市オデーサの「歴史地区」について、ウクライナ政府から、世界遺産への登録を申請する方針を伝えられたと発表し、ユネスコとしてもウクライナ国内の文化財の保護に力を入れるとしています。

ユネスコによりますと、この方針は、フランスのパリにあるユネスコ本部で、アズレ事務局長に対し、ウクライナのトカチェンコ文化情報相から8月30日、伝えられたということです。オデーサの「歴史地区」は、侵攻したロシア軍との戦闘が行われている前線から数十キロしか離れていないということで、ことし7月には、この地区にある19世紀に建てられた美術館の屋根の一部などが破壊されたということです。

ユネスコは、ウクライナ政府の方針を受けて、登録の申請を緊急的に進められるよう、技術的な支援を行う専門家をウクライナに派遣したということで、ロシアの軍事侵攻で危機的な状況にさらされているウクライナ国内の文化財の保護に力を入れるとしています。