【梅毒 急増】症状は 感染経路は 不安な時はどうすれば?

医師が「偽装の達人」とも表現する性感染症の梅毒が急増しています。

全国から報告された感染者は8月7日までに7013人で、去年の同じ時期の1.7倍となっています。
このままのペースで増加した場合、現在の方法で統計を取り始めた1999年以降、初めて年間の感染者が1万人を超える可能性が指摘されています。

梅毒ってどんな病気?どう防ぐ?感染したかも、と不安な時は?
専門家に詳しく話を聞きました。

患者急増のクリニックの医師に聞く

長年、性感染症の治療にあたってきた、「プライベートケアクリニック東京」の院長を務める、尾上泰彦医師です。
尾上医師のクリニックでは、去年1年間でおよそ260人の梅毒の患者の治療にあたりました。

ことしも全国で過去最多のペースで感染者数が増えている中、尾上医師のクリニックでも梅毒の患者が1.5倍ほどに増えていると言います。

Q 感染すると どんな症状が出ますか?

(尾上医師)
梅毒に感染すると、通常、3週間から6週間程度の潜伏期間を経てから最初の症状が出てきます。ただ、症状が出ない人もいるほか、症状が出てもすぐに消えてしまう人もいます。

このため、感染していることに気付かないうちに、病気が進行することがあります。症状は、段階を経て進行していきます。

「第1期」腫れや潰瘍 痛みやかゆみはほとんどない

感染から3週間程度たってからの時期。
原因となる細菌が入り込んだ場所を中心に、3ミリから3センチほどの腫れや潰瘍ができます。

この症状は、数週間で消えてしまうことがありますが、梅毒が治ったわけではありません。痛みやかゆみを感じることはほとんどありません。

「第2期」全身に赤い発疹 症状自然に消えることも

感染から3か月程度たってからの時期。
細菌が血液によって全身に運ばれるため、手や足など、全身に赤い発疹が現れます。

発疹がバラの花の形に似ているとして、「バラ疹(ばらしん)」と呼ばれています。
このほか、発熱やけん怠感など、さまざまな症状が出ることがあります。
この段階でも、症状が自然に消えることがありますが、梅毒が治ったわけではありません。

「第3期」全身で炎症 ゴムのような腫瘍できることも

感染から3年程度。
全身で炎症が起こります。

骨や臓器に「ゴム腫」と呼ばれるゴムのような腫瘍ができることがあります。

治療薬が普及していない時代は、大きなできものができたり、鼻がかけたりすることがありました。現在の日本ではこの段階まで進むことはほとんどありません。

「第4期」脳や心臓 血管に症状 動脈りゅうの症状も

感染から10年程度。

脳や心臓、血管に症状が現れ、まひが起きたり、動脈りゅうの症状が出たりすることがあります。こちらも、現在の日本ではほとんど見られません。

Q 痛みは?かゆみは?

(尾上医師)
梅毒には、他の病気に似たさまざまな症状が出ることが多いのですが、痛みやかゆみがなく気づかなかったり、そもそも症状が出なかったりすることもあり「偽装の達人」とも称されます。

そのため早期に発見できず、気がつかないまま進行してしまうことがあります。

症状の写真を見ると、発疹が出たり潰瘍ができたりしして、痛々しく見えますが、実際には痛みやかゆみを感じることは少ないのです。

また、のどの奥や性器の内側に症状が出ている場合、患者自身でも気がつかないこともあります。

妊娠中の女性は注意 胎児に感染も

(尾上医師)
治療をせずに放置すると、第3期、第4期のように、深刻な症状につながるので、早期に発見することが大事です。

また、注意してほしいのは妊娠中の女性です。妊娠中に梅毒に感染すると「先天梅毒」といって、胎児に感染することがあります。

生まれたときには特段の症状がないことが多いですが、のちに皮膚に症状が現れるほか、目に炎症が起きたり、難聴になったりすることもあります。
また死産や早産になることもあります。

Q 原因は?どんなときに感染?

(尾上医師)
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌が原因で、主に性行為で感染が広がります。

コンドームをつけずに性行為をするとリスクが高まりますが、オーラルセックスやキスで感染することもあります。

また、コンドームをつけていても、感染者の粘膜や傷のある皮膚に直接触れると感染することがあるので、注意が必要です。

性風俗産業を介して感染すると思いがちですが、自分自身に思い当たる節がなくても、パートナーから感染してしまうケースもあるので、他人事と思わず注意することが大事です。

また、最近の診療経験からは、マッチングアプリやSNSを介した出会いを通じて、不特定多数の人と性行為して感染する人もいます。

ことし上半期までの感染動向は?(国立感染症研究所)

▽ことし上半期までの感染者は男性が3768人、女性が1855人。男性が多い。
▽年代別に見ると、女性は20代と30代が75%を占める。特に多いのが20代前半。
▽男性は20代から50代まで幅広い年齢層で患者が増えている。

▽男性では性風俗産業の利用歴がある人が、女性では従事歴のある人が、それぞれ感染者の3割から4割ほどを占める。
▽一方で、性風俗産業の利用歴のない男性、従事歴のない女性もそれぞれ3割程度いる。

Q 治療法は?

(尾上医師)
梅毒は治療法が確立していて、きちんと治療を受ければ、治すことができます。

日本で多く使われているのは抗菌薬の飲み薬です。一定の期間、薬を飲み続けることで治療できます。

途中で症状がおさまったとしても、自己判断で「治った」と考えずに、決められた期間、しっかり薬を飲み続けることが大切です。

また、1回注射するだけで効果がある新たな治療薬も去年、承認され、ことしから使われ始めています。薬を飲み続けなくてもいいことから、治療がより簡単になると期待されています。

Q 感染しているかもしれない。どうしたらいい?

(尾上医師)
パートナー以外の人と性的な接触をするなど、感染の心配がある行為をしたのであれば、検査を受けに行きましょう。

ただ、注意しなくてはいけないのは、感染した直後だと、検査でわからないケースがあることです。感染から6週間たっているとほぼ確実に感染の有無が判定できるようになるので、リスクのある性行為がいつだったのか、確認しておくとよいでしょう。

検査方法は血液検査が一般的です。医療機関を受診するほか、自治体の保健所などで検査を受けることもできます。

例えば東京都では、新宿などにある検査・相談室や保健所で、匿名かつ無料で検査を受けることができます。通常の検査では次の日に、即日検査の場合は20分から30分で結果が分かります。感染がわかればすぐに治療に移ることができるので、まずは検査をすることが一番重要です。

「人生の節目」に検診の検討を

(尾上医師)
梅毒の患者はこの10年で最も多い水準になっていて、社会全体で心配するべき状態になっていると思います。

予防としては、まず不特定多数の人との性的な接触を避けること、それにコンドームを使うことが重要です。

しかし、コンドームだけでは100%防げませんし、スキンシップを含めて、どのような状況で感染するか分かりません。

大事な人を感染から守るためにも、新しくパートナーができたときや、結婚するとき、子どもを作るときといった、人生の節目に検査を受ける「節目検診」も考えてみてください。