IAEA ウクライナの原発立ち入り調査を調整 安全性の確保なるか

大規模な事故への懸念が高まるウクライナの原子力発電所をめぐり、IAEA=国際原子力機関が今週にも現地入りする方向で調整を進めています。
ただ、原発を掌握するロシア軍が、敷地内で進める軍の増強について従業員に口外しないよう圧力をかけているとも指摘され、原発の安全性の確保につなげられるかが焦点となっています。

ウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大級のザポリージャ原発では、27日も敷地内で砲撃が繰り返しあり、ウクライナとロシアの双方が相手の攻撃だと非難しています。


また、ロシア国防省は28日「過去24時間に、ウクライナ側から原発の敷地内に2回、砲撃があった」と主張した上で「原発周辺の放射線のレベルは通常だ」としています。

大規模な事故への懸念が高まる中、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長が今週にも専門家チームを率いて現地入りする方向で調整を進めています。

ただ、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は、ロシア軍が原発の従業員に対して敷地内で進める軍の増強などについて、口外しないよう圧力をかけていると訴えています。

一方、国営のロシア通信は、ウクライナ軍に情報を提供するなど協力した疑いで原発で働く従業員2人をロシア軍が拘束し、ことし3月にロシア軍が原発を掌握して以降、26人の従業員が拘束されていると24日、伝えています。

ロシア軍は原発の軍事拠点化を進めているとみられていて、IAEAの立ち入り調査によって原発の安全性の確保につなげられるかが焦点となっています。

また、ロシア軍は各地で攻撃を続けていて、ロシア国防省は28日、東部のドネツク州をミサイルで攻撃しウクライナ兵250人以上を殺害したなどと発表しました。

一方で、ロシア軍にも深刻な人的被害が出ているとみられていて、プーチン大統領は今月25日の大統領令で、ロシア軍の兵士の数を13万人余り増やし、およそ115万人にする方針を指示しました。

これについて、イギリス国防省は28日に発表した分析で、「ロシア軍がどのように増加分の人員を埋めようとしているのか不明なままだ。ウクライナでのロシア軍の戦力増強が実質的に進展する可能性は低い」と指摘し、どのように兵力を増やすのか課題が残されているという見方を示しています。