コロナ自宅療養者156万人超 過去最多 1人暮らしはどうすれば?

新型コロナウイルスに感染して自宅で療養している人の数は「第7波」に入って急増し、今月24日時点で156万1288人に上り、過去最多となりました。特に1人暮らしの人にとっては、療養中や容体が急変した時の対応を自分ですべて行うだけに心配なことが多いと思います。

どんな準備が必要? 急変したらどうすれば? 自宅療養中の患者と数多く向き合う在宅医療専門クリニックの医師に、詳しく聞きました。

話を聞いたのは東京・港区の医療法人社団「悠翔会」理事長の佐々木淳医師です。

都内を中心に首都圏で在宅医療専門のクリニックを展開し、去年の夏からはコロナの患者を往診する専従チームをつくって対応にあたっています。

自宅療養中の多くの患者と向き合っている佐々木医師に、1人暮らしの人が療養する上で知っておきたいことを聞きました。

これから自宅療養…どんな準備が必要?

「まず多くの人にとっては、療養期間にあたる「10日間の試練」だと思ってください。このうち、ふだんのかぜよりも「強い熱」と「のどの痛み」に襲われる時期は2日から4日程度です。まずはこの一番つらい4日間を乗り切るための備えをしましょう。できることなら10日間の在宅生活を乗り切るだけの食料や水分、薬などをあらかじめ準備しておくことがすごく大事だと思います」

【食料】
「のどが痛くても食べられそうなものなどをある程度そろえておいたほうがよいです。よく患者さんたちが食べやすいと言っているのはゼリー型の食品やアイスクリームなどですね。いずれも保存が利くので、そういったものをいつもより少し多めに買っておくと重宝するかもしれません」

【薬】
「基本的には「解熱鎮痛剤」を常備しておくとだいたいは対処できます。つらい症状の多くは発熱とのどの痛みなので、アセトアミノフェンという成分が一般的に副作用が少なくて使いやすいと言われています。薬局でも、オンラインでも買うことができますが、今は医療用も含めて需要が非常にひっ迫していて、すぐに入手できないこともあります。そうした場合はロキソプロフェンやイブプロフェンなどその他の解熱鎮痛剤の成分でも大丈夫なので、薬剤師さんなどに相談して買い求め、自宅に備えておくといいと思います」

検査キット、パルスオキシメーターは買える?

【検査キット】
「まだ感染していない場合は感染したかどうかを自分で気軽にチェックできる体制を整えておいたほうが安心です。今は厚生労働省に承認された抗原検査キットが薬局で購入できます。「医療用」のキットで「体外診断用医薬品」と表示されています。「研究用」という名目で売られているものもありますが、性能が確認されていないため、そちらでは検査したことになりませんのでご注意ください」

【パルスオキシメーター】
「血液中の酸素飽和度を測定し、呼吸機能の状態を知る「パルスオキシメーター」という機器を自治体などで自宅療養中の患者に貸し出しています。しかし、最近はニーズがひっ迫して重症化リスクの高い人が優先になり、そうでない人のもとにはなかなか届かないことがあるかもしれません。貸し出しの対象にならなくても、どうしても心配で調べたい場合はネットでも数千円~1万円台ぐらいで買うことができます。こんな時代なので体温計を置いておくような形で自宅に1つあってもいいと思います」

買い物はどうすれば?

「こちらも自治体などが療養者の自宅に食料などの生活必需品を届けていますが、支援の量が多くなりすぎて全員には行き届かなくなっているのが現状です。なので準備していたものが無くなれば当然、買い物の必要があります。療養中の患者の中には「感染していてもマスクをすれば買い物に行ってよい」と考える人もいるようですが、基本的には「自宅隔離」はきちんと守っていただきたいです。そのためネット通販を利用するか、友達や近所の人などに少しご協力いただく。受け渡しの際も接触がないのがベストなので「置き配」やドアノブにかけてもらうようにしてください。本当に「どうしても食事に困る」ということであれば保健所など公的機関に相談すれば、しかるべきサービスにつないでもらえるはずです」

毎日の健康確認はどうする?

「これも自治体によって異なりますが、基本的には保健所から朝夕など定時に健康チェックを目的とした連絡が、電話やメール、SNSなどを通じて手元のスマホなどに来ます。LINEなどでメッセージが届いた時には、自治体が求める内容に沿って対応してください。そこで患者が対応せずに安否が確認できないとなると、保健所などが確認のために改めて「大丈夫ですか?」と電話したり、場合によっては直接来たりという対応が発生するので、煩わしく感じても自分の万が一の時のためのものだと思って、協力してください」

心配なのは体調の急変 どんな人が特に注意?

