国連事務総長 ウクライナ南部の港訪問 農産物輸出増へ決意示す

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで、国連のグテーレス事務総長は南部オデーサの港を訪問し、ウクライナ産の農産物の輸出をさらに増やしていくため、一層取り組む決意を示しました。一方、南東部の原子力発電所をめぐってフランスのマクロン大統領はロシアのプーチン大統領との電話会談で、原発の安全性が脅かされていると懸念を示しました。

ウクライナを訪れている国連のグテーレス事務総長は19日、南部オデーサの港でウクライナ産の小麦が船に積み込まれる様子などを視察しました。

ロシアとウクライナは先月トルコと国連の仲介でウクライナの農産物の輸出を再開することで合意し、国連などによりますとこれまでにオデーサの港などから60万トン以上の穀物を運び出したということです。

グテーレス事務総長は記者団に対し「世界で最も弱い立場にある人たちの希望だ」と述べ、世界的な食料危機が懸念されるなか、輸出をさらに増やしていくため一層取り組む決意を示しました。

一方、ロシア軍が掌握するウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所をめぐり、フランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領が19日、電話会談を行い、両首脳は、IAEA=国際原子力機関による調査団の早期派遣の重要性で一致したということです。

原発やその周辺では今月に入り砲撃が相次いでいて、フランス大統領府によりますと、会談でマクロン大統領は、プーチン大統領に対し、原発の安全性が脅かされていると懸念を示したということです。

これに対して、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は、ウクライナ軍が原発への砲撃を行っていると主張したうえで、広い範囲での放射能汚染につながるおそれがあると強調したということです。

ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は19日に声明で「ロシア軍が発電設備の運転を停止し、ウクライナの電力網から切り離すことを計画しているという情報がある」と発表しました。

ザポリージャ原発をめぐって国連のグテーレス事務総長は、軍事行動の停止と部隊の撤退を求めていますが、ロシア側は拒否する姿勢を示していて、国際社会の間で原発の安全性への懸念が深まっています。