【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア大統領府報道官 IAEAの調査に協力姿勢示す

IAEA=国際原子力機関の専門家チームが今週、ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所での調査のために現地入りすることについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、報道陣に対し「ロシアはIAEAの任務に関心があり、その準備に参加している」と述べたうえでIAEAの調査に協力する姿勢を示しました。
そして「専門家チームは、ウクライナ軍が管理する地域に到着する予定で、ウクライナ側が安全を提供する。ロシアが支配する地域では、必要な安全が提供される」と述べ、周辺で戦闘が続く中、IAEAの専門家チームの安全確保に努める姿勢を強調しました。

一方、原発からロシア軍の部隊を撤退させ、原発一帯を非武装化する欧米側やウクライナからの提案については「それについては話し合われない」と述べ、受け入れに否定的な考えを改めて示しました。

また、ロシア国防省は29日「ウクライナ軍が28日、無人機で原発施設を攻撃したが、これを撃墜した」として、ウクライナ軍が原発や周辺への攻撃を続けていると主張しました。

IAEA調査についてロシアとウクライナが双方非難

IAEAによりますと専門家チームは、▽原発施設の被害の状況や▽安全装置が機能しているかどうか、それに、▽ロシア軍の管理下に置かれている原発の技術者らの労働環境などについて調査することにしています。

これについて、ザポリージャ州の一帯を掌握する親ロシア派側の幹部は29日、SNSに「今週中にIAEAの専門家が到着する予定で、心待ちにしている。ウクライナ側は、訪問を妨害するためには何でもするだろう」と投稿し、ウクライナ側がIAEAの訪問を妨害する可能性があると一方的に主張しました。

一方、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は、ロシア軍が原発の従業員に対して敷地内で進める軍の増強などについて、IAEAに口外しないよう、圧力をかけていると訴えています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は28日、「ロシアは、核施設へのIAEAの査察を妨害し、遅延させようとしたイランと同じような戦略を実施しようとしている」という見方を示しています。

IAEAの専門家チームについてアメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは27日ロシアと鋭く対立するアメリカやイギリスの専門家は含まないなど、中立性に配慮して、調整を進めてきたと伝えています。

IAEAの専門家チームの派遣によって原発施設の状況の把握や安全確保につなげられるかが、焦点となります。

ザポリージャ原発 IAEA派遣の専門家チーム 今週現地入り

IAEA=国際原子力機関は、ロシア軍が掌握するウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所に派遣する専門家チームが今週、現地入りすると発表しました。

専門家チームを率いるIAEAのグロッシ事務局長も29日、SNSで「この日が来た」として、現地に向かっていることを明らかにし、今週後半に現地での活動を始める予定だとしています。

ザポリージャ原発をめぐっては8月に入って砲撃が相次ぎ、ウクライナとロシアの双方が相手の攻撃だと非難していて、25日には、外部電源が一時的に失われるなど重大な事故につながりかねないリスクに直面しています。

IAEAによりますと、専門家チームは、現地で被害の状況や安全管理の状況などについて調査するとしています。

ロシア 大規模演習 来月1日からに変更 中国など13か国参加か

ロシア国防省は、ロシア極東地域などで4年に1度行っている大規模な軍事演習について、30日からとしていた予定を変更し9月1日から実施すると発表しました。

また中国やインドなど13か国が参加するとしていて、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアとしては、軍事的な連携をアピールし、対立するアメリカや日本などをけん制する狙いもあるとみられます。

ロシア国防省は、29日、極東やシベリア地域を管轄する東部軍管区での大規模な軍事演習「ボストーク」について、9月1日から7日までの日程で実施すると発表しました。
演習については7月、8月30日から9月5日まで行うと発表していましたが、前日になって変更しました。

参加する兵士の数は5万人以上としていて、前回(2018年)の30万人から大幅に減り、ウクライナへの軍事侵攻に極東の部隊も派遣している中、規模を縮小させたものとみられます。

ゼレンスキー大統領「クリミアでもウクライナの旗立てる」

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ビデオメッセージを公開し「ロシアに占領されているすべての地域、そしてクリミアでもウクライナの旗を立てる」と述べ、国土奪還への決意を改めて示しました。

IAEA“ザポリージャ原発 原子炉建屋から約100m付近で砲撃”

IAEAによりますとウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大級のザポリージャ原発では25日から27日にかけて原子炉建屋から、およそ100メートル離れた場所にある建物付近に砲撃があったということです。

25日には、冷却装置などに使う外部電源が一時的に失われるなどザポリージャ原発は重大な事故につながりかねないリスクに直面しています。

ウクライナとロシアはそれぞれ砲撃は相手の攻撃によるものだと非難していて、ロシア国防省は28日「過去24時間にウクライナ側から原発の敷地内に2回、砲撃があった」と主張しました。

ロシア軍 各地で攻撃も深刻な人的被害の見方も

ロシア軍は各地で攻撃を続けていて、ロシア国防省は28日、東部のドネツク州をミサイルで攻撃しウクライナ兵250人以上を殺害したなどと発表しました。

一方で、ロシア軍にも深刻な人的被害が出ているとみられていて、プーチン大統領は今月25日の大統領令で、ロシア軍の兵士の数を13万人余り増やし、およそ115万人にする方針を指示しました。

これについて、イギリス国防省は28日に発表した分析で、「ロシア軍がどのように増加分の人員を埋めようとしているのか不明なままだ。ウクライナでのロシア軍の戦力増強が実質的に進展する可能性は低い」と指摘し、どのように兵力を増やすのか課題が残されているという見方を示しています。

IAEA ウクライナ原発へ 専門家チーム早期派遣の調整急ぐ

ウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大級のザポリージャ原発では今月25日に砲撃によって冷却装置などに使う外部電源が一時的に失われるなど重大な事故につながりかねないリスクに直面しています。

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は28日の声明で放射線レベルの上昇は見られず一時ウクライナ側が懸念を示していた水素漏れの兆候もないとしています。
IAEAは原発の安全確保を支援するため専門家チームを現地に派遣する方針ですが、グロッシ事務局長は28日の時点でも「数日内の派遣をめざして関係者と調整を続けている」としています。

専門家チームは砲撃による原発施設への被害の状況や安全装置が機能しているかどうか、それにロシア軍の管理下に置かれている原発の技術者らの労働環境などについて調査することにしていて砲撃が停止されIAEAの早期派遣が実現するかが焦点になっています。