「基本的には糖尿病や心不全などの基礎疾患、肥満などがある方です。65歳以上の高齢者や妊娠している人、喫煙者も特に注意が必要です。それから基礎疾患といってもさまざまですが、特に呼吸器系の疾患とがんで治療中の人。それほど多くないものの病気の治療のために例えば免疫抑制剤などを飲んでいる人はやはりリスクが高く、こういった方々の場合には抗ウイルス薬を処方してもらって重症化を防ぐこともあります。そして何より大前提としてワクチン未接種の人は接種している方に比べると重症化するリスクや、感染した時の後遺症のリスクも高いので、そのあたりも自覚して早めの接種に努めてもらう必要があると思います」

体調が悪化したときには?

「発熱があったりのどの痛みが出たりして、今すぐ救急車を呼ぶほどでなくても、そのまま様子を見ていいか心配だということもあるでしょう。その時は基本的にはふだんから体調を把握しているかかりつけ医に相談するのがベストです。一方で、かかりつけ医に連絡がつかなかったり、そもそもかかりつけ医を持っていない場合などには自治体によって発熱者用の相談窓口の電話番号を設けているのでそちらに電話で相談します。そのほか、急な病気など困ったときに医師・看護師などに無料で相談できる電話番号もあります」

▼「#7119」「すぐに病院に行ったほうがよいか」「救急車を呼ぶべきか」悩んだりためらう時はこちらにかけます。

▼「#8000」こちらは子どもの症状に保護者がどう対応したらいいのか判断に迷った時、家庭での対処方法や状態の観察ポイントを詳しく知りたい時にかけます。

(※いずれも自治体や地域によって実施状況や受け付け時間が異なりますのでご確認ください)

「急変時はためらわず救急車を」

「自分で抱え込みすぎない、悩んだら相談するということでいいと思います。ただ、高熱が3日~4日引かない、息苦しさが出るなど、症状が長引いたり新たな症状が出たりした時には重症化を示すシグナルの可能性があるので、何かあったときにはちゅうちょせず救急車を呼ぶことを心がけてほしいと思います」

佐々木医師は「第7波」の特徴として、自宅で多くの人が死亡した「第5波」のデルタ株の時ほど症状が急激に悪化するリスクは少ないものの、感染力が強いためにこれまでより多くの人に感染が広がっていることを挙げます。

そして1人暮らしの場合には、近くに体調の変化に気付いてくれる人はいないため「1人暮らしで基礎疾患がある人などは容体が急速に悪化すれば本人が対応できる間もなく、助けを呼べない状況になって亡くなるおそれもある」として何かあったときにはためらわず救急車を呼ぶようにしてほしいとしています。

まわりの人はどんな気配りをすれば?

「地方都市で人口がそれほど多くなく、近所の結び付きが強いような地域だと、1人暮らしで感染しても周囲がそっと見守りをしてくれたり、サポートしてくれたりすることもあるかもしれません。ただ、大都市部では近所に知り合いがいないなど、感染しても静かに自宅で療養している方はたくさんいます。お隣さんがコロナかどうかなんて分かんないよってことの方がむしろ多い。そうなると近所にはなかなか頼りにくいと思いますので、例えば職場の同僚や友人などには「実はちょっと感染して」などときちんと伝える。相談を受けた方は少し気にかけていただいて、SNSで「大丈夫?」ってメッセージを送ってもらったり、「既読」が付くか、オンラインになってるか確認したりとか、そういう気配りだけでもやってあげるといいのかなと思います。お互いに日頃から相談できるような関係性を築き、「何かあったときはよろしく」みたいな感じで、特に1人暮らしの人は身近な人と声をかけ合っておくようなことも大事かもしれないですね」

療養はやっぱり自宅じゃないとだめ?

「軽症や無症状の人でも高齢者や重症化リスクの高い人は、入院のほか自治体がホテルなどを借り上げた「宿泊療養施設」に入れるところもあります。ここでは看護師が常駐して医師の対応も受けられますが、実際に利用できるかは地域によって感染状況や施設のキャパシティ、入所の条件など事情が異なるため各自治体で確認してください」