米高官 ロシア側の死傷者7~8万人 人的損害非常に大きいか

ロシア軍は、掌握を目指すウクライナ東部で部隊の前進を阻まれ、兵力の不足が指摘されています。アメリカ国防総省の高官は、ロシア側の死傷者が7万人から8万人にのぼるという見方を示し、ロシア側の人的な損害が非常に大きい可能性も出ています。

ロシア国防省は8日も、東部ハルキウ州のほか南部のヘルソン州やミコライウ州をミサイルで攻撃し、ウクライナ軍の兵士を殺害したほか、装甲車などを破壊したと発表しました。

一方、戦況を分析するイギリス国防省は9日、ロシア軍が東部ドンバス地域で前進した距離について「過去30日間、最も成功した地域でおよそ10キロ、ほかの地域では3キロしか前進しておらず、計画を大幅に下回っている。前進できるだけの十分な戦闘歩兵が確保できていない」と指摘しました。

また、アメリカ国防総省のカール国防次官は8日の記者会見で、ことし2月に軍事侵攻が始まって以降のロシア側の戦死者と負傷者の数が合わせて7万人から8万人にのぼるという見方を示しました。

カール次官は「侵攻を開始したときの、プーチン大統領の目標を何一つ達成していないことを考えると、注目に値する」と述べ、ロシア側の人的な損害が非常に大きい可能性も出ています。

こうした中、ウクライナ南東部では、ロシア軍に掌握されたザポリージャ原子力発電所で5日以降、砲撃が相次いでいます。

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日「ロシアの原子力産業全体に対して、新たな制裁を科すべきだ」と述べ、一層の圧力を国際社会に訴えました。

これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は8日、「ロシア軍はザポリージャ原発の原子炉付近から攻撃を続け、軍の装備品を保管しているとみられる。原子力事故に対する欧米の恐怖心をあおることで、ウクライナへの追加の軍事支援を行う意欲を低下させようとしている」と指摘し、欧米の軍事支援をけん制するねらいもあるという見方を示しています。