国連安保理緊急会合 “ウクライナの原発 視察や調査を” IAEA

ウクライナにあるヨーロッパ最大規模の原子力発電所で砲撃が相次いでいることについて、国連の安全保障理事会で緊急会合が開かれ、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、速やかな視察や調査の実現を求めました。

ウクライナ南東部にあり、ロシア軍が掌握するヨーロッパ最大規模のザポリージャ原子力発電所で、今月5日以降、砲撃が相次いでいることから、国連安保理は11日、対応を協議するため緊急の会合を開きました。

オンラインで出席したIAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は「砲撃による原発の安全性に対する差し迫った脅威はない。しかし、その評価はいつでも変わる可能性がある」と述べて、原発の安全性の確保に強い懸念を示しました。

そのうえで、ロシアとウクライナに対して、速やかに視察や調査が実現するよう、協力を求めました。

一方、ウクライナとロシアはともに相手側による攻撃だと主張し、ウクライナの国連大使は「ロシアは核の惨事で世界を脅かしている。ロシアを止めるのが早ければ早いほど、ヨーロッパと世界は再び安全を感じることができる」と訴えました。

会合ではこのほか、アメリカの国務次官が「ロシアは現場の現実から目をそらすため偽の情報を流し続けている」と非難するなど、ロシアに対して軍を撤退させるよう求める意見が相次ぎました。

IAEA事務局長 “原発の安全性確保に強い懸念”

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、11日に開かれた国連の安全保障理事会の緊急会合にオンラインで出席し、砲撃が相次いでいるウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所の状況について説明しました。

この中でグロッシ事務局長は、砲撃によって、送電網の一部が損傷を受け、稼働中だった3つの原子炉のうち1基が停止したと報告しました。

そのうえで、「最新の情報に基づくIAEAの専門家による初期段階の評価では、砲撃による原発の安全性に対する差し迫った脅威はない。しかし、その評価はいつでも変わる可能性がある」と述べ、原発の安全性の確保に改めて強い懸念を示すとともに直ちに砲撃をやめるよう求めました。

そして、IAEAの専門家チームがザポリージャ原発を訪れ、安全性を確保するための技術的な支援などを行うことが重要だと訴え、ロシアとウクライナに対して、すみやかに視察や調査が実現するよう協力を求めました。