ロシア国内で「反戦」ネット検索 7月は軍事侵攻前の水準下回る

ロシア国内でインターネットで検索されたことばを調べたところ「反戦」に関することばの検索は、ウクライナへの軍事侵攻直後に急増したものの、その後、大きく減少して、7月には、軍事侵攻前の水準を下回ったことが分かりました。
専門家は「ロシア政府による抑圧があり、国民の多くがプーチン政権による戦争を支持している状態が続いていて、今後再びロシア国民から反戦の声が上がることは考えにくい」と分析しています。

インターネットのアクセスデータ分析の支援を行っている「シミラーウェブジャパン」は、ロシア国内とウクライナ国内からパソコンで検索されたことばの回数について、ことし1月から7月までの変化を調べました。

ウェブサイトなどから収集した匿名のデータから、特定のことばの検索回数を推計したところ、ロシア国内から「反戦」に関することばは「請願」や署名サイトの名前などと合わせて検索されていましたが、
▽軍事侵攻が始まったことし2月には100万回余りと前の月のおよそ10倍に急増しましたが、その後は減少傾向となり、
▽ことし5月には9万回余り、
▽7月時点ではおよそ4万回と、
ことし2月と比べて25分の1にまで減少していたことが分かりました。
この結果についてロシア政治に詳しい法政大学の溝口修平教授は「侵攻直後はモスクワでも大規模な反戦デモが行われていたが、政府による取締りで今はデモを行うこと自体が非常に困難になっている。さらに、国民の多くがプーチン政権による戦争を支持していて、国民感情として戦争に対して否定的にはなっていない」と話しています。

「インフレ」7月では4万回余に減少

さらに、ロシアのウクライナ侵攻によって小麦粉や原油の価格が高騰するなど日本をはじめ世界各国でインフレの進行が問題となっていますが、ロシア国内での「インフレ」に関することばの検索を調べたところ、「通貨レート」や「価格」などとともに検索されていて、ことし3月時点で19万回余りと軍事侵攻前のことし1月の2倍以上に増加しましたが、その後は減少していて先月では4万回余りにまで減少していました。

ロシアの統計局が発表している消費者物価指数は、ことし2月に大きく上昇したものの、その後は大きな上昇はみられていません。

溝口教授は「ロシア政府が通貨ルーブルを買い支えていることによってロシア国内では大きなインフレは起こっていない。国民の閉塞感(へいそくかん)や経済状況の悪化がより顕著になれば政権への不満が現れてくるかもしれないが、現状、戦争の長期化がロシア国民の生活にそこまで大きな影響を与えておらず、反戦の声が再び盛り上がることは短期的には考えにくい」と分析しています。

「ウクライナ軍」7月は6月の1.4倍に

一方、「ウクライナ軍」ということばの検索は、軍事侵攻後に急増したあと減少し続けていましたが、先月は一転して増加し、38万回余りと前の月の1.4倍になっていました。

これについて、溝口教授は「ウクライナ国民の抗戦意識は高いままで、特に7月は欧米の軍事支援を受けたウクライナ側が反転攻勢を強めた時期にあたり、ウクライナ軍の最新の戦況などを知りたいという動きが反映されているのではないか」としています。