TICAD開幕へ発言力増すアフリカ 日本の存在感高められるか課題

日本が主導してアフリカへの支援や投資について話し合うTICAD=アフリカ開発会議の首脳会議が、27日からチュニジアで開かれます。人口が急増し、国際政治での発言力も増すアフリカをめぐっては影響力の拡大を図るロシアや中国に対抗し、アメリカも関係強化に乗り出していて、日本の存在感をどう高めるかが課題になります。

アフリカでは人口が急増し、国連の推計では2050年までに24億人を超え、世界の人口のおよそ4人に1人がアフリカの人々になると予測されていて、巨大市場としての注目が高まっています。

また、国連加盟国の3割近い54の国を抱え、国際政治での発言力も増していて、アフリカとの結び付きを深める国が増えています。

このうち、ウクライナへの軍事侵攻によって欧米との対立が続くロシアは、アフリカ各国との関係をこれまで以上に重視し、資源開発や武器の輸出などを通じて影響力の拡大を図っています。

ことし3月、国連総会でロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案の採決が行われた際には、アフリカ諸国のうち、▼チュニジアなど28か国が賛成し、欧米や日本と歩調をあわせたのに対して、▼ウガンダや南アフリカなど17か国は棄権し、ロシアに一定の配慮をしたと受け止められました。

ロシアのラブロフ外相は、7月、アフリカ4か国を訪問し、ウガンダでは、「ウクライナ情勢をめぐるバランスの取れた立場に感謝する」などと述べ、ロシアの石油を提供する考えを示したということです。

また、中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」のもとインフラ建設や巨額の融資を続けることでアフリカ諸国との結び付きを深めています。

一方、アメリカは8月、サハラ砂漠以南のアフリカについての新たな外交戦略をまとめ、中ロ両国に対抗する姿勢を鮮明にしていて、ことし12月には首都ワシントンでアフリカ諸国との首脳会議を開き、関与を強めようとしています。

アフリカを舞台に大国間の思惑が絡んだせめぎ合いが激しさを増す中、日本がTICADを通してどう存在感を高めることができるかが課題になります。

TICAD経緯 「援助から投資へ」

TICAD=アフリカ開発会議は日本政府が中心となってアフリカ各国の首脳や国連などの関係機関が集まり、1993年から定期的に開かれている国際会議です。

TICADの当初の焦点はアフリカの開発援助でしたが、今では「援助から投資へ」を合言葉に民間企業のビジネスチャンスの拡大をどう進めていくかが、焦点となっています。

その背景にあるのが、人口増加を続けるアフリカの市場としての魅力です。

2022年のアフリカの人口は14億人あまりと、世界全体のおよそ18%ですが、2050年までには24億人を超え、世界の人口の4人に1人がアフリカの人々になると予測されています。

平均年齢も世界全体と比較して若く、その将来性に注目が集まっています。

インターネットの普及を背景に、保健医療や物流、農業などこれまで課題を抱えていた分野で新たなサービスを生み出すスタートアップ企業も多く生まれていることから、世界から多くの投資が集まり続けています。

今回のTICADをきっかけに日本からも官民をあげてさらに投資を増やしていけるのか、アフリカ側の期待とともに日本としても「共に成長するパートナー」を目指し存在感を高めたい考えです。

ウガンダで見る米ロ外交

東アフリカのウガンダは、ことし3月の国連総会でロシアのウクライナへの軍事侵攻を非難する決議案の採決が行われた際には、「棄権」に回った国です。

この決議案では、アフリカの28か国が賛成し、日本やアメリカと歩調を合わせてロシアを非難しましたが、棄権した35か国のほぼ半数の17か国が、ウガンダを含むアフリカの国々でした。

そのウガンダをロシアのラブロフ外相は7月下旬、アフリカ歴訪の際に訪れ、ムセベニ大統領と会談しました。

ウガンダの国営新聞によりますと会談後の記者会見でラブロフ外相は、「ウクライナ情勢をめぐるウガンダのバランスの取れた立場に感謝する」と発言したうえで、「ロシアはアフリカに石油を提供する用意がある」と述べたということです。

これに対しムセベニ大統領は「ロシアを非難するよう求める人もいるが、ロシアとは長年、共にある」と応じたということです。

一方、その翌週の8月上旬、今度は、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使がウガンダを訪れ、ムセベニ大統領と会談しました。

トーマスグリーンフィールド国連大使は記者会見で食料価格の高騰の原因はロシアの軍事侵攻にあるとしたうえで、ウガンダに対して、食料危機などに対応するため2000万ドルの援助を行う方針を発表しました。

また、「ロシアとの石油の貿易は、制裁破りとなる可能性がある」と述べ、ウガンダがロシアの石油を受け入れることにくぎを刺したと受け止められました。

ロシアとアメリカの双方から外交的な働きかけを受けていることについてウガンダのオドンゴ外相は、8月16日、首都カンパラでNHKのインタビューに応じ、「ロシアを支持するわけでもアメリカを支持するわけでもなく、ウガンダの国益に基づいて誰とでも関係を持っている」と述べました。

そのうえでロシアとの関係については「旧ソビエトはウガンダを含むアフリカの植民地支配からの独立闘争を支援した」と述べ、国連総会で、「棄権」したことについて「紛争当事国を孤立させるのではなく、関与し対話することで紛争を終わらせることができると判断したからだ」と説明しました。

