夏の全国高校野球 兵庫 社が県岐阜商に勝ち2回戦進出

夏の全国高校野球、大会4日目の第4試合は兵庫の社高校が県立岐阜商業に10対1で勝って2回戦に進みました。

社は夏の甲子園初出場、一方の県立岐阜商業は30回目の出場ですが、大会前の検査で新型コロナウイルスの集団感染と判断され、当初の登録から選手10人を入れ替えて臨みました。

社は1点リードの2回、1番の大西悠斗選手と3番の福谷宇楽選手のタイムリーヒット、それに押し出しのフォアボールなどで4点を追加しました。

続く3回にも3本のヒットに相手のミスも絡んで3点を加え、前半でリードを大きく広げました。

投げては、先発した背番号10の堀田柊投手がキレのある速球を軸に要所では厳しくインコースをつくピッチングで1失点で完投し、社が10対1で勝って2回戦に進みました。

県立岐阜商業は、岐阜大会で主にマウンドに立ったピッチャー2人が登録を外れる中、2年生の山口恵悟投手が先発しましたが、2回途中までに5失点と試合をつくれず、後を受けたピッチャーも社打線を止められませんでした。

鍛治舍巧監督が試合前に「岐阜に帰った選手が戻って来るまでなんとかつなぎたい」と話すなど、チーム一丸で試合に臨みましたが初戦突破はなりませんでした。

1・2年生でつないだ県立岐阜商業は

県立岐阜商業は新型コロナウイルスの集団感染と判断され、当初の登録メンバーから10人を入れ替えて1・2年生を中心としたメンバーで臨みました。

敗れたものの下級生からは「出場できなかった3年生の気持ちを次のチームにつないでいく」という決意のことばが聞かれ、新たなチームの成長を予感させました。

登録を外れたメンバーのうち3年生は5人で、なかには岐阜大会で主に登板したピッチャー2人や攻守の中心だった選手もいました。

9日は、新たにベンチ入りしたメンバーのうち3人が先発で起用されたほか、スタメンのうち7人を下級生が占めました。

急きょ登録された選手の1人で2年生の高橋一瑛選手は7番ライトで先発出場しました。

これが公式戦初出場でしたが、2回にチャンスをつくるヒットを打ち、7回には守備でファインプレーを見せるなど攻守に躍動しました。

高橋選手は「チームがピンチのなかで自分が絶対に役に立って勝って先輩につなごうと思っていたので負けてしまって悔しいです。今回出られなかった3年生の分まで、しっかり思いを受け止めて次の春夏、必ず甲子園に戻ってきて勝てるように新チームで頑張りたい」と話しました。

また、同じ2年生の山口恵梧投手は、岐阜大会はわずか2イニングしか登板がありませんでしたが、鍛治舍巧監督から大舞台での先発マウンドを託されました。

社高校打線に立ち上がりからつかまり、2回途中5失点で降板しましたが、試合後には「まだ力が足りませんでしたが、きょうの経験を生かしてこれからは打たれても強い気持ちを持ちたいです。新チームは自分たちで引っ張りたい」と前を向いていました。

そして、外野手としての登録ながらキャッチャーで先発し、打ってはチーム唯一の打点をあげた1年生の加納朋季選手は「悔しさと申し訳なさでいっぱいですが、こういう経験が大事だと思うので悔しさを忘れずに来年またここに戻ってきたいです」と話していました。

入学以来3年間、新型コロナに翻弄され続けた3年生も悔しさの一方、下級生たちに思いを託します。

セカンドで出場した3年生の河合福治選手は「コロナのせいにしてしまっては終わりだと思うし、自分たちの実力が足りなかったのだと思います。1、2年生にはこの甲子園の経験を生かしてほしいと思います」と話していました。

今大会の代表のなかで最も多い、30回目の出場だった県立岐阜商業。

どんな対戦よりもあらがいようのない敵と戦った大会となりましたが、3年生の思いを胸に1・2年生たちが経験を新たな歴史につなげていきます。

県立岐阜商業 鍛治舍監督「3年生の顔が浮かんだ」

新型コロナウイルスの集団感染と判断され、登録選手を10人入れ替えて臨み敗れた県立岐阜商業の鍛治舍巧監督は「主力選手が相次いで出場できなくなり、出場を辞退することも検討しましたが、3年生の選手たちの顔が浮かび自分から引くわけにはいかないと思い、チームを再編して臨みました」と話しました。

出場できなかった選手については「3年生は入学したときから新型コロナに翻弄されてきて、彼らには『何も悪いことをしていないのになぜこうなってしまうのか』という思いがあります。全員が戻ってくる前に負けてしまって申し訳ないです」と話していました。

一方で、新たに登録された選手については「思ってもみない出場機会で天にも昇るような気分だったと思うし、いい経験になったと思います。エラーやフォアボールなどのミスが多く出ましたが、いいプレーをした選手もいたのできょうの経験を今後に生かしてほしいです」と話していました。

伊藤主将「まさかこんなことになるなんて」

敗れた県立岐阜商業のキャプテン、伊藤颯希選手は新型コロナの集団感染と判断され登録選手を10人入れ替えて臨んだことについて「メンバーがそろっていれば優勝できると思っていたのでまさかこんなことになるとは思っていなかったですし、悔しいです。出場できなくなったメンバーが戻ってくる前に負けてしまい、申し訳ないです」と声を詰まらせながら話しました。

そのうえで「このような状況でもチーム内では目いっぱいプレーしようと声を掛け合い、前を向いて試合に臨みました。試合に出場できるよう動いてくれた関係者の方々には感謝の気持ちしかないです」と話していました。

社高校 山本監督「相手チームの選手のこと考えた」

夏の甲子園初出場で勝利した兵庫の社高校の山本巧監督は「準備してきたことをこの舞台でもやろうとしてそれができました。一瞬一瞬が必死だったのであとからゆっくり試合を振り返りたいと思います」としたうえで、「これで選手たちも慣れていくと思うので、しっかり反省をして次につなげたいです」と話しました。

新型コロナウイルスの集団感染と判断され、登録選手10人を入れ替えて試合に臨んだ県立岐阜商業については「勝って校歌が流れているときには、相手チームの選手が自宅待機や静養を余儀なくされているということを考えていました」と話していました。

福谷選手「勝っても喜ぶのは心の中だけに」

1回に先制のタイムリーヒットを打った兵庫の社高校の福谷宇楽選手は「程よい緊張で試合に臨むことができました。出塁した後藤剣士朗選手が走って塁を進めてくれたので1本打って先制点を取りたいと打席に立っていました。先制点にこだわっていたので1点取れてピッチャーも楽にできたのでよかったと思います」と初めての大舞台での活躍を振り返りました。

相手の県立岐阜商業が新型コロナの集団感染と判断され登録選手10人を入れ替えて試合に臨んだことについては「コロナ禍で、こういう状況でも試合ができることに感謝しようと山本巧監督から球場入りする前に話をされました。また、勝っても喜ぶのは心の中だけにしようと選手どうしでも共有しました。対戦してくれる相手への感謝の気持ちを球場をあとにするまで忘れないことにこだわりました」と話していました。