IAEA専門家チーム ザポリージャ市に到着

砲撃が相次ぐウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所の調査を行うため、IAEA=国際原子力機関の専門家チームは、日本時間の31日、首都キーウを出発し、原発から60キロほど離れたザポリージャ市に到着しました。

ウクライナ南東部にあり、ロシア軍が掌握するザポリージャ原子力発電所では、相次ぐ砲撃によって一部の施設に被害が出ていて、重大な事故につながりかねないという懸念が高まっています。

この調査を行うため、ウクライナに入っているIAEAの専門家チームは、31日朝、武装した警備担当者も乗り込んだ車列でキーウを出発し、午後、原発から60キロほど離れたザポリージャ市に到着したとウクライナの原子力発電公社が明らかにしました。いつ原発に入り調査を始めるかは明らかにされていません。

チームを率いるIAEAのグロッシ事務局長は、出発に先立って記者団に対し、「私たちには、現地の実際の状況を評価し、できるかぎり安定化を支援するという非常に重要な任務がある」と述べ、原発の安全確保に全力を尽くす考えを強調しました。

IAEAとしては、戦闘地帯での調査は初めてだということですが、グロッシ事務局長は「安全についてロシアとウクライナ双方から明確な保証が得られている」と述べました。

専門家チームは現地に数日間滞在し、原発で働くウクライナ人技術者などからも聞き取りをするとしています。

視察をめぐっては、ロシア軍が原発の従業員らに対し、敷地内に駐留する部隊について口外しないよう圧力をかけているとも指摘されていて、IAEAの調査が順調に進められるかが焦点になっています。

一方、ゼレンスキー大統領は30日に公開した動画で「残念ながらロシアは調査団が到着することになっている地域での挑発をやめない。原子力発電所やその周辺は、依然として極めて危険な状態にある」として、ロシアが調査を妨害しようとしていると非難しました。

これに対しロシア国防省は「ウクライナ軍はこの24時間のうちに、原発の敷地内に2発の砲弾を撃ち込んだ」としていて、砲撃を続けていると互いに非難する中、調査が順調に進められるかが焦点となっています。