軍事侵攻半年 欧米側がウクライナへの軍事支援を相次いで発表

ロシアのウクライナへの軍事侵攻から24日で半年となり、欧米側はウクライナに対する新たな軍事支援を相次いで表明しました。
一方、ロシアのプーチン政権は、軍事侵攻を継続する姿勢を改めて強調し、ウクライナでの支配の既成事実化も強めています。

ロシアの軍事侵攻から半年となったウクライナでは24日、ロシア軍が攻撃を激化させることへの警戒が続き、首都キーウでもたびたび防空警報が鳴り市民が地下通路に避難する姿が見られました。
ニューヨークで開かれた国連安全保障理事会の会合にオンラインで参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドニプロペトロウシク州の鉄道の駅がロシアによる攻撃を受け少なくとも15人が死亡し、およそ50人がけがをしたと述べました。

ゼレンスキー大統領は「これがわれわれの日常だ。これがきょうの安保理会合のためにロシアが準備したものだ」と述べ、ロシアを非難しました。

そのうえで「もしロシアをいま、ウクライナで止めなければ、ロシアの殺人者はヨーロッパやほかの地域まで襲うだろう。われわれの独立はあなたたちの安全で全世界の安全でもある」と述べ、国際社会に支援と協力を呼びかけました。
こうした中、イギリスのジョンソン首相がキーウを訪れてゼレンスキー大統領と会談し、最新鋭の無人機合わせて2000機を含む日本円でおよそ87億円の追加の軍事支援を表明しました。

また、アメリカのバイデン政権もウクライナに対し日本円にして4000億円余りの追加の軍事支援を発表し、侵攻が始まって以降、1度の支援額としては、最大規模だとしています。

さらにドイツ政府もロケットランチャーや防空システムなど日本円でおよそ680億円にのぼる兵器を供与すると発表しました。

欧米側は長期戦に備えるウクライナを支援する姿勢を鮮明にしています。

これに対し、ロシアのショイグ国防相は24日「特別な軍事作戦は計画どおりに進められ、すべての目標は達成される」と述べ、軍事侵攻を推し進めると強調しました。

また、プーチン大統領は24日、ウクライナ東部のドネツク州、ルハンシク州、ハルキウ州、そして南部ヘルソン州、南東部ザポリージャ州で新学期が始まるのを前に、6歳から18歳の子どもの親に対して1万ルーブル、日本円でおよそ2万3000円を教育の一時金として支給する考えを表明しました。

プーチン政権は、軍事侵攻を続けるとともに、ウクライナでの支配の既成事実化も強めています。

専門家「勝者がいない戦争になる可能性が非常に高い」

戦争が起きる要因などを研究している早稲田大学の多湖淳教授は、ロシアによる軍事侵攻は、国力の低下が見込まれることに危機感を抱いた指導者が戦争を仕掛けることで挽回を図ろうという、歴史上これまでも見られた戦争の形態だとも指摘したうえで、1年以上にわたり、長期化する可能性を指摘しています。

この中で多湖教授は、ロシアがウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったことに関連して「指導者自身の能力が落ちてしまうとか、国力が下がるという予測がある時にまだ能力があるうちに相手国を攻撃してしまおうという動機が働く」と述べ、経済面などでロシアの国力低下が指摘されるなか、欧米からの援助を受けるウクライナに対してプーチン大統領が警戒を強めたことが背景にあると指摘しました。

こうした危機感を抱いた指導者が、挽回を図ろうと戦争を仕掛けたケースは、19世紀からこれまでに起きた100余りの戦争のなかでも見られる形態だということです。

多湖教授は「戦争は何を動機にして始まったかで終わり方も変わるというのが国際政治学の通説だ。今回の場合は、自分の力を挽回するというのが最終的な目的だとすればそれが達成されるまで戦争は続く。1年以上もしくは数年続くのではないか」と述べロシア側の動機から長期化する可能性に言及しました。

一方で「ゼレンスキー大統領もここまで来ると中途半端な交渉とはいかなくなる。アメリカも同盟の信ぴょう性に傷が付くのでウクライナを支援しないということはありえない」と述べ、ウクライナ側の事情からも戦闘の終結は見通せないとしています。

そして多湖教授は、戦争終結の道筋について「ずるずると朝鮮戦争のように休戦も含めて戦争状態が続くのではないか。勝者がいない戦争になる可能性が非常に高い。もしくは、両者がここで線引きをしようとなって交渉で合意するか、そのどちらか2つの終わり方しかない」と話しています。