国際

ウクライナ東部 ロシア軍の攻撃減か 衛星画像の熱源データ分析

ロシアによるウクライナへの侵攻が続く中、7月中旬以降、東部でロシア軍による攻撃が大幅に減少したとみられることが、人工衛星の画像データの分析からわかりました。専門家などは、ウクライナがアメリカから供与された武器でロシア側の弾薬庫などを破壊した時期と一致するとしていて、ウクライナ軍が軍事支援を有効に活用して戦果をあげていると指摘しています。
NHKは、NASA=アメリカ航空宇宙局の人工衛星が観測した地上の熱源のデータをもとに、ことし2月の侵攻開始以来の戦況を分析しました。
このデータは、通常は森林火災の発生場所などを把握するために活用されていますが、戦闘で起きた火災が多く反映されていて、分析の結果、ウクライナ東部のドネツク州、ルハンシク州、それにハルキウ州の3つの州では、熱源の数が、
▼7月上旬の1日から10日までの10日間は2903件だったのに対し、
▼7月20日までの10日間は662件、
▼7月30日までの10日間は657件と、
上旬と比べていずれも2割程度にまで減少したことが分かりました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、7月16日に公開した分析で、ウクライナがアメリカから供与された高機動ロケット砲システム=ハイマースでロシア軍の弾薬庫などを破壊した結果、7月10日ごろからロシア軍の砲撃が減り、それが熱源の大幅な減少にも反映されたとみられるとしています。

専門家 “ハイマースによるウクライナの攻撃がロシアに打撃”

ロシア軍による攻撃が大幅に減少したとみられることについて、防衛省防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長は「ウクライナからみて、ロシアの多連装ロケットランチャーはほとんど破壊できていないし、火砲もあまり破壊できていない。それにもかかわらず、衛星のデータで見るかぎり、攻撃の数が減っているということは、前線のロシア軍に弾薬が来なくなって撃てなくなったと評価すべきだ。ロシア軍の補給拠点が破壊され、弾薬そのものがなくなった」と分析しました。

そのうえで高橋室長は「ロシア軍は状況に対応するため、弾薬をハイマースの射程より遠い場所や、何か所かに分散して置き始めたが、輸送効率が下がり、前線に届く弾薬の数が結果として減り、撃てる弾薬が減っている」と述べ、高機動ロケット砲システム=ハイマースによるウクライナ側の攻撃がロシア軍の運用に打撃を与えていると指摘しました。

分析に使った人工衛星の熱源データとは

シンクタンクや専門家がウクライナの戦況分析に活用しているのが、NASA=アメリカ航空宇宙局の人工衛星が捉えた地上の熱源のデータです。

このデータは、最高375メートル四方の広さで識別できる解像度で地上の熱源を観測したもので、通常は建物や森林火災などの頻度や位置を把握するために活用されています。

ウクライナでは、2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以降、戦闘の激しい地域を中心に大量の熱源が観測されていて、シンクタンクや専門家は砲撃やミサイル攻撃に伴う火災などを捉えたものだと分析しています。

捉えられた熱源には軍事演習などによるものも含まれるとみられ、すべてが戦闘によって生じたものとはかぎりませんが、ロシア軍が3月に首都のキーウ近郊から撤退して以降は、ウクライナの東部や南部で熱源が徐々に増加し、戦闘が激化していく様子がうかがえます。

NHKがデータをもとに可視化し、1週間ごとに熱源をまとめた地図からは、東部3州では7月の最初の1週間にくらべ、それ以降の3週間は、熱源が多いことを示す赤い場所が少なくなっていることがわかります。

熱源のデータだけでは、ウクライナ側とロシア側、どちらの攻撃によって生じた火災なのかを見分けることはできませんが、防衛省防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長は「ウクライナがロシア軍から攻撃を受けたと報告している場所と、人工衛星が観測した熱源の位置は合致している部分が非常に多い」と述べ、軍の発表と照らし合わせることで、より正確な戦況の把握に役立つデータだとしています。

最新の主要ニュース7本

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

特集

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

News Up

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

スペシャルコンテンツ

一覧

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

ソーシャルランキング

一覧

この2時間のツイートが多い記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。

アクセスランキング

一覧

この24時間に多く読まれている記事です

データを読み込み中...
データの読み込みに失敗しました。