インフルエンザワクチンの供給量 コロナ同時流行で過去最大か

今シーズンのインフルエンザワクチンの供給量は、新型コロナとの同時流行が懸念されることなどから、過去最大となる見通しとなりました。厚生労働省は医療機関に対して効率的に接種を進めていくよう呼びかけることにしています。

これは31日、厚生労働省が専門家部会で明らかにしました。

それによりますと、今シーズンのインフルエンザの流行状況について、厚生労働省は予測するうえで参考にされる南半球のオーストラリアで流行していて、新型コロナと同時に流行する懸念もあり、ワクチンの需要が高まる可能性があるとしています。

このため、メーカーに増産を要望していたということで、今シーズンは成人の量に換算して最大でおよそ7042万人分と、昨シーズンの使用量の5194万人分を大幅に上回り、過去最大の供給量となる見通しとなりました。

供給は来月下旬から始まり、接種が本格化する10月1日までに高齢者の9割が1回ずつ接種できる量が供給され、11月下旬にはすべて供給される見通しです。

厚生労働省はインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンを同時に接種することについても、安全性や有効性に問題はないとしていて「コロナと同時流行するかは実際にはわからないが、可能性として備えたいと考え増産を要請した。医療機関には必要量に見合うワクチンを購入するなど効率的な接種の実施を呼びかけたい」としています。

専門家「同時流行の準備を」

季節が日本とは逆で、通常、インフルエンザが流行する時期が、日本とは半年ずれる南半球のオーストラリアでは、新型コロナウイルスの感染が広がった、おととしと去年はインフルエンザの流行レベルは低い状態でした。

しかし、保健省の資料によりますと、ことしは新型コロナの感染が続く中でも、インフルエンザの感染が4月以降増え、冬にあたる6月半ばには新型コロナが広がる前の年、2019年を超えるピークの状況になりました。

こうした状況について新型コロナ対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は「南半球のオーストラリアでインフルエンザと新型コロナが同時に広がったと報告され、日本でも同じことが起きるのではないかと、考えておかなければならない」と話しています。

そのうえで、とるべき対応について「基本的な感染対策の徹底に尽きるが、自治体や医療機関は、インフルエンザとコロナの同時流行があるかもしれないというリスクを考えて、ワクチンや検査キット、治療薬の準備をすることが重要だ」と指摘しました。

また、小児科の医師でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「RSウイルス感染症や手足口病などコロナ以外のウイルスの感染者数も増えていて、インフルエンザも増える可能性は十分ある。大流行になるかどうかはまだ分からないが、ことしは流行の兆しが少しずつ見えているので、備えをするべきだ」と述べました。

中山特任教授は新型コロナとインフルエンザのワクチンを、両方接種することを考えてほしいとしたうえで「新型コロナのワクチンを接種してから数日は調子が悪くなることが多いので、間をあけたほうがいいようにも思うが、ワクチンの接種スケジュールにどの程度余裕があるかも踏まえて考える必要がある」と話しています。

また、海外では同時接種も行われ、問題は起きていないとして「体調次第では同時に接種しても基本的には問題ないのではないかと思う」と話しています。

日本医師会常任理事「同時接種が望ましい」

日本医師会の釜萢常任理事は記者会見で「ことしの季節性インフルエンザワクチンの供給量はこれまでにないほど多く、接種が始まる10月初めまでに、かなりの量が供給されるということだ。季節性インフルエンザと新型コロナのワクチンの同時接種も含めて、希望する対象者に幅広く接種することが望ましい」と述べました。

オーストラリアではインフルエンザ感染者急増

日本と季節が反対で、6月から8月にかけてが冬にあたる南半球のオーストラリアでは、この冬、昨シーズンと比べてインフルエンザの感染者が急増しています。

昨シーズンは新型コロナウイルスの行動規制が導入されていましたが、今シーズンは規制がほとんど撤廃され、人の移動が増えたことなどが影響したものとみられています。

オーストラリア保健省によりますと、ことしに入ってから今月14日までに国内で確認されたインフルエンザの感染者は21万6000人余りで、273人が死亡しました。

また、感染者が増え始めた4月以降、1600人余りが重い症状が出て、病院で治療を受けこのうち100人余りがICU=集中治療室で治療を受けたということです。

保健省の記録では去年、同じ時期の8月中旬までに確認された感染者は460人ほどにとどまり、亡くなった人はいませんでした。

オーストラリア 新型コロナの規制 ほとんど解除

オーストラリアでは新型コロナウイルスの感染拡大で州や都市で導入されてきた規制がほとんど解除されています。

このうち最大都市シドニーでは去年、冬のはじまりにあたる6月に外出や経済活動を厳しく規制する「ロックダウン」が導入されました。

その後、10月に飲食店や美容院などの店内営業が再開し、屋外でのマスクの着用義務も解除されました。

現在は公共交通機関や病院などを除いてマスクの着用義務はありません。

規制がほとんどない状態で迎えたこの冬、シドニーのある南東部ニューサウスウェールズ州では6月中旬に一日あたりのインフルエンザの新規感染者数がおよそ4000人と今シーズンで最も多くなるなど昨シーズンに比べ感染者数は大幅に増えています。

オーストラリア政府はインフルエンザのワクチン接種を呼びかけていますが、ことし3月から8月13日までの間、インフルエンザワクチンの接種を受けた人の割合は、生後6か月以上の人口のうち38.5%にとどまっています。