千葉 オンライン登録の感染を東京に計上 受理の仕組み改善へ

千葉県がインターネットで登録を受け付けた新型コロナの新たな感染者が東京都の感染者として計上されていた問題で、県は、オンライン診断を行っている都内の医療機関からの感染者の届け出を県で受理する仕組みを導入して改善を図りたいとしています。

千葉県では先月から、抗原検査キットなどによる自主検査で陽性が確認された人を対象に、専用サイトに情報を登録し、医師のオンライン診断で新たな感染者とする運用を始めていますが、感染者数の計上先が東京都になっていたことが明らかになっています。

診断を都内の医療機関の医師が行っていたため、都の保健所に新たな感染者として届け出られていたことが原因で、千葉県によりますと、15日までに専用サイトを通じて登録した感染者およそ2万7000人が、東京都に計上されたとみられるとしています。

一方で東京都は、受理した届け出を改めて確認した結果、千葉県の専用サイトを通じた感染者で都に計上されていたのは16日までにおよそ1万8000人だったとしています。

千葉県と都によりますと、人数が異なるのは、
▼登録してから感染者として計上されるまでに時間差があることや、
▼重複して登録されていた感染者がいたことなどが原因となっている可能性があるということです。

千葉県は来週中にも、オンライン診断を行っている都内の医療機関からの感染者の届け出を、県内の保健所で受理する仕組みを導入し、専用サイトで登録する感染者を県の感染者数に加え、実態に即した形で計上できるよう改善を図りたいとしています。

千葉県はオンライン登録枠を増加

千葉県は、先月21日からオンラインで感染者の登録を行う専用サイトを設け、感染の急拡大で登録が可能な枠を徐々に増やしてきました。

専用サイトを通じて登録され、東京都がこれまでに都の感染者数として計上したとする人数は当初は数十人程度でしたが8月12日以降は1000人以上の日が続いています。

一方、県が日々の新規感染者数として発表してきた人数は先月下旬から、7日間平均で9000人を超える日が続いていましたが、1週間ほど前からは明らかな減少傾向となり、15日には7000人を下回りました。

しかし、ここに東京都で計上されていた感染者数を足し合わせると、今月上旬にはたびたび7日間平均で1万人を超え、15日時点でも8000人を上回っていて、県の発表と比べて減少幅が小さくなっています。

感染対策への影響を懸念する声も

県が発表している新規感染者数が実態と異なっていることについて、自治体の担当者や専門家からは対策への影響を懸念する声が出ています。

新規感染者数を1つの根拠として住民に対策を呼びかける内容を判断しているという自治体の担当者は、「呼びかけの強さが感染状況に合ってないということになりかねない。自分の住む市町村の日々の感染者数を気にしている住民は多いので、県にはしっかりと対応してほしい」と話していました。

また、別の自治体の担当者は、「統計上の問題であって、保健所が感染者を把握することはできるので、直接的な影響はない。しかし、市民が感染状況を実際よりも軽いと感じてしまうおそれがある」と話していました。
こうした状況について、千葉県の新型コロナウイルス対策の専門部会の委員を務める千葉大学病院感染制御部の猪狩英俊教授は、「オンラインで登録を行うのは多くは軽症の感染者なので、医療機関が重症患者を中心に受け入れている中で、実際の医療への影響は大きくはないと思う。しかし、感染者数の実態が分からないのでは、公衆衛生的な対策が打てず、医療に対する信頼感が崩れかねない」と指摘しました。

その上で、「いまは第7波のまっただ中で、感染者数を把握して対策を打ち出していくことが、対策への信頼を獲得する1番の方法だと思うので、ぜひ正確な数値を提供してほしい」と改善を求めました。

感染のオンライン登録 手続きに課題も

感染症法では、新型コロナウイルスに感染した患者を確認した医師は、最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられていますが、オンライン診断やインターネットを活用した登録システムの広がりを受けて、国は、柔軟な対応を認める考え方を示しています。

厚生労働省は、8月10日に全国の都道府県などに出した事務連絡で、それぞれの自治体が、ほかの自治体にある医療機関の医師にオンライン診断を行ってもらうシステムを設けるなどした場合、感染者の届け出をどこに行うべきかについて掲載しました。

この中では、医療機関の最寄りではなく、原則としてシステムを設置した自治体の保健所に届け出を行うことを想定しているという考え方を示しました。

一方、千葉県によりますと、県外の医療機関からの届け出を県内の保健所で受理するのは初めてということで、専用サイトを通じた感染者を県で計上するには、届け出の手続きの方法を検討することが必要になるとしています。

千葉市の感染も東京都に計上

新型コロナウイルスの自主検査で陽性だった人がオンラインで登録を行う千葉県のシステムで登録された人数が、東京都の感染者として計上されている問題に関連し、千葉市が今月から始めた「無料PCR検査事業」でも感染者数が千葉市ではなく東京都に計上されていることが分かりました。

千葉市では発熱外来のひっ迫を防ごうと、感染が疑われる症状のある市民を対象に、1日500人を上限に無料でPCR検査を行う事業を今月5日から始めました。

ネットで申し込みをすると市の委託を受けた事業者から検査キットが届き、検体を返送すると検査結果がメールで本人に届く仕組みです。

千葉市によりますと、事業者が都内にあることから、検査で陽性となり医師のオンライン診断で感染と確認された人の発生届は法律に従って都内の保健所に提出され、東京都の感染者数に計上されているということです。

事業の開始から16日までに陽性と判定された人はあわせて641人で、千葉市では、ほぼ全てが東京都の感染者数に計上されたとみられるとしています。

千葉市医療政策課は、「千葉市の感染者数が実態より少なくなることで市民に誤解を与えるおそれはあると思うが、都内の保健所に発生届が出されたことは把握できているので、千葉市の保健所による感染者の健康観察など必要な対応はできており、感染者の不利益にはなっていないと考えている」としています。