IAEA ウクライナの原発 専門家チーム早期派遣へ調整続く

ロシア軍が掌握するウクライナの原子力発電所では28日も砲撃があったと伝えられ、IAEA=国際原子力機関は事故につながるおそれがあるとして、原発の安全確保を支援する専門家チームを早期に派遣するための調整を急いでいます。

IAEAによりますと、ウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大級のザポリージャ原発では25日から27日にかけて原子炉建屋からおよそ100メートル離れた場所にある建物付近に砲撃があったということです。

25日には、冷却装置などに使う外部電源が一時的に失われるなどザポリージャ原発は重大な事故につながりかねないリスクに直面しています。

ウクライナとロシアはそれぞれ、砲撃は相手の攻撃によるものだと非難していて、ロシア国防省は28日「過去24時間に、ウクライナ側から原発の敷地内に2回、砲撃があった」と主張しました。

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は28日の声明で、放射線レベルの上昇は見られず一時ウクライナ側が懸念を示していた水素漏れの兆候もないとしています。

IAEAは原発の安全確保を支援するため専門家チームを現地に派遣する方針ですが、グロッシ事務局長は28日の時点でも「数日内の派遣をめざして関係者と調整を続けている」としています。

専門家チームは、砲撃による原発施設への被害の状況や安全装置が機能しているかどうか、それにロシア軍の管理下に置かれている原発の技術者らの労働環境などについて調査することにしていて、砲撃が停止されIAEAの早期派遣が実現するかが焦点になっています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ビデオメッセージを公開し「ロシアに占領されているすべての地域、そしてクリミアでもウクライナの旗を立てる」と述べ、国土奪還への決意を改めて示しました。

松野官房長官「G7各国と緊密に連携し取り組みを後押し」

松野官房長官は、記者会見で「ウクライナにおける原子力施設の安全の確保などに向けたIAEA=国際原子力機関の継続的かつ不断の努力を評価しており、引き続き、G7各国と緊密に連携して取り組みを後押ししていきたい」と述べました。

そのうえで「原子力発電所の占拠を含めたロシアの一連の行為は決して許されない暴挙であり、原子力発電所の事故を経験したわが国として強く非難する。ロシアに対し、このような蛮行を即座に停止するよう求める」と述べました。