オミクロン株対応のワクチン接種 10月中旬以降に開始へ 厚労省

厚生労働省は新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンの接種を、2回目までのワクチン接種を終えたすべての人を対象に、10月中旬以降に開始する方針を決めました。

厚生労働省は8日、専門家で作る分科会を開き、現在、国内で流行しているオミクロン株に対応したワクチンの接種について審議しました。

その結果、高齢者の重症化を防ぐとともに若い世代も含め社会全体の免疫をあげるため、接種の対象を2回目までの接種を終えたすべての人として10月中旬以降に開始する方針を決めました。

新しいワクチンは、従来株に由来する成分とオミクロン株の一つ、「BA.1」の2種類を組み合わせた「2価ワクチン」と呼ばれるものです。

現在、国内で流行している「BA.5」に対しても、ウイルスの働きを抑える中和抗体の値が上昇すると見込まれています。

使用を想定しているのはファイザーとモデルナが開発中のワクチンで、薬事承認されれば来月にも輸入し、自治体への配送を開始する見通しです。

ただ、前回の接種とどの程度の間隔をあけるのかは明らかになっていないため、分科会では専門家から「オミクロン株に対応するワクチンを打つために10月まで接種を控える動きが広がる懸念がある」や「重症化を防ぐため、対象者で接種がまだの人は速やかに4回目の接種を受けてほしい」などの意見が出されていました。

また、分科会では60歳以上の人などを対象に進められている4回目接種について対象を拡大するかについても議論が行われましたが、現段階では拡大せずに検討を続けることになりました。

オミクロン株対応のワクチンとは

WHO=世界保健機関によると、従来のワクチンでもオミクロン株を含むすべての新型コロナウイルスに対して高い重症化予防効果があるとしています。

しかし、従来のワクチンは従来株に比べオミクロン株への感染や発症予防の効果が低いほか、打ってから時間がたつほど効果が弱まることなどから、ファイザー社やモデルナ社などがオミクロン株対応のワクチンの開発を進めていました。
ファイザー社やモデルナ社は、オミクロン株対応ワクチンとして従来株のワクチンとオミクロン株を含む2価ワクチンを開発中で、今回日本が導入を決めたのは「BA.1対応型」と言われているものです。
ことし6月にアメリカのFDA=食品医薬品局にファイザー社が示した臨床試験の結果によると、56歳以上を対象に「BA.1対応型」を4回目で接種したところ、従来型ワクチンを4回目に接種した人と比べオミクロン株の派生型「BA.1」に対しウイルスの働きを抑える中和抗体の値が平均で1.56倍から1.97倍上昇し、現在流行している「BA.5」に対しては「BA.1」には劣るものの中和抗体の値の上昇がみられたと報告しています。

またモデルナ社も「BA.1対応型」の2価ワクチンでも中和抗体の値を従来のワクチンと比較すると「BA.1」に対して平均で1.75倍上昇を示したと報告しています。

海外では、FDA=食品医薬品局が製造販売業者に対して、現在流行しているオミクロン株の派生型「BA.5」の成分を混ぜた「BA.4/5対応型」の2価ワクチンの開発を勧告していますが、EMA=欧州医薬品庁では、2価ワクチンに入れるオミクロン株の派生型によって効果に大きな差があるとはせず、現時点で絞り込みを行っていません。

厚生労働省では「BA.4/5対応型」の2価ワクチンでは輸入が9月よりも遅れるとみていて、いち早く利用が可能な「BA.1対応型」のワクチンを選択しました。

どの程度間隔あければ接種できる?

オミクロン株に対応したワクチンの接種では、前回の接種とどの程度の間隔をあけるのかは現時点では明らかになっていません。

このため、厚生労働省は8日の分科会で前の接種との間隔については留意が必要だとして、シミュレーションを示しています。
オミクロン株に対応したワクチンの接種間隔を海外の治験データなどから「5か月」と仮定していて、60歳以上の人は4回目の接種のピークが始まった先月以降に接種をした場合、ことし12月以降に多くの人がオミクロン株対応ワクチンを接種する時期を迎えるとしています。

専門家「オミクロン株対応のワクチンは必要」

新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンの接種について、ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫 特任教授は「オミクロン株は変異している部分が多く、ウイルスの特徴がかなり変わってきている。いま使われているワクチンはオミクロン株には対応しきれない面があり、オミクロン株対応のワクチンは必要になってくると思う」と述べました。

一方で今、従来の新型コロナワクチンの接種を受けるべきかについて、中山特任教授は「現状でこれだけ感染が広がり重症者も増えている状況なので、まだ3回目の接種を済ませていない人はオミクロン株対応のワクチンを待つのではなく、今使用できるワクチンを接種することを考えてほしい」と強調しました。

今回、厚生労働省が接種を開始する方針を決めたワクチンは、ことしの初めごろに広がったオミクロン株の「BA.1」と従来の新型コロナウイルスに対応した「2価ワクチン」です。

これについて中山特任教授は「今、広がっている変異ウイルスに近いワクチンのほうが、今の変異ウイルスに対する高い免疫の反応を誘導できる一方、私たちには従来株のワクチンで得た免疫の記憶が残っている。その記憶を生かすためには、従来株とオミクロン株を一緒にしたワクチンを接種するほうが理にかなっている。また、今、世界で広がっている『BA.5』に対応したワクチンの開発も進められているが、完成までに数か月はかかるだろう。それを待つよりもこれから出てくるワクチンを接種したほうがいい」と話しています。

5~11歳へのコロナワクチン接種 「努力義務」化を了承

また、8日開かれた厚生労働省の専門家で作る分科会では、新型コロナウイルスワクチンの5歳から11歳の子どもへの接種についても議論が行われ、接種を受けるよう保護者が努めなければならない「努力義務」とする方針が決まりました。

「努力義務」は、接種を受けるよう努めなければならないとする予防接種法の規定です。

風疹など定期接種のワクチンの多くに適用されていますが、接種を受けるかどうかはあくまで本人が選択できることになっています。
法的な強制力や罰則はありません。

5歳から11歳の子どもへのワクチン接種をめぐっては、厚生労働省はことし2月、接種の呼びかけは行うもののオミクロン株に対する有効性が明確でなかったことなどから、当面は「努力義務」としないことを決めていました。

しかし、8日の分科会ではオミクロン株への効果や安全性に関するデータが集まってきたとして「努力義務」とすることが了承されました。
これに対し専門家からは「強制的なものと誤解されないようわかりやすく情報発信をすべきだ」などの意見が出されていました。

厚生労働省は今後、政令を改正するための手続きを進めたいとしています。