高校野球 コロナ乗り越え 最後の夏

夏の全国高校野球が6日、甲子園球場で開幕します。
ことしが“最後の夏”となる3年生は、入学当初から新型コロナウイルスの影響を受け続けてきました。多くの困難を乗り越えて、つかんだ夢の舞台。そこにかける思いとは…。
(甲子園取材班・並松康弘)

困難続きの2年4か月

まさに“困難続き”。
今の3年生にとって、高校での野球部の活動は、そのひと言に尽きるものでした。
入学当初から、新型コロナの感染が広がり、多くの学校で休校の措置がとられ、およそ2か月、チームメートと顔を合わせることすらできませんでした。最初の夏の全国高校野球が中止になり、その後、全体練習ができない時期もありました。さらに、選手たちの背中を押す応援のない中での試合も続きました。

たび重なる困難を乗り越え、つかんだ最後の夏。
そんな3年生には厳しい環境の中で実力をつけてきた選手たちがそろっています。

センバツ辞退を糧に

京都国際高校は去年の夏、初出場ながらベスト4に入り、ことし春のセンバツは大きな期待をかけられていました。
しかし、チーム内で新型コロナの感染が広がり、直前に出場を辞退することになりました。

エースの森下瑠大投手も感染。
すぐにはコンディションが回復せず、利き腕の左ひじに痛みが残りました。およそ2か月、ピッチング練習ができない期間が続きましたが、「僕たちには夏しかない。その時にできることを考えてずっとやってきた」と最後の夏に照準を合わせて、体幹の強化などできることに取り組んできました。
甲子園出場のかかった京都大会の決勝では、センバツを辞退したあと初めて公式戦で先発して好投しました。決勝ホームランも打った森下投手は「甲子園への思いはほかのチームより強い。春の分まで暴れ回りたい」と意気込んでいます。

困難を乗り越えて力をつけた3年生たち

困難を乗り越えて、力をつけてきた3年生は森下投手だけではありません。

【近江(滋賀) 山田陽翔投手】
京都国際に代わってセンバツに出場して準優勝した近江高校(滋賀)のキャプテン、エースで4番も打つ山田陽翔投手もその1人です。
投打に気迫のこもったプレーが持ち味で、わずかに届かなかった全国の頂点を目指します。
山田投手は「甲子園で野球ができること、日本一に向けて日々頑張れていることをうれしく思う。最後の夏に滋賀に優勝旗を持ち帰りたい」と闘志を燃やしています。
【高松商(香川) 浅野翔吾選手】
さらに、高松商業(香川)のキャプテン、浅野翔吾選手は高校通算で64本のホームランを打っているプロ注目の強打者です。
去年夏に続く甲子園でのホームランに期待が高まっています。

【富島(宮崎)日高暖己投手 】
そして、富島高校(宮崎)のエース、日高暖己投手は、最速148キロのストレートを軸に地方大会をほぼ1人で投げ抜き、防御率は0点台でした。

優勝争いをリードするのは春夏連覇へ大阪桐蔭

魅力のある選手がそろっている大会ですが、優勝争いは、3回目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭高校が大きくリードしているように感じます。
センバツでは大会記録となる11本のホームランを打って優勝するなど、去年秋の新チーム発足以降、公式戦37試合で1回しか負けていません。
西谷浩一監督が「飛び抜けた選手はおらず個人個人の力や技術は過去に春夏連覇を果たした2回に劣る」と話すなか、キャプテンの星子天真選手を中心に「束になって」をスローガンに、チーム一丸となって戦うことを徹底してきました。
それを裏打ちしたのが大阪大会。
3年生が占める野手のレギュラーのうち、7人の打率が3割を超えるなど打線に切れ目がなく、中盤以降に集中打でたたみかける攻撃で得点を重ねました。
投手陣は5人のピッチャーが登板し、打たれたヒットは7試合で20本、1点しか失点がなく、相手に一度もリードを許さない、王者の試合運びでした。
さらに試合中の選手を観察すると、控え部員も含めて、常に走っています。ベンチに入る記録員も声を出してチームをもり立てます。
隙を見せないそのたたずまいでも相手を圧倒していました。

コロナの影響広がる

ことしの大会は3年ぶりに一般の観客を迎え入れて行われます。人数に制限も設けず、球児たちを奮い立たせる環境が戻りつつあります。
しかし、このところの感染の急拡大で、大会はすでに大きな影響を受けています。
開会式は新型コロナの集団感染と判断されるなどした6校が欠席。
さらに前日の夕方になって、代表校の選手全員が場内を1周する予定だった入場行進はキャプテンのみが行進する形式に変更されました。
日本高校野球連盟などは、これまでの大会のように出場を辞退して球児たちが涙を飲むことがないよう、日程を調整したり、試合ぎりぎりまで選手の入れ替えを認めたりするなど、できるかぎりの努力をしようとしています。

コロナを乗り越え、憧れの甲子園にたどり着いた球児たちが、最後まで戦い抜き、熱いプレーを見せてくれることを期待しています。