ウクライナ 南部地域の奪還目指し反撃 ロシア側は住民投票準備

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアで起きた爆発ではロシア軍の航空戦力が打撃を受けたとみられ、ウクライナ側は南部を中心に支配された地域の奪還を目指して反撃を続けています。
これに対しロシア側は軍事侵攻によって掌握した地域の併合に向け、住民投票の準備を進めていて、双方の攻防が一段と激しくなるとみられます。

ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島では9日、ロシア軍の基地で大規模な爆発があり、ロシア側は飛行場の弾薬庫が爆発したが攻撃を受けたものではないと主張しています。

一方、ウクライナ政府は公式に関与を認めていませんが、アメリカの複数の有力紙はウクライナ側が攻撃に関与したという見方を伝え、ゼレンスキー大統領は10日「ロシア軍はクリミアで9機の戦闘機を失った」と述べてロシア軍が大きな損害を被ったと強調しました。

また、ウクライナ軍は軍事侵攻によってロシアが掌握したとする南部ヘルソン州で、要衝の橋を攻撃して通行できなくしたと発表するなど、ロシア軍の補給路を狙ったとみられる攻撃も続けています。
これに対しロシア側は7割以上を掌握したと主張する南東部ザポリージャ州で、地元の親ロシア派の幹部が11日、ロシアの新聞「イズベスチヤ」へのインタビューの中で、ロシアへの編入の賛否を問う住民投票について「ロシアで地方選挙が行われる9月11日にあわせて実施できれば望ましい」と述べました。

一方で、住民投票はロシア軍が掌握を進める東部2州や南部ヘルソン州と一斉に行うことも親ロシア派の間で協議され、こうした地域で戦闘が続く中、投票に向けた準備が予定通り進んでいないとも指摘しています。

ロシア側は掌握したと主張する南部や南東部の併合に向けた既成事実化を進めたい狙いですが、支配された地域の奪還を目指すウクライナ軍の反撃に直面し、さらにウクライナ側の住民も根強く抵抗していると指摘され、双方の攻防が一段と激しくなるとみられます。

ウクライナ ゼレンスキー大統領 さらなる支援を呼びかけ

ウクライナのゼレンスキー大統領は10日に公開した動画で「ロシア軍はクリミアで9機の戦闘機を失った」と述べ、ロシア軍はクリミアでも多大な損害を被ったと強調しました。

そのうえで「ウクライナがより多くの武器や財政的な支援を受けられれば、より早くウクライナとヨーロッパの人々が再び、平和で安定した生活を送ることができる」と述べ、武器の供与などさらなる支援を改めて各国に呼びかけました。

ウクライナの原発公社 “ザポリージャ原発 11日再び攻撃受けた”

8月に入って攻撃が相次いでいるウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所について、ウクライナの原発公社エネルゴアトムは11日、原発が再び攻撃を受けたと発表しました。

一方、ザポリージャ州の親ロシア派の幹部も攻撃があったと主張し、ウクライナとロシアの双方が「相手の攻撃だ」と非難し合っています。

エネルゴアトムはSNSを更新し「11日、ロシア軍は再びザポリージャ原発を攻撃した」としたうえで、核物質が貯蔵されている場所の近くに砲撃があったほか、原発の近くにある消防署の敷地内にも砲撃があったと明らかにしました。

周辺の放射線量に変化はないとしたものの、攻撃によって放射線量を測定する一部のセンサーが損傷したとして状況は悪化しているとしています。

一方、ザポリージャ州の親ロシア派の幹部もSNSでザポリージャ原発の敷地内などでウクライナ側による砲撃があったと主張しました。

ザポリージャ原発をめぐっては、8月5日以降に攻撃が相次ぎ、いずれもウクライナとロシアの双方が「相手の攻撃だ」と主張して繰り返し非難し合っていて、ヨーロッパ最大規模の原発の安全性の確保に懸念が強まっています。