夏休み終え学校再開 感染防止と熱中症対策の両立 模索続く

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、各地の学校では夏休みを終えて順次、授業を再開しています。各学校では校内の消毒作業やアクリル板の設置などの感染防止対策と残暑が続く中での熱中症への対策をどのように両立するかなど、模索しながら対応しています。

東京 多摩の小学校では

東京 多摩市の東寺方小学校では、夏休みが終わって29日から授業が再開しました。29日は午前8時すぎに児童が登校すると、自宅で記載した検温票を1人ずつ、担任の教諭に見せてから教室に入っていきました。
学校再開にあたって課題となっているのは、新型コロナの感染防止と熱中症への対策をどのように両立するかです。
教室の中では、感染防止対策のため窓を開けて扇風機を回して換気を行う一方で、残暑が続き熱中症も懸念されることから、エアコンをつけて授業を行っていました。

学校では、昨年度までは児童の机の周囲を囲むような形でパーティションを設置する対応をとっていましたが、熱がこもって暑さが増すことから今は設置していないということで、今後の感染状況などを見ながら改めて設置が必要かどうか検討していくことにしているということです。

また、夏休み中の感染拡大を受けて、ことし4月以降取りやめていた校内の消毒作業は再開することになり、午前中で授業が終わると、教諭らが児童の机や教室のドアノブなどを拭いて消毒していました。

この小学校では先月から児童の感染が増え始め、学級閉鎖を行う日があったほか、夏休み中も週に3人から4人程度の児童が感染したり、濃厚接触者になったりして報告が寄せられたということです。

小学4年の女子児童は「夏休み中は石川県の祖父母の家に行きました。温泉に行く予定でしたが脱衣所の感染リスクが高くて行けませんでした。本当はプールにも行きたかったですが、感染したら怖いと思い行けませんでした」と話していました。
伊藤智子校長は「感染の対策もしないといけないし、熱中症の対策もしないといけないということで、悩ましいところです。子どもの命を最優先に教育活動を続けたい」と話していました。

感染対策の専門家「効果的なものに絞っていくこと考えるべき」

感染対策に詳しい聖路加国際病院QIセンター感染管理室の坂本史衣マネジャーは、感染の第7波が続く中で学校が再開されることについて「全体の感染状況にどれくらい影響を与えるかはまだ分からないが、物理的に多くの子どもが1か所に集まる機会が生まれると、子どもどうしで感染し、それが家庭にも広がるリスクがある」と指摘しました。

そのうえで、「学校でのこれまでの感染対策を整理し、リスクをしっかり下げることができる効果的なものに絞っていくことを考えるべきだ。手で触れたものを介した感染は感染が広がるメインのルートでは無いことが分かってきている。頻繁な消毒や持ち物や道具を共有しないなどといった対策はやめていく方向でよいのではないか。一律に行事をやめてしまうといった対応も見直すべきだ」と指摘しました。

そして「近い距離で話をするときにはできるかぎりマスクを着用する。また、温度や湿度に気を付けながら換気を徹底するという対策はこれからも求められる。感染リスクをゼロにすることはできず、万が一感染した場合にも重症化しないようワクチンを打つことも重要だ。当初、接種に慎重だった人もいたと思うが、有効性や安全性についての知見が積み上がってきており、以前よりもはっきりと子どもも接種したほうがいいと呼びかけられている」と述べています。

このほか、「感染した人が最もウイルスを排出するのは発症の直前から直後と言われるが、そのころは休む必要性を感じないくらいの軽い症状の場合もある。体調がいつもと違うとか、かぜのような症状があるなと思ったら積極的に休むということを学校からしっかり勧めてもらいたい」と指摘しました。

最後に坂本マネジャーは、子どもたちは学校で長期間厳しい対策を続けているとしたうえで、「学校に通う子どもたちは、対策が嫌になったからと言って自分からやめられるわけではなく、大変な思いをし続けている。大人も相当疲れていて『コロナは感染しても大したことない』と思いたい気持ちも分かるが、病院にいるとそうはならなかった人たちにたくさんお会いする。まだ手放しですべての対策を投げ出せる状況にはとてもなっていない。子どもにも大人にもちょうどよい対策のポイントを探っていくことが必要だ」と話しました。