ウガンダ政府の対応について地元マケレレ大学政治学部のカサイジャ・アプーリ教授は「ウガンダはロシアからは多くの武器を購入しているほか、原子力発電計画ではロシアからの支援が約束されている。棄権したことは倫理的に問題ではあっても失うものは特にないと考えたのだろう」と述べ、ロシアへの配慮から棄権に回ったとの見方を示しました。

ロシア ウクライナ侵攻 アフリカとの関係 これまで以上に重視

ウクライナへの軍事侵攻を受けて欧米との対立が続くロシアは、アフリカ各国との関係をこれまで以上に重視し、関係を深めようとしています。

かつてのソビエトが冷戦時代から社会主義陣営の勢力圏を広げる舞台としてアフリカを重視していましたが、ソビエト崩壊以降、経済の衰退とともに関係はいったん弱まりました。

しかし、2000年に「大国ロシアの復活」を掲げて就任したプーチン大統領のもとインフラ整備や資源開発、それに武器の輸出や軍事訓練を通じて再びアフリカでの影響力の拡大に乗り出しました。

2019年にはアフリカ54か国の首脳などを招いて「ロシア・アフリカ経済フォーラム」が初めて開かれ、プーチン大統領は、「アフリカ各国との関係構築はロシアの外交政策の優先事項の1つだ」と強調しました。

ことし3月、国連総会で、ウクライナに侵攻したロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議案の採決が行われた際には、棄権した35の国のうち半数近い17か国がアフリカの国々でした。

ロシアのラブロフ外相は、7月、アフリカ4か国を訪問しましたが、その際に出された声明ではウクライナ情勢をめぐって「強い外圧にもかかわらずアフリカ各国のバランスのとれた立場に感謝する」として対ロシア制裁に加わらない姿勢を評価しました。また、アフリカではロシア産の小麦などに依存してきた国も多く、世界的な食糧危機への懸念が高まるなか、ロシアとしては、穀物や肥料などの供給を新たな強みにして、アフリカとの関係をさらに深めようとしています。

中国 「一帯一路」のもと巨額融資 軍事面でも存在感

中国が2000年からアフリカ諸国と定期的に開いている国際会議が「中国アフリカ協力フォーラム」です。

去年、西アフリカのセネガルで開かれた会議には習近平国家主席がオンライン形式で参加し、新型コロナウイルスのワクチンを10億回分提供すると表明するなど、いわゆる「ワクチン外交」を展開する姿勢を示しました。

また、習主席はアフリカからの輸入を促進して3年間で総額3000億ドルを目指すことも明らかにし、影響力の拡大に向けた動きを活発化させています。

中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」のもと、鉄道などのインフラ建設や巨額の融資を続けるとともに、アフリカ東部のジブチに海外で初めての基地を建設し、経済だけでなく軍事面でも存在感を高めてきました。

ただ、アフリカの一部の国は債務を返済できず、中国からインフラの運営権の譲渡などを迫られる「債務のわな」の問題が懸念されています。

アメリカ・ボストン大学のグローバル開発政策センターのまとめによりますと、中国によるアフリカへの融資は2000年から2020年までの総額で1599億ドル、日本円でおよそ22兆円にのぼったということです。

このうち、中国から運輸や電力などの分野を中心に101億ドルの融資を受けてきたアフリカ南部のザンビアは返済に苦しみ、IMF=国際通貨基金と債務の再編を条件に資金支援を得ることで合意しています。

中国はこれまでほかの債権国との交渉には積極的ではありませんでしたが、ザンビアについては共同議長として協議に参加し、再編の条件をまとめたことから中国が懸念の払拭に努めようとする新たな動きとして注目されています。

米 中ロ両国に対抗する姿勢を鮮明に

アメリカのバイデン政権は8月、サハラ砂漠以南のアフリカについての新たな外交戦略をまとめ、中ロ両国に対抗する姿勢を鮮明にしています。

外交戦略ではこの地域について、人口の増加が著しく天然資源に恵まれているほか、国の数が多く、国連の中で加盟国の3割近くを占め、最大規模だとしたうえで「アメリカが世界的な課題に取り組む上で非常に重要だ」としています。

また、この地域で影響力を拡大させる中国やロシアについては、「中国はルールに基づいた国際秩序に挑戦するためこの地域を重視し、地政学的な利益の拡大やアメリカとアフリカの関係の弱体化を図っている。ロシアは安全保障や経済的な結び付きを利用し、ウクライナ侵攻に対するアフリカの反対の声を弱体化させている」と強く批判したうえで、中ロ両国に対抗しアフリカ各国との関係強化を打ち出しています。

具体的には、新型コロナウイルスの影響で傷ついた経済の回復や食料の安定的な確保、それにテロ対策などで協力を進めていくとしています。

一方、ここ数年は、軍事クーデターなどが相次いでいるとして、「アメリカは同盟国や友好国と連携し、こうした動きに歯止めをかけ、民主主義の後退や人権侵害に対抗していく」として、いわゆる「アメとむち」を用いて対応し、人権侵害などには制裁を科すことも辞さない構えを示しています。

ブリンケン国務長官は8月、南アフリカとコンゴ民主共和国、ルワンダの3か国を訪問してこの外交戦略について説明し、民主主義や人権を重視する姿勢を強調するとともに経済関係の強化に意欲を示しました。

さらに、バイデン政権はことし12月には首都ワシントンにアフリカ各国の首脳を招待して首脳会議を開くことにしています。