“ロシアがクリミアへ電力供給狙い” ウクライナ原発公社総裁

ウクライナのヨーロッパ最大規模の原子力発電所で砲撃が相次いだことについてウクライナの原発公社の総裁はロシア軍が送電線を破壊することで現在のウクライナの送電網を遮断し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアへの電力の供給を計画しているという見方を示しました。

ウクライナ南東部にあり、ロシア軍が掌握するヨーロッパ最大規模のザポリージャ原子力発電所では5日以降、砲撃が相次ぎ、ウクライナ、ロシア双方が相手による攻撃だと主張しています。

ウクライナのメディアによりますとウクライナの原子力発電公社、エネルゴアトムのコティン総裁は9日、「3本の送電線が損傷した」と述べるなど、危機的な状況にあると訴えました。

そして、コティン総裁は、ロシア軍が原発を攻撃したとしてその目的はこの原発から8年前に(2014年)ロシアが一方的に併合した南部クリミアへの電力の供給を計画していて、まずは原発の送電線を破壊して現在のウクライナの送電網を遮断しようとしているという見方を示しました。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、「ロシア軍は『核の盾』として原発を利用している。原子力事故に対する欧米の恐怖心をあおり、ウクライナへの軍事支援を行う意欲を低下させようとしている」とも指摘しています。

一方、G7=主要7か国の外相は10日、「ウクライナの原子力施設をロシア軍が掌握し、施設の安全に深刻な脅威をもたらし、原発事故のリスクを著しく高めウクライナや周辺国、そして国際社会を危険にさらしていることを深く懸念している」とする声明を発表し、ロシアに対して原発をただちにウクライナ側に戻すよう求めました。

またIAEA=国際原子力機関の専門家チームが現地に入ることが必要だと訴えています。