林外相 台湾めぐる中国の行動を非難 東アジアサミット外相会議

カンボジアを訪れている林外務大臣は、東アジアサミットの外相会議に出席し、台湾情勢をめぐって弾道ミサイルを発射するなどの中国の行動を強く非難したうえで、軍事演習を即刻中止するよう改めて求めました。

林外務大臣は訪問先のカンボジアで、ASEAN=東南アジア諸国連合の加盟国と日本や中国、アメリカ、ロシアなどが参加した東アジアサミットの外相会議に出席しました。

この中で、林外務大臣は台湾情勢をめぐり「中国の弾道ミサイルが排他的経済水域を含む日本の近海に落下したことは、日本の安全保障と国民の安全に関わる重大な問題であり、中国の行動を強く非難する」と述べました。

そのうえで、中国の行動は地域と国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるものだとして、軍事演習を即刻中止するよう改めて求めました。

また各国からも、台湾海峡の緊張の高まりに懸念が示されたほか、複数の国から中国の行動を非難する発言が出されました。

さらに、林大臣は沖縄県の尖閣諸島周辺で、中国海警局の公船が領海侵入を繰り返していることを踏まえ「東シナ海では中国が日本の主権を侵害する活動を継続・強化している」と指摘したほか、地域での経済的威圧に対しても強い反対を表明しました。

一方、ウクライナ情勢をめぐって、林大臣はロシアの軍事侵攻を厳しく非難し「力による一方的な現状変更の試みは、アジアを含め世界中どこであっても絶対に許されない」と述べ、ロシアに対し直ちに侵攻をやめるよう強く求めました。

外務省によりますと、会議に出席していた中国の王毅外相とロシアのラブロフ外相は、林外務大臣がスピーチをしている最中に退席したということです。

また、このあと開かれたARF=ASEAN地域フォーラムの閣僚会合には、北朝鮮からも出席者があり、林大臣は、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し国交正常化を目指す方針に変わりはないと説明したうえで、完全な非核化に向けて関係国と実質的な対話を再開するよう求めました。

林外相 “情勢が緊迫している時こそしっかりと意思疎通を”

今後の中国との関係について、林外務大臣は訪問先のカンボジアで記者団に対し、情勢が緊迫している時こそしっかりと意思疎通を図る必要があり、建設的かつ安定的な関係を双方の努力で構築していくことが重要だという認識を示しました。

この中で、林外務大臣は、カンボジアに滞在中に予定されていた日中外相会談が中国側の意向で見送られたことについて「中国側の対応は遺憾だ。情勢が緊迫しているこのような時こそしっかりと意思疎通することが重要でありわが国は中国側との対話については常にオープンだ」と述べました。

そのうえで、今後の中国との関係について「主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ共通の諸課題については協力するという建設的かつ安定的な日中関係を双方の努力で構築していくことが重要だ」と述べました。

また、ASEAN関連の外相会議で林大臣がスピーチした際、中国の王毅外相とロシアのラブロフ外相が退席したことについて「他国の外相の動きについてコメントする立場にはない」としたうえで、その後、会場に戻った両外相がそれぞれの立場に基づく発言をしたため反論したと説明しました。