男児20人に性的暴行 元ベビーシッターに懲役20年判決 東京地裁

ベビーシッターとして保育の依頼を受けた先などで、20人の子どもに性的暴行やわいせつな行為をした罪などに問われた被告に対し、東京地方裁判所は「信頼される立場を利用した悪質な犯行だ」として懲役20年の判決を言い渡しました。

ベビーシッターだった橋本晃典被告(31)は、2015年から2019年にかけてベビーシッターを紹介するマッチングアプリを通じて保育の依頼を受けるなどして、5歳から11歳の男の子20人に性的な暴行を繰り返した罪などに問われました。

起訴された事件は、強制性交罪が22件、強制わいせつ罪が14件、児童ポルノ禁止法違反の罪が20件で、検察が懲役25年を求刑した一方、被告側は一部の事件について性的な目的はなかったと無罪を主張していました。

30日の判決で東京地方裁判所の古玉正紀裁判長は、いずれも性的な目的があったと認め「保育士の資格を持つ被告は、児童養護施設の職員やシッター、キャンプのボランティアという信頼される立場を利用して、被害者の性的知識の未熟さにつけこんだ。被害者の健全な成育への影響も強く懸念される」と指摘しました。

そのうえで「被害者の人数や犯行の件数は同種の事案に比べても際立って多く、内容も悪質だ」として懲役20年を言い渡しました。

ベビーシッター紹介 マッチングサイト対策進む

今回の事件は、ベビーシッターを紹介するマッチングサイトの利用が広がる中、社会に大きな衝撃を与え、対策が進むきっかけにもなりました。

厚生労働省は事件が発覚したあと、マッチングサイトの運用に関するガイドラインを見直しました。

マッチングサイトでは利用者とベビーシッターが直接、契約を交わすため、サイトを運営する事業者の責任が明確ではありませんでしたが、改定したガイドラインでは事業者が一定の責任を負うことが示されました。

その上で、事業者が守るべきこととして
▼シッターとして登録する前に原則として対面で面談を行い適性を確認することや、
▼研修の実施や受講状況の公表、それに、
▼トラブルが生じた場合は個人情報に留意しつつホームページなどで情報を公開することや
▼保育士資格を持つシッターが逮捕された場合などは都道府県に報告することなどを新たに盛り込みました。

このほか、わいせつ行為などで事業停止命令を受けたシッターの名前などをデータベースで一元的に管理し、自治体や利用者が確認できる仕組みの導入を検討しています。

一方で、過去のわいせつな行為が発覚していないケースや、犯罪に及ぶリスクなどを事前にどのように把握し、被害を防ぐかは引き続き課題となっています。

マッチングアプリ運営会社も対策

被告がベビーシッターとして登録していたマッチングアプリの運営会社も事件を受けて対策を進めています。

アプリやサイトを通じてベビーシッターを紹介するサービスを提供している「キッズライン」によりますと、
▼シッターを選考する手続きを厳格化し、適性検査を導入したほか、
▼トラブルなどについて利用者が匿名でサポートセンターに連絡できる報告フォームの導入や、
▼シッターが保護者に提出する保育の記録を、シッター経験があり保育士の資格を持つ担当者がチェックして、必要に応じて注意や指導を行う体制を整えるなどの対策を講じたということです。

保育の様子を確認できるようカメラの設置も検討していますが、プライバシーやコストの面など課題も多く、本格導入には至っていないということです。

キッズラインは取材に対し、「専門家とも検討を重ねたが、今回の事件で被告が指摘された『小児性愛』の資質を面接や研修で100%見抜くことは難しく、社会的な取り組みと一体となって取り組まなければ、より効果的な対策を講じることは容易ではないと認識している」としています。

また、判決について「改めまして被害に遭われた方、当該の元シッターにご依頼いただいた皆さまに心よりお詫び申し上げます。子どもに対する性加害の防止という社会課題の解決に向けて行政などとの連携を図りながら対策を進めていきます」とコメントしています。

親の会「対策進んだが課題も」

働く親などでつくる「保育園を考える親の会」の顧問で、厚生労働省の専門委員会の委員も務める普光院亜紀さんは「安い料金で利用できるマッチングサイトによってシッターの利用が広がり、助かった部分もあるが、安全の確保には疑問もあった。事件のあと対策が進んだが、国が各事業者のガイドラインへの適合状況を公表しているサイトの存在が利用者に知られていないことやガイドラインによってどこまでシッターの質をあげられるかは大きな課題だ」と指摘します。

その上で、「事業者にはまずは登録のところでフィルターをかけて人物像をみるということをしっかり実行してほしい。保護者のほうも自分で選ぶサービスだと自覚し資格や経験、人となりなどをよく確認してから依頼して欲しい」と話しています。