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“メンズメイク” 1000年前から当たり前?

そのことばに、わたしは驚きました。
だって教授が言うんです。

「男性が化粧をしない…。歴史的にみれば、そんな時代はわずかだよ」

よく耳にする“メンズメーク”。
ここから“メンズ”の文字が消える日が来るのかもしれません。

今は、そんな、化粧の歴史の転換点のようなんです。

(ネットワーク報道部 鈴木雄大記者・芋野達郎記者・鈴木彩里記者)

しないと「逆に浮いちゃう」

紀貫之が昔、書いていました。
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり」

今なら
「女もすなる化粧といふものを、男もしてみむ、、、」とでも書いていたのかもしれません。

メンズメークということば、最近よく聞くし、目にもします。メンズのメークだから話題です。

でも、本当にメークしているのでしょうか?
私(記者)の周りでは見かけません。同僚だってノーメーク。確かめに行ってきました。

場所は東京の原宿。
結論から言うと、それって“ふつう”という感じでした。
話を聞いた18歳(左)と19歳(右)の2人
(記者)メンズメーク、どう思います?
19歳男性
「ああ、バイト先の男性は、みんな化粧していますよ」
(記者)みんなですか?
19歳男性
「バイトはバーなんですけど化粧をしていないと、逆に浮いちゃう」
一緒にいた男性も…
18歳男性
「高校生のころに肌が気になってメークを始めたんです。今は週に3日から5日ぐらいやってます。女性のメーク動画も参考にします」
割りと当たり前に受け止めている若い人たちが多かったんです。そう、そこにデパートが目を付けました。

Z世代と1.5倍

大阪市にある高島屋大阪店。今月24日に男性向けの化粧品を集めたコーナーを期間限定で初めて作りました。

まさに「Z世代」と呼ばれる若い世代がターゲット。

乳液といった基礎化粧品のほか、メーキャップ商品など、200ほどの商品を並べます。
東京・千代田区の大丸東京店はすでにおととし、男性向け化粧品売り場の広さを1.5倍に広げていました。

1.5倍もすごいのですが、メンズメークに関わる、6倍という数字もありました。

自分を見る機会が増加 メークを後押し

それは、男性向けメーキャップ商品の市場規模。

民間のマーティング会社は、メーキャップ商品の販売高は、4年前の4億円と比べて、去年は5倍の20億円に、ことしは6倍以上の25億円になると試算しています。
市場の拡大理由はさまざまあります。

SNSが普及し、写真や動画などで自分らしさを表現しようと化粧品のニーズが高まったこと。

さらに新型コロナです。リモートワークで自分自身を画面で見る機会が増え、化粧品に関心を持つ人も増えたという分析でした。

こうした動きについて、「歴史がさかのぼったのだ」という人もいます。

化粧をしない時代は、歴史上でわずかです

「男性が化粧をしなくなったのは明治維新以降のことです。歴史の物差しから見れば、男性が化粧をしない時代は、わずかだと言えますね」
東北大学大学院の阿部恒之教授は男性の化粧について1000年以上、さかのぼって話をしてくれました。
東北大学大学院 阿部恒之教授
心理学の観点から化粧を考えるという興味深い研究をしている阿部教授。化粧の歴史にも詳しいのです。
阿部教授
「日本でも大昔から化粧をすることは男女問わず常識でした。平安時代には例えば公家の男性が日常的に化粧をしていました」
(記者)「そういえば、当時の絵でそれっぽいのもありますね」
阿部教授
「世界の歴史をさかのぼっても、ツタンカーメンの時代から化粧は男女ともにしていることでした。男性が日常的に化粧をしなくなったのは、ここ100年くらいのことです」
記者が「人はなぜ、化粧をするのでしょうか」と、山登りでよくあるような質問をすると、こう答えてくれました。
阿部教授
「メークをすると自信が出るんです。私の研究でも男性にメークを施すと『自信が出て活発になる』という結果が出ています」

それはアトラクション‥

果たして自信が出るのかどうか、心に変化が出るのかどうか。大丸東京店のメンズコスメコーナーへ行って、自分で自分を取材して確かめることにしました。

化粧品売り場を訪れるのは人生で初めて。7階のコーナーにおそるおそる入ります。
店舗はきらびやかというより、黒や木目調の落ち着いた雰囲気です。

それでも心は落ち着きません。自分がどうなるのかわからないからです。私はどうなるのだろう、そんな感情がわいてきます。

まず、化粧のりをよくするためクレンジングローションで汚れを落とし、化粧水や乳液などの機能を持つ商品で、肌の状態を整えます。

これほどまで人に顔を触れられることは、赤ん坊の時以来なかった私。動揺しました。
次に目の下のクマを目立たなくする「コンシーラー」を塗りました。このあと眉を描いてもらい、最後に自分でリップを塗って終了です。

ここまでプロに施してもらって20分ほど。私の心理状態は、何かアトラクションを体験したあとのようなドキドキ感でした。

何か特別なことがおきる…。そうした心理がずっと続く感じです。

メークをする前と後の写真です。
目元と顔色の変化がわかります。コンシーラーやパウダーで顔色が明るくなったようです。「肌がきれいになって、印象がよくなった」と同行した先輩が言います。

正直に言いますと、自信とまではいきませんが「簡単なメークならときどき気分を変えるためにもやってもいいな」と思うようになりました。

一方で「毎日だと手間がかかって面倒かも」と思う自分もいました。
大丸松坂屋百貨店 広報 宮川香織さん
「新型コロナの感染が広がってから、20代から30代の方が来店することが多くなりました。あとは私は韓流アイドルの影響も大きいと思います」
「よく売れるのは肌をきれいに見せる商品ですね。リモートワークで自分の顔を見る機会が増えたことが1つの要因だと思います」
「コロナとアイドル」、化粧品を扱う現場でも、関心を持つ人のきっかけについてそう分析していました。

自信を持つ手段の1つ

化粧する効果を知ってもらえば、もっと関心が高まると考えている人もいました。

“メンズメーク”に詳しく、専門校で講師などを務めながら動画配信にも力を入れている高橋弘樹さんです。
7年前、配信を始めた当初はあまり関心が集まらなかったのですが、化粧をする前と後、いわゆる「ビフォー・アフター」の動画の配信を始めたところ少しずつ再生回数が増えていったのです。

今では「ヒゲ周りをきれいに白く見せたい」とか「おすすめのチークを教えてほしい」というリクエストも届いています。
高橋さん
「私自身、もともと肌荒れを気にしていたのですが、化粧品を使うと違和感を持たれてしまう世の中だったので悩んでいましたが、いま変化が起きていると思います」
「化粧をするしないはもちろん個人の自由です。ただ、自分に自信を持ったり自分を表現したりする1つの手段としてメークがある、それを知ってもらえればうれしいです」

“メンズメーク”はやがて“メーク”に?

最後に、男性のメークは今後も続くのか、阿部教授の予想です。
阿部教授
「多様性が尊重される時代を迎えましたよね。『メークは女性のもの』という時代ではなくなったのかもしれません」
「多様性やダイバーシティーが一過性のものではないように、男女問わず化粧をすることがこれからも続くのではないかと考えています」
化粧の歴史上で、今は大きな転換点。

“ウーマンズメーク”という言葉がないように、“メンズ”メークという言葉もやがてなくなるのかもしれません。